自民党総裁選挙祭りは、キムタクのCHANGEのパクリ

候補者選びは出演交渉
 出馬に向けて意向を表明したのは以下の4人(9月10日)
1)石原伸晃元政調会長(51)
2)小池百合子元防衛相(56)
3)麻生太郎幹事長(67)
4)石破茂前防衛相(51)
5)与謝野馨経済財政担当相(70) 届け出順
である。この顔ぶれを見てあえて麻生太郎包囲網のような人選になっている。 「人選」って言葉を使うのは、実は出馬するメンバーは周到に自民党のトップで決められているからだ。承知のように自民党の総裁選挙には国会議員20名の推薦人を必要とする。
 過去には推薦人なったら負けたときに報復人事で干されるからとか、反主流と見られたくないとかで推薦人になることを躊躇する国会議員が多く、20名の推薦枠はハードルの高いものだった。現に20名の総裁選の推薦人を集められなくて出馬を見送った議員は多かった。
 しかし今回は事情が違う。2代続けて辞任総理を搬出した自民党としては、世間の冷たい風に晒されないように「総裁選挙祭り」で一気に支持率を挽回しようとの奇策に出てきたのだ。
 だから、推薦人集めに苦労する必要は無い。各候補者に割り振られている。この邪推を回避するために早々と派閥横断的推薦人とのアドバルーンを上げている。
また、上記の4者の争点も織り込み済みだ「麻生さんとはウイングが違う」と石原伸晃氏は対決姿勢を鮮明に、いや先鋭にして「総裁選挙祭り」を盛り上げている。マスコミは勝手に消費税アップによる財政再建派と与謝野馨氏を持ち上げて宣伝してくれる。麻生太郎氏は格好のオタク発言者でマスコミを賑わしてくれる。小池百合子氏はアメリカの民主党大統領候補選で戦ったヒラリー・クリントン氏まがいの日本初の女性総裁を打ち出してくるだろう。「女子の本懐」なんてキャッチ・コピーも持っているし。
出演交渉は簡単だ、個性的シナリオを持った個々人に党が調整して20人の推薦者を割り振れば良いだけなのだから。そんな単純な仕組みで「自民党総裁選挙祭り」が演出できることをマスコミは知ってて数字が欲しいので国民に山車を担がせる。

シナリオはCHANGEと同じ絵空事
 TBSが初めて月9で苦戦した木村拓也主演の「CHANGE」。30%は絶対確実と1クールの長さを縮めてまでゴクセンを避けて始めたドラマだが、30%には及ばなかった。木村拓哉の総理大臣って設定も奇抜だし、総理大臣になるs総裁選挙のストーリも奇抜なのでシリアルな雰囲気が醸し出されず、どちらかと言うとバラエティ的なドラマになってしまった。
 しかし、今、それと同じ事が「自民党総裁選挙祭り」で行われているのだから滑稽を通り越して日本の政治家はいかに国民をナメテルのかと憤りを感じる。
しかもCHANGEと同じ総選挙対策の人気取り内閣を作ろうとしている。
民主党が福田康夫首相の辞任で勢いづくかと言えば一抹の不安があるわけで、今回の「自民党総裁祭り」なんかは地味路線で行く民主党には出来ないパフォーマンスで国民の目をそちらに反らされる恐れがある。しかも鳩山由紀夫幹事長が言うところのメディア・スクラム」で民主党代表選挙は数字が稼げないのでマスコミは報道しない最悪の時期に「自民党総裁選挙祭り」の日程がある。
 加えて祭りの後に「満艦飾内閣」で数字の稼げる派手な政治家を集めて組閣を行るだろう。民主党は地味でオーラが無いので国民に訴える術を失う。そこまでストーリが進んだら自民党は解散総選挙に打って出るだろう。
 選挙期間中は「満艦飾内閣」の動静にばかりマスコミが集まり、民主党は「撃沈」となる。ポピュリズムの典型のような国会が出現してしまう。

調子に乗った自民党に鉄槌
 順風満帆のような「自民党総裁選挙祭り」だが、自滅の落とし穴がある。本来出演者名簿に名を載せる実力の無い小池百合子氏、石原伸晃氏を舞台に載せてしまうことだ。窮鼠猫を噛む。この2名は政治経験が薄いので他の国会議員や地方支部に向けてメッセージを発するよりも、直接国民に向けてメッセージを発することに力を入れてくるだろう。特に小池百合子氏はどの地域に行ってもマスコミの着目度、テレビへの露出度は高くなる。
 で、間違って小池百合子氏か石原伸晃氏が当選してしまったら。
本来の脇役が主役になってしまう。自民党が描いたシナリオが狂う瞬間が両氏の中から当選人が出る時だ。
 小池百合子氏への国民の支持は強い。先の防衛大臣更迭の時は明らかにならなかった守屋氏の一連の業界接待漬けを知って事務次官と対立したのだから、正義の人なのだと後になって解った。ウイ・シャル・リターンと捨て台詞も決めているし、当選しなくても「満艦飾内閣」で防衛大臣に復帰すれば一連のサクセスストーリーで自民党は大きく支持率をあげるだろう。とまぁ、これは自民党の書いたシナリオの「想定内」。
 しかし、小池百合子氏を総裁選に担ぎ上げると予想外の健闘から当選してしまう恐れがあるのだ。そこを自民党は読み違えてはいけない。決して舞台に上げてはいけない筆頭なのだ。石原伸晃氏はかなり自民党にとって安全パイだが、これとて自民党の若手、特に次回当選がおぼつかない小泉チルドレンの支持を集めるので怖い存在だ。
親子で総理大臣なんてサプライズがあたりまえの今の日本の政治状況。親子で総理と東京都知事(石原伸晃氏)や日本で初めての総理大臣(小池百合子氏)なんてサプライズが起こるかなり危険なシナリオをせっぱ詰まった自民党は「自民党総裁選挙祭り」で描いてしまった。
 さて、その視聴率はいかに。数字(支持率)が稼げるようでは日本の民主主義はまだまだ「よちよち歩き」ってことだ。

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2008.09.08 Mint