小池百合子支援でも山は動かず

小泉純一郎元首相の行動の裏
 9月16日に東京・北青山のイタリア料理店「SELAN」で行われた小池百合子激ランチに小泉純一郎元首相は自ら足を運んだ。会場には26名の小泉チルドレンを含む国会議員が集結した。
 この会場は平成7年に初めて小泉純一郎元首相が総裁選挙に立候補したときにも激励会を開いている。この会場で小泉純一郎元首相は「あのとき敗れたからいまの私が居る」と負けるのを前提で話を進める。「応援しない人を敵と思ってはならない。いずれ味方になるかもしれない。政界とはそういうものだ」との助言も。
 まるで敗戦処理のような挨拶だが、これは総裁は最初の挑戦で成就するものでは無い、つまり、再挑戦を前提に今回の総裁選挙を戦うようアドバイスしたようにも見える。
 麻生で決まりの自民党総裁選挙に若干のエッセンスを振りかけた程度で終わるのは自明で、まさか、逆転勝利に繋がる行動だと当の小泉純一郎氏も思っていない様子だ。
 激励された小池百合子氏も若干総裁選挙に勢いが出る程度で、小泉チルドレンの票が自分に向かうとも考えていないようだ。
 この時期にあえて小池百合子激励に動いた小泉純一郎元首相の考えは何処にあるのか。常識的には小泉純一郎って何も考えてない、思いつきのサプライズと片づけるのが無難だが、あえて憶測すると幾つかの今後の自民党のそして政界の動きが見えてくる。

小泉チルドレンの選挙力
 先の郵政選挙で当選したいわゆる「小泉チルドレン」と呼ばれる自民党の一期生議員は総裁選挙後に予定されている衆議院解散に続く選挙で再当選して国会に戻ってくるのは難しい。地盤・看板・カバンと呼ばれる三種の神器を持たず小泉人気だけで当選したのだから。逆に言うと、次回の参議院選挙で自民党敗退の原動力が現在の小泉チルドレンだろう。
 麻生太郎氏に代表される古い自民党のもとで選挙が行われれば当然小泉チルドレンは注目されないわけで、日本初の女性総理大臣を担ぎ出して選挙戦を戦わなくては勝算は無い。選挙区よりも比例区での当選者が多いので自民党の獲得票の総数が減少するであろう今回の選挙では手の打ちようが無いのが現状だろう。
 逆に約80名居ると言われる小泉チルドレンの中で今回の衆議院選挙を経てなお国会に戻ってくる議員は通常の選挙の洗礼を受けた有力議員として活躍の場が用意されるだろう。問題は何人国会に帰って来られるかだ。
 小泉純一郎元首相の思惑としては自民党から小泉チルドレンリターンズで30名程(かなり高いハードルだが)民主党から前原一派が20名(これも高いハードルだが)の50名が集まれば新党を結成して第三の勢力になることが出来ると踏んでいるだろう。現在の公明党の30強の議席を大きく越える力が新党には必要になる。自民党が獲得する議席にもよるが、下手をするとこの新党は民主党と共同会派を作る可能性もある。
その手応えを今回の小池百合子を激励するランチで得たと思われるので、政界再編の火種は確実なものとなった感ががある。

選挙の後は政界再編
 今回の既存政党の獲得議席によっては様々な政界再編が考えられる。
自民304
民主114
公明31
共産9
社民7
国民6
その他9
合計480
自民党だけで2/3を越えている、公明党を加えると69%にもなる。しかも、今回の公明党の定額減税のごり押しに見られるように公明投票を得て当選した自民党議員は多い。
これが自民党単独で過半数を割り込む場合(獲得議席数240以下、現在の64議席減)は民主党がその議席を全て得たとしても獲得議席数178で過半数には届かない。自民公明連合で過半数に達すれば現状維持である。つまり、自民党が200議席を割ることにでもならない限り民主党の政権は実現しない。現在の議席から一気に100議席を失うのは考えにくい。
 ただし、仮に64議席減で240議席になったとして、ここから30議席が新党に流れれば208議席で自民党の210議席に接近する。これに公明党等の諸派と連合すれば政権交代は可能になる。  実は2大政党制と言いながら過渡期に有る今の日本では20名程の人数の少数党がキャスティングボードを握る状態にある。さて、20名を集められる力量のある指導者はあらわれるのだろうか。

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2008.09.12 Mint