自民党総裁選挙は衆議院選挙に向けたパフォーマンス
党の事情、個人の事情
今回の自民党総裁選挙は5名によって争われる。5名も居れば賑やかで自民党の広報にもなり支持率向上とほくそえんでいるだろう。マスコミも連日扱ってくれて無料で広報してくれる。
しかし、マスコミの報道は「麻生太郎氏が過半数の票を集めた」と報じており総裁選挙は始まったばかりで終演のムードが漂う。これは自民党の誤算だろう。本来は小池百合子善戦」であおって欲しかったのだろうが、読みどおりにはならなかった。
5名は少し多すぎかもしれない。政策論争を行うにしても5種類の政策の中から選ぶのでは選択肢が多すぎて選びきれない。そもそも、石破茂氏や石原伸晃氏は総裁選挙に勝つつもりで立候補したのだろうか。
小池百合子(東京10区)、石原伸晃(東京8区)、与謝野馨(東京1区)の東京組には選挙区の事情もあるようだ。
与謝野馨氏は前回の衆議院選挙では海江田万里氏に約14万票:約10万票、小池百合子氏は刺客ではあったが民主候補にダブルスコアで勝利、石原伸晃氏は16万票対9万票で勝利している。但し、石原伸晃氏は社民民主協調路線で次回には社民の保坂展人氏が国替えして立候補することになっている。
加えて、小泉チルドレン票が上乗せされた先の衆議院議員選挙なので、次回は盤石とは言い切れない面々である。このあたりの個人の事情と、メディア・ジャックで支持率を上げたい党の事情が折り重なって今回の5名乱立の自民党総裁選挙になったのだろう。
麻生太郎氏が過半数獲得では盛り上がらない
マスコミの調査によると地方票(141票)で過半数、議員票(386票)でも出陣式に20名前後しか集まらない他氏を横目に125人が集まっている。
読売新聞の9月11日現在の議員票の調査結果によると
麻生太郎 197
与謝野馨 34
小池百合子 29
石原伸晃 24
石破茂 24
不明 78
政治評論家・小林氏の調査結果によると
麻生太郎 100+218=318
与謝野馨 11+96=107
小池百合子 15+25=40
石原伸晃 10+25=35
石破茂 5+23=28
麻生圧勝である。これでは政策論争は不要だろう。完全な出来レースなのだから。国民の関心も急速にしぼんでしまう。
そもそも、今回の自民党総裁の任期は通常の3年では無く、安倍総理の任期3年中の辞任に加えて福田康夫総理も辞任なので、この補完であるから来年の9月まで。
1年でまた「総裁選の秋」が巡って来る。そもそも、来年の秋には自由民主党が政権政党ある可能性は五分五分で今回が最後の自民党総裁=総理大臣かもしれない。
とすると、「麻生でも誰でも良い」が国民の一番の関心事ではないだろうか。麻生太郎圧勝による自民党の終演劇がいよいよ開幕するってことかもしれない。
早急に麻生圧勝の雰囲気を作り、安心した麻生太郎氏が失言問題を引き起こし支持が低下するシナリオが盛り上がるかもしれない。麻生氏かろうじて滑り込みセーフの状況を作るにはキワドイ賭に打って出る必要がある。
この賭は一つ間違えば雪崩現象を生み、小池百合子勝利に繋がるのだが、このためには、1回目の投票で麻生氏が過半数を取れず、2位に小池百合子氏が滑り込んでいる必要があり、かなり困難なシナリオになる。
自民党のコップの中の嵐
構造改革、経済優先の政策論争をする前にやっておかなければならない事がある。それは、国家を論ずるより足下の自民党改革を論じなければならない点だ。
憲政史上まれに見る2代連続しての総理大臣が辞任って事を自民党は政権政党としてどう考えているのか。安倍総理は健康問題として100歩譲っても良いが、福田康夫総理については自民党が支えられなかった責任はどのように受け止めているのか。
小泉純一郎元首相は3度目の挑戦で自民党総裁になった。2度の戦いは政策論争であったが3度目は「自民党をぶっこわす」と党の論争であった。これが、だらしない自民党を立て直してくれるならと票を集め当選し2期6年弱総理大臣の椅子に着いたのだ。
現在の5名の候補者は足下の自民党を語らない。国政を語っているが最後の自民党出の総理大臣になるかもしれない候補者が国政を語っても短期間で実現は不可能で、結局補正予算編成程度の役割しか与えられない。
政権は2回予算編成を経て政策になると言われている所以だ。そして自民党は今後2回予算編成が出来る可能性は五分五分だ。
一番大切なことは、福田政権を支えられなかった自民党の課題を整理し、今後政権政党として総理(総裁)が辞任に追い込まれることが無い体制をどう作るかだ。
それが今回の自民党の総裁選挙の争点であるはずなのだが、自民党再建は他人事だ。「あなたとは違うんです」の「あなた」は福田総理が自民党に向けた最大の皮肉だったのだが誰も受け止めていない。