「ものづくり」を行わないと国は衰退する
バブルの崩壊は一気に起こる
昨年の8月頃からサブプライムローンの焦げ付きが金融不安として広まっていた。にも係わらず市場は敏感に反応しなかった。ドルは相変わらず強いし、株価も中国を除けばさほど下降しなかった。
しかし暗黙の了解事項があった「北京オリンピックが終わったら中国がトリガーになって金融恐慌が起こるかも知れない」。実際にはトリガーは中国では無かった。
日本の証券会社は証券取引を代行するのみだが、アメリカの証券会社はこれに加えて何でも証券化して一般に販売する。
金融工学によって例えば賃貸ビルの証券化だ。50億円のビルを建築する。本来ならば証券化して50億円を市場から集めるのだが、これには手間がかかる。証券の利回りも世間並みなので集めるのに手間暇かかる。ところが、銀行融資が低金利なので10億円だけ証券にして販売し残りの40億円を銀行から借り入れする。で、50億円のビルを建てて賃貸収入は50億円に対して入ってくるので証券の利回りは5倍になる(ま、正確には手数料等で若干下回るが)。この利回りの良い証券は飛ぶように売れるわけだ。
問題は10年で証券を償還して解散する時にこの50億円のビルは売却できるだろうか、しかも限りなく50億円に近い額で。
旧来はそれが出来たのだ。銀行の金利の何倍もの割合で不動産が値上がりしていた。買った時より高く売れたのだ。これが、ひとたび不動産不況が来ると連鎖的に倒れていくことになる。その引き金が昨年8月のサブプライムローン問題だった。
その嵐の前の変に気圧が低くて湿度の高い状態に居たときに、リーマン・ブラザーズ倒産
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となったのだ。
市場は最悪のシナリオに向けて「ついに来た」って確信から迷走を始めている。それも高速迷走になっている。
日本への影響は少ないとは言われてるが
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の日本への影響は少ないと言われているが、地方銀行や信金などリーマン・ブラザーズの証券を購入している金融機関もあり、個人金融にはあまり影響しないだろうが、金融機関の中には影響の大きい所もあるだろう。
アメリカの経済の実態は「金融工学」と呼ばれる理論で金が金を生む証券化による金融至上主義の経済だ。証券がさらに証券化されて末端では何が含まれてるのか解らない中国産ギョーザ状態なのだ。
そこでは実物が売買されるのでは無く、実態の解らない、ただし、毎年利息は確実に入ってくる金が金を生む「金融工学」商品が取引される。その日の稼ぎは解るが将来は「金融工学」の複雑さに隠れて良く見えない。
金を貸した元締めは誰に貸したか解る、だから誰から返してもらえば良いか解っているがそれが証券化された末端では誰に貸した何なのかも解らない。
財政赤字と貿易赤字に苦しむアメリカが証券市場を利用して外国から金を集めなければならないのか、このような証券化天国にアメリカが陥ったのは実は「ものづくり」をしなくなったからなのだ。
かつてアメリカは世界の工場であった。自動車、造船、鉄鋼等の産業が豊富な資源とエネルギーを利用して一大輸出産業を形成していた。そもそも先の第二次大戦で日本は「アメリカの物量に負けた」と言われた。工業力を生かして製品を作成し、その輸出による外国からの金はおおいに国内を豊かにした。ところが....
「ものづくり」をしないと国は滅ぶ
自国の通貨が世界で使われると輸出産業のメリットが失われる。つまり、自国通貨で支払われるので相手国がドルを持っていないと支払われない。相手にドルを渡すためには相手から何かを買ってドルで支払ってやる必要がある。
そこでドルをじゃんじゃん印刷して世界で通用させることになるが、相手から何かを買ってドルを渡したがそのドルは印刷したものだから、市場に出れば貨幣の価値が下がる、自国内に帰ってきても困る。
相手国で将来アメリカのものを買うために備蓄されるのが最高だ。そうでなければドルはインフラ紙幣になってしまう。で、アメリカは国債を発行して各国に備蓄してもらってドルの流通を下げることになる。
ところが、ドルが強い通貨だと輸出品は高価になって価格競争力を失う。これが「ものづくり」と輸出のジレンマだ。円高だと日本の輸出産業が振るわないのと同じ事がドルには強く起こる。そこで製品製造と輸出から金貸しや証券を売るビジネスに切り替えることになる。かつてイギリスもこのジレンマから脱却出来ずに世界の金融の中心に脱却しようとして「ものづくり」から撤退し、結局はポンド離れが進み、アメリカにその座を譲ったのだ。
実はものづくりをして製品を販売していれば仕入れた材料が加工され付加価値を生んで国外に出て行くので貿易収支は黒字になる。ところが、証券化は必ずしも付加価値を生まない。何故なら、複雑な「金融工学」は何だか解らない証券の販売に行きつくからだ。証券を売っている側も儲かるのかどうか解らない。つまり担保されているのは未来の金という不確かなもの。しかも「ものづくり」と違い不良品(劣化証券)が混じる確率は経済状況によっては非常に高い。
結局アメリカは「ものづくり」には戻れないだろう。中国が世界の工場であり続ける内は中国を使っていれば良いのだ。
では、アメリカは今回の証券バブル崩壊からどう立ち直るのか。一時期日本も真剣に導入を検討したCO2排出権取引も今回のバブルで崩壊するだろう。
とりあえず支出を止めるためにイラクやアフガンからの撤退を早急に行うだろう。証券取引によらない世界に通用するアメリカを作るためには先端技術分野で活路を見いだすしか選択肢が無い気がする。なんせ、日本人4人がノーベル賞を受賞したが南部陽一郎・シカゴ大名誉教授が所属するシカゴ大学では「28人目だね」との会話が飛び交っているのだから。
実態の伴わないものはバブル(泡)であり何時かはじけることになる。「ものづくり」で実態のある経済活動を行うべきだろう。