株価の急落をあおる麻生太郎総理
火を付けて回っても
最悪のタイミングが今回のリーマン破綻だろう。9月15日は日本は祝日で休み。その間に世界の金融市場は地球を一周して軒並み株価を下げていた。また、衆議院の解散総選挙で大敗が予想される自民党は衆議院の解散をやりたくないがために、選挙で政治空白を作ってはならない、解散よりも景気対策と屁理屈をつき始めた。
そもそも経済の混乱時に政治は経済安定に向けてのメッセージを発するべきなのだが、自分たちの都合で火を煽って拡大させている。ここにきて政治が動かないならと為替レートまで円高に動き始めている。
輸出産業中心の日本の産業構造では円高に傾くと企業の収益が悪化する。なんとも為替相場は円安に維持する必要がある。それに向けてのメッセージが麻生総理大臣からは無い。ま、ホテルのバーで飲む輸入ウイスキーが安くなって歓迎だなんて馬鹿なことは考えてないだろうが。
そもそも、現在の株価暴落は日本の証券市場の6割を外国人が持っていることに起因している。株券の形で資産を持つのは目減りが危険なので一斉に現金化に走ったってことだろう。そして投げ打った株の代金をドルの不安定な紙幣で持つのでは無く円にしておきたくて円が買われて円高の状況になっている。
なんせ、日本は大量のドルを持っている。そのドルが市場に流れたらドルの価値は低落する。そうかと言って一時期のユーロの強みもヨーロッパの金融危機で無くなって来ている。
日本が円で世界の主導的立場を取れるタイミングでもあるのだが、もはや今の自民党には天下国家を語る政治家は居ないだろう。なんせ、自ら混乱状態を放置しておいたほうが衆議院を解散させなくて良いと考えるような政治家ばかりなのだから。
実経済への影響を最小に
株価は必ずしも実経済を反映していない。株価が実経済のバロメータだとの考え方は証券業界のためにする議論だ。株価は思惑とトレンドで変化する。長期的に見れば実経済のバロメータたるが、短期的に見た場合実経済と関係の無い所で乱高下する。
今の株価は外国人投資家による損覚悟の投げ売り状態だろう。まだ下がるかもしれないが11月末あたりには落ち着くだろう。値を戻すのは数ヶ月かかるだろうが。しかし、その間に実経済も減速を始めたら株価を戻すのは容易では無い。
輸出先であるアメリカやヨーロッパが購買力を失ったら日本経済は確実に減速する。そして、現に金融危機で購買力は落ちている。
結局、小泉純一郎首相の規制緩和とアメリカ共和党的な市場原理主義が招いた格差とは輸出産業の勝ち組を多く発生させ、国内需要産業に多くの負け組を作った。円安に支えられて輸出産業が拡大基調だったのがそのまま突っ走ったので局面が変ったときに内需拡大策を取ってこなかったツケが回ってくる。
輸出依存の経済運営って昭和の時代のものじゃなかったのか。情報化社会では工業化社会では考えられなかった産業形態が現れると言われているが、日本国内は未だに工業化社会に足踏みしている。
為替の安定が実経済に必須
工業社会から脱却するにしてもその原動力は実経済の勢いが必要だ。
実は北京オリンピック以降の中国をトリガーとする経済の混乱が予想されていた。中国の経済運営は共産党一党独裁なので舵取りを間違えても誰も修正が出来ない。中国には大きな地域格差問題があるが、これは単に都市と農村って区分けでは無く北と南の格差もある。世界の工場が集中しているのは南部であるが、こちらは膨大な輸出産業の集積地でもある。
ところが消費中心の経済が過熱気味な北部では最近インフレが進みつつある。インフレ抑制には市中金利を上げる必要があるが中国政府は逆に金利を下げてしまった。これは、南部工場地帯での倒産が多く、この対策のためだ。何故、南部工業地帯の倒産が多いかと言えば軽工業的な産業の輸出能力がタイやカンボジアに流出してアメリカやヨーロッパからの需要が途切れているからだ。
農村部から大量に集められた人民が工場の倒産とともに市中に溢れている。人口規模が大きな中国では地域経済が衰退すると1000万人単位で失業者が派生する。
輸出振興のためには中国は人民元安を積極的に進める必要がある。現実に中国政府はそのような選択をしてきた。しかし、国際社会には人民元改革を公約している。
中国も自国内の経済低迷と国際的圧力のどちらに対応するか。結局自国内有線にならざるを得ないだろう。中国元の切り下げ(元高)を行ったら中国の輸出産業は壊滅的になる。そして、海外からの投資は元安を前提に入ってきているから、これも逃げ出す。
為替は実は各国協調して調整が可能なものだ。円高と株安の関連を断ち切るには大胆に円安に導く市場介入が必要なのだが、政府はばらまきこそが経済政策と勘違いしている。