ねじれ国会で何も決まらない国会運営

方向が見えない道路特定財源
 民主党の最初の取り組みがボタンの掛け違えだった。「ガソリン値下げ隊」である。国民のウケを狙って安易に特別措置を解消してガソリンを25円相当値下げしようとの発想だが、とても国民を代表した国会議員の行動とも思えない。
 税率軽減による経済効果を具体的に説明せずにただ「値下げ」では国会の場まで繋がらないのは自明だろう。
 国として議論しなければならないのは廃止も確かに範疇にはあるが、時代の産物であった道路特定財源をどのように時代の流れに合わせていくかの論議とその説明だろう。これは「ねじれ国会」であるなしに関わらず当然行わなければならない。当初の取り組みが「値下げ」だったものだから、地方の知事から猛反発をくらうことになる。道路特定財源が生まれた経緯、時代背景、そして現在の時代背景を説明し国民が納得できる方法論を展開するのが責務だったのに中間のプロセスを省き、結論から始めるからこのような結果を招く。
 今の段階で選択肢は狭くなっている。特に廃止の選択肢は短期的には無い。条件闘争によって軟着陸を計るしか解決策は無いだろう。その意味で「絶対反対」の方針は変化せざるを得ない。それが「ねじれ国会」の運営術だ。
 方向は二つしか無いように思われる。ひとつは現在の暫定税率の段階的廃止。ふたつめは道路特定財源の段階的な一般財源への移行だ。現在のネジレ国会では、この選択肢以外に極端な廃止とか今後10年継続とかの対極にある方法論は選べないだろう。もし、この対局のどちらかを選ぶとすれば、それは衆議院解散が必要になる。現実問題として自民党は衆議院解散を望んでいないから前述の二つの方向のどちらにするかは民主党に選択権があることになる。

一般財源化が最も落としやすいが
 現在の税収を捨ててしまうことは国家の運営として避けたいだろう。現実には小泉構造改革で国民の税負担を増やすことに成功したのだから、あえて減税をすることは無い。選挙の票に結びつくのなら大盤振る舞いもするが、その時期では無い。まして、消費税を上げると今の民主党の勢いでは選挙で与野党逆転の可能性もあり、税源は他に頼らざるを得ない。企業向け減税は何時までも続けられないのだから、何も現在の税収を減らす選択を取る必要は無い。
 このあたりが自民党の考えだろう。これに加えて「取らないよりは取ってバラマク」が自民党のビジネスモデルなのだから、暫定税率の廃止よりは一般財源化のほうが落としやすい。
 そもそも、特定財源って考え方は内閣の予算編成権を離れた税金で昔、塩爺が言っていたように「母屋で冷や飯食っているのに、別棟ではスキヤキ食ってる」状態になる。現実に「スキヤキ食ってる」状況は民主党が暴き出してる(セコイものが多いが)。
 永田町埋蔵金と言われるように特定財源は国会のチェックが入りにくく官僚によって隠された税金と言える。ここにメスを振るうのは民主党の長期政策として理解できるが、道路特定財源だけを目指して短期的に廃止で一点突破をはかるのは短絡的で国民の賛同を得られないだろう。「ねじれ国会」をますます「ねじれ」状態にしてしまう。
 現在の税制を見直し、時代に合わないものは再編成していく、そのための第一歩が道路特定財源のだと主張するなら説明責任が伴う。今のやりかたは視野狭窄で民主党がどの方向を目指して踏み出しているのか国民にはまったく見えない状況だ。

道路特別会計の規模と一般財源化
 国の特別会計は28あって、その歳出額は362兆円になる。一般会計の総額よりもかなり多い。もっとも、特別会計間で出入りがあるので実際には175兆円ほどになる。それでも、85兆円程度の一般会計の倍以上の規模である。
 この中で道路特定財源の規模は5兆6000億円になる。2007年にはこの中から1800億円(3%強)が一般財源に組み入れられている。
 注意しなくてはいけないのは、この特別会計の中で高速道路の割引に2500億円を当てようとしていること。一般財源への組み入れを上回る高速道路の割引は自民党のビジネスモデルである特定の産業に恩恵をまいて集票に繋げる方策だ。民営化した道路公団が自主的に値下げする訳でないので旧道路公団は痛くも痒くも無い。
 一般会計化するにも特定の集団(ガソリン等の購入者)から集めた税金を用途外に使うのはおかしいって論議が出るのに、特定の集団(高速道路利用者)にのみ恩恵が生じる税のバラマキはいかがなものか。
 基本的に自民党の道路族とそれを支える官僚の手のひらで自由に使える道路特定財源は額的には「余ったら一般財源に組み入れ」の姿勢なので、言葉だけは「一般財源化しています」と言っても額は微々たるものになっている。
 このような構造を国民に広く広報し、何故、行動を起こしているのかをキッチリ説明して政策提言をする民主党にならなくては、政権を担うことはできないだろう。
「ねじれ国会」状態はより多くの知恵が必要な状態とも言える。

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