チベットを巡る攻防戦、守りの中国が苦戦するか

暗黙の了解の制度疲労
 チベットの歴史を知ると古くからの独立国であったことがわかる。清の時代に清に支配されて独立国の地位を失うが、清の滅亡後に再び独立国となった。1950年に中国人民解放軍に侵攻されて再び独立国の地位を失うが、停戦とともにチベット自治区として現在まで続いている。中国の漢民族の急速な流入により、チベット族の独立が侵害されたり、ダライ・ラマ法王の教えに従う者は寺院から追放されたりと漢民族の流入によりチベット族は追い詰められている。社会の上部構造は漢民族が押さえ、教育の普及や中国語能力で後れを取ったチベット族には反漢民族の意識は潜在的に育っている。
 中国が2006年に「青蔵鉄道」を開通させてから急激に漢民族の流入が増え文化的支配まで及んできた。ちなみに「青蔵鉄道」は世界で一番高い所を走る列車で高度5000m以上を通行し車体は予圧構造になっている列車である。NHKなどのドキュメンタリーでは「青海チベット鉄道」として紹介されていた。
 中国が何故チベット支配を強化するかと言うと豊富な地下資源、特に鉱物資源に着目しているから。国際的な原材料の高騰に自国資源の利用を促進する狙いがあると思われる。
 加えて、1959年にインドへ亡命したダラ・イラマ14世がチベット亡命政府を樹立したが現在のチベット自治区に戻る公算も無く、逆にダライ・ラマ14世に合いに山脈を越える僧侶を中国軍が撃った映像がyutubeで世界に流される等、中国による人権侵害には国際社会は注目している。

北京五輪にも飛び火した人権問題
 北京五輪のスピルバーグ監督が北京五輪の芸術顧問を降りたのはスーダン・ダルフール問題で中国がアフリカの石油をスーダンから入手するために、スーダン政府の人権侵害に無頓着なのが原因。これにも、資源に関わる中国の姿勢を問われている。
 国際社会ではスーダン・ダルフール問題はかなりの問題なのだが日本ではマスコミの取り上げが小さい。2008年に北京で五輪を開催するにたる国なのかが世界から問われている。誰かがトリガーを引けばかつてのモスクワ五輪とその報復のメキシコ五輪のように参加取りやめ国が続出する可能性もある。
 共産主義国家の常として人権に教条が優先する政治形態なので多少の人権侵害には目をつむる風潮があるが、国際社会では最も重視される国家の品格が人権擁護だ。その意味では表向き準備着々の北京五輪だが開催までには紆余曲折がありそうだ。
 聖火のヒマラヤ(チョモランマ)越えが行われる5月は登頂が禁止された。そもそも、インドからネパールへ、そして中国へのルートで今回のチベット騒動の再現の可能性が高い。ただし、今度は国際社会の取材の元での騒動になるので情報は鉄のカーテンの中から一気に西欧社会に流れ出るだろう。

巧妙に仕組まれた同時蜂起なのでは
 国民(チベット族)に不満が燻っている時に一部の先鋭集団が民衆を煽って同時多発で仕掛けたのが今回の騒動では無いのだろうか。これは「やりやがったな」と言うよりも組織力の強さを感じさせる行動で、ダライ・ラマ14世が1959年から続けてきたチベット亡命政府がコントロール出来ない先頭集団が育っているのかもしれない。元々ダライ・ラマ14世は非暴力に徹して来たのだから。
 中国は情報を出さないので真相が見えてこない。見えてこない故に様々な憶測を生む。既にチベット地区の21万人のインターネット利用は遮断されてるらしい。中国国内からもyutube等への接続を遮断してる。中国国民は政府の大本営発表しか入手できない。「一部の不満分子の暴動に市民が巻き込まれて負傷者が出ている。中国は殺傷能力のある武器を行使していない」等である。現実には現地の写真には戦車に近い装甲車が写っているし、おそわれたのは漢民族の施設である。チベット族に死傷者が出ているとした矛盾する。
 自分に都合の悪い情報は遮断すれば良いとの考え方が未だに中国政府にあるとしたら、国際社会で通用する国家にはなれない。また、資源・エネルギー覇権主義も国際社会の中で通用しない。中国が真の民主主義国家を目指して政治制度の改革を行わなくては何時か周辺や中東で中国が起こした国際紛争が起こるだろう。その時期はそう遠くは無い。
http://www.tibethouse.jp/home.html ダライ・ラマ法王日本代表部事務局

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