政治で行政に工夫を盛り込まなくては国が滅ぶ

党首討論は突っ込み所満載
 11月28日に麻生太郎自民党総裁と小沢一郎民主党代表で党首討論が行われた。
臨時国会を延長して二次補正予算を提出せよと迫る小沢一郎氏に対して一次補正予算は年末を睨んだ補正予算、二次補正予算は年度末を睨んだ補正予算だから1月の早い時期に通常国会を開催し二次補正予算を審議するって論調で麻生太郎総理は反論する。
 小沢一郎代表は二つの矛盾を基本に論争する段取りを立てていた。一つは先の二次補正予算を臨時国会に出せ。二つ目は衆議院を解散せよ。この二つを実現するために、麻生太郎総理の答弁の矛盾を引き出し追い詰めていく。最初に二次補正予算は年末を睨んだものとの言質を取ったのだから、それじゃぁ年内は安心なら衆議院の解散総選挙を行おうと引き出せば良かった。
審議中の法案が全てご破算になるから現実的では無いが、麻生太郎総理が経済対策を行なう時期に政治の空白は望ましく無いと言っているのが矛盾する点を突けば良いのだ。
 国民へのテレビを通したアピールって面では同じ話を繰り返し(3回も)述べる麻生太郎総理よりも段階を踏んで言質を取りながら攻めて行った小沢一郎代表のほうに軍配が上がるようだ。
 時間が短かったので一点突破に近くなったが、「3代前の殿様の建てたお城に頼って守りの政治をしてるが、麻生総理自身が建てたお城で攻めの政治をするべきじゃないのか」と迫っても良かったと思う。議員内閣制の制度を盾に衆議院の解散総選挙を行わない自民党政権を痛烈に皮肉っても良かったと思う。

本場イギリスでは毎週行うのが習慣化
 成文化した憲法の無いイギリスでは立法府の判断は非常に重要になる。国会議員は性別以外は何でも変えられると言われる所以は、よりどころとなる憲法の無い緊張感から来る。
 政党の党首が何を考えているのか。今の国会では何が争点なのか。譲り合える部分は何処なのか。それを水面下の議員運営委員会で決めるから政治が解りずらくなり国民の国会への関心を薄くする。イギリスのように丁々発止毎週やって争点の明確化をしないと本当国民には議会が何をやっているのか解らない。
 もっと心情的な話に置き換えると、政党のリーダーは他の政党との違いを明確にするとともにリーダとして対外的に戦う者こそふさわしい。だから、口下手では党首は務まらない。その意味で小沢一郎代表は自らが相応しくないと思えば代表を替わるべきだろう。そもそも党首討論制度を国会に導入したのは小沢一郎代表本人なのだから。
 結局政治空白が続くのだろう。議論することが民主主義の基本なのだから国民に見えるように議論される党首討論を行わないのは国民から見たら休眠国会だ。
 今回の件で意外と麻生太郎総理は議論に弱い印象を持った。同じ答弁を繰り返して「ご理解を」ってのは官僚の答弁で政治家の答弁では無いだろう。

政治の工夫が国家を発展させる
 日本の官僚制度は国会まで含む行政府を作ってしまったようで、政治家は一生懸命予算獲得や既得権益に首を突っ込む。本来なら立法によって行政をコントロールする仕組みが三権分立なのだが、その境目が非常にうやむやになっている。
 例えば定額給付金だ。景気対策のバラマキでしか無いのだが、今一度原資である2兆円の税金の使い方を考えても良いのでは無いか。給付金ありきの議論では無く立ち位置を変えて2兆円の税金投入で国家のために何が出来るか。
 そう、小泉純一郎元首相が「米百俵の精神」と言った税金の使い方の工夫。
 2兆円は国民に定額給付金として配れば一人12000円。ま、この12000円から始めても良いのだが、やはり2兆円丸々で考えてみよう。
 雇用情勢は自動車を筆頭に派遣社員、季節労働者の契約切りにより多くの失業者を生み出してる。実は雇用保険を財源として職業訓練を行っているが、人材は国の基本なのだから職業訓練にも税金を投入してはどうだろうか。デンマークではGDPの1%もの額を職業訓練に使って効果を上げている。ドイツでも0.5%を職業訓練に使っている。日本は0.04%でしか無い。これでは学業教育と企業の欲しい人材とのミスマッチを招く。ドイツ並みで2.5兆円必要になる。
 後期高齢者の保険料を2年間無料にするには2.2兆円。
 限界集落で赤字経営の民間バスが廃止されているが、スペシャル・トランスポート・サービスってのがある。高齢者や障害者で公共の交通機関があるにも使えない人を対象に電話で呼ぶと戸口まで車が来て目的地まで運んでくれる。これを限界集落で展開してはどうだろうか。アメリカでは9割を市町村と州が補助してる。日本は補助は挨拶程度の額でしか無い。サンフランシスコ市で運営経費23億円。同規模の世田谷区では2000万円の補助しか出ない。これを全国に展開して9割の補助をしても2兆円なら11年間運営できる。
 定額給付金でバラマキをしても社会は変らない。政治が工夫を凝らして「米百俵の精神」を発揮すれば社会を変えることができる。
そう考えると今回の定額交付金は無策以外の何物でも無い。しかも経済対策優先と言いながら景気の好不況に係わらず道路は何時もと同じように作り続ける。既存の枠にまで手を入れて景気対策するのでは無く12000円で国民を買収する選挙資金を私化してる無策を越えて愚作、あきれた政策なのだ。

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2008.12.03 Mint