揮発油税の本質論が消えて稚拙な政治ショー
YesかNoかの国会運営
稚拙と言うか愚策というか、いわゆる道路特定財源の暫定税率のブリッジ法案を自民党は衆議院を通してしまった。
暫定税率を2ヶ月間のみ維持する議員立法だ。もちろん、2ヶ月経過すれば60日規定で衆議院で再可決にて税率を現行の状態の戻せるので60日間の時間稼ぎ法案だ。自民党に言わせると「セィフティ・ネット」だそうだが、これは明らかに審議拒否の逆バージョンだ。60日規定にて成立の結論ありきの法案で、これから是非の議論の場に着こうって姿勢を拒否することを宣言したようなものだ。と書いたら、更に稚拙に取り上げてしまった。まったくどうなっているんだか。
ま、民主党も稚拙なわけで「絶対に道路特定財源の法案を通さない」と結論ありきに狼煙をあげるからどっちもどっちである。
今回の道路特定財源の揮発油税については、暫定税率の妥協点を見いだす話し合いから始めるべきで、実際には0円(撤廃)なのか、24.3円(現行のまま)なのか、その二つしか選択肢が無いのでは無く、中間値だって存在する。その落としどころを話し合いによって決めていくのが民主主義の議論の基本なのでは? 真っ向から対立して解決策を探らないまま方法論に終始する姿勢は国民不在な稚拙な政治と言わざるを得ない。
どうもきな臭いのは、自民党と言うか自民党道路族が「一歩も譲れない」と強行なのは自分よりどころである道路特定財源を失う恐怖からではないかと思われる。道路特定財源が無くなれば政治家生命に関わるって必死になっている。
道路の新規着工を減らす方法があるのに「除雪もできなくなる」なんて発言をする。そもそも、道路特定財源は揮発油税等を道路を造る以外に使ってはならないとしてるが、一般財源で道路を造ることは禁止されてない。道路特定財源が無くなると道路が造れない訳では無い。そのあたりの背景に目を光らせていないと、一見「道理」に聞こえてしまう。もっと、うがった見方をすれば、なんでここまで道路特定財源に固執するのかとあらぬ探りを入れたくなる。話し合いの土俵に乗らない意思表示を行った自民党は益々国民から離れた政治に陥っているのが解らないのだろうか。
ガソリンの値下げは地方格差を是正する
経済対策と絡めてガソリン等の揮発油税の暫定税率を考えてみる。実は揮発油税の暫定税率により上乗せされた税金の税収は2兆7000億円になる。この額は小泉改革で廃止された定率減税の減税廃止額(国の税収が増加した額)の2兆6000億円に近い。数年かけて国民個々人から吸い上げた額に近いのだ。
日本の景気が不安定なのは一部の企業の業績は良いが国民の購買力が回復しない点にある。つまり国内消費が低調なのだ。実は前例があって、医療費の自己負担増加と消費税3%→5%を一緒に行って日本の消費構造が一気に冷えたことがある。
安定しない個人消費を景気の面から下支えしようと昔公明党は「地方商品券」なんてのを配ったが稚拙な政策的配慮もない経済対策は結局バラマキで消費の喚起はGDPのコンマ数パーセント上昇で終わった。
現在の道路特定財源の暫定税率は、それ自体、特別な状況なのだから、景気対策の面からも廃止すると個人消費を刺激するに十分な額である。一度下げたら再度上げられないとも言い切れないだろう。現に暫定税率に上げた過去があるのだから。
もう一つ暫定税率の解消は地方と都市の格差を是正する。
一般家庭支出を見ると東京都の都市部ではガソリン購入費が1世帯当たり1ヶ月1900円程。ま、単身世帯が多いとか理由は他にあるとしても公共交通機関の発達で自家用車の利用は少ない。ところが町村部では1世帯当たり1ヶ月で9700円程で5倍も多い(多く必要としてる)。公共交通機関が廃止され車に頼る生活を行っている町村部には道路特定財源の暫定税率廃止の恩恵がより大きいのだ。地方格差是正の方策が揮発油税の暫定税率廃止(低減)に隠れているのだ。
特定財源の牙城を少しでも崩す努力を
国民の目から見ても今回の自民党の「ブリッジ法案」は横暴で稚拙だ。先頭に立って旗を振ってる道路族議員の暴走を福田康夫首相は止めることが出来ないで居る。国民生活を混乱させないためと言うが、それでは、暫定税率の落としどころを探り3月までに決着させるのが一番の国民のための政治だとは思わないのだろうか。
一部の自民党道路族のための政治を行っている自覚が無いのだろうか。不思議なのは道路族以外の自民党から「落としどころを探そう」(河野太郎議員あたりがテレビタックルで発言していた)の声があることだ。必ずしも撤廃に向けてYesかNoかでは無い自民党内の事情もある。
民主党の国会運営を見ていると国民に向かって自民党の不当性をアピールするよりも自ら自民党に怒りをぶつける姿勢を選択してる。実はガキの喧嘩は両成敗で、国民にはどちらが不当なのか良く解らない。国民に向かってメッセージをアピールする姿勢を選択してもらいたい。
道路特定財源を1円でも削ることができれば、自民党道路族の面目丸つぶれなのだって深慮遠謀に立って行動してもらいたい。昔の「社会党的な」が台頭しては国民の信任を失うのだから。