不買運動が起こっても不思議無い経営者達

公器じゃない企業はお引き取りを
 市場放任主義のアメリカ的グローバルスタンダードだとか蜂の頭だとか言ってるのが今回の金融危機を招いた元凶であることは広く国民の知る所となった。サブプライムローンだとかヘジファンドだとかを知らなくても、年末の日比谷公園の「派遣村」のマスコミのセンセーショナルな報道に接すれば、市場放任主義に則った企業経営が陥る末路を知るには時間はかからない。
 ガザ地区への武力行使を行ったイスラエルの後ろ盾な企業の不買運動を行おうとプロ市民の方々はネスレだとかミスドの不買運動を叫んでいるが、もっと基本的に日本の国をこれからどうするかを考えたら、先のブローバルスタンダードこそが企業経営と呪文を唱え、利益至上主義に走り、はては従業員を生産機械の一部として扱い生産調整のために平気で契約を切る。そんな経営を行っている国内企業に目が向かないのだろうか。(所詮プロ市民の敵は「アメリカ帝国主義」って幻想って意見もあるが。)
 実は、今回の件は企業体質では無い。経営者そのものの判断が直接企業のイメージに直結する経営課題なのだ。キヤノンは創設者である吉田五郎、義弟の内田三郎これを後援した御手洗毅らによって設立されたカメラを本業とする製造会社あった。後に社長になった御手洗毅はキヤノン的家族経営を社是として従業員を大切にした。
が、数代替わって御手洗冨士夫氏(現会長)は工場労働者に派遣社員が認められると生産の拠点に大量投入し、社員を生産機械の一部として使用し利益を優先した。しかも経団連会長としての言動は今回の市場放任主義の限界が見えているにも係わらず10年一日のごときアメリカ的グローバルスタンダードだ。経団連会長としての品格にも疑問が生じる。こんな会社の製品を買いたいと思うだろうか。

おもしろく無い会社にしたもんだ
 ソニーも社風では無く経営者の責任が大きい。ご存じのようにソニーの創業者は井深大氏と盛田昭夫氏。そして現在の経営者はハワード・ストリンガー氏である。
彼が経営者(CEO)になってから「ソニーはつまらない会社になった」の風評が蔓延した。にも係わらず「つまらない会社」のまま経営を続けてきた。そしてブルーレィディスク戦争に勝利したにも係わらずブルーレィディスクはまったくソニーの経営に貢献しない。ましてやヨーロッパのユーロ圏への過大な営業展開戦略が為替レートの変動でユーロ安となり急激に経営が悪化した。
 かつてはトリニトロンで飛ぶ鳥を落とす勢いのテレビも技術開発が進まないのと後発故に価格低下に耐えきれず主力の座を得ることができない。
 そもそもR&Dがソニーの社風であり、iPhoneとかiPodは本来ソニーが作る商品だろう。。R&D主体の会社が株主の顔色を伺い、目先の利益に走ると「つまらない会社になった」となるのだが、現在の経営者はそれがグルーバルスタンダードだと信じて疑わない。
 ソニー設立以来の最大の危機、それはソロバン弾いて出てくる経営問題では無く、社員のスピリットに起因する経営問題なのだが、経営者は自らの経営責任よりも社員を削減して利益を確保するのが経営責任だと経営ミスの上塗りを重ねている。
 そもそもソニーでは人材流失が止まない。「企業は人なり」の精神が欠落したソニーを去っていく技術者が多い。そもそも、現在のソニーの株価ならビルゲイツが小遣い出して買収し、マイクロソフトの1部門に吸収合併するのが得策と思われる。ソニーの経営陣は膨大なストックオプションを得てリタイア出来る訳だし、渡りに船だろう。
 こんな会社のVAIOやPSやPSPを買いたいと思いますか。そんなに欲しいならヤフオクで中古を買えば良い。そもそもサポート体制が脆弱なソニーがパソコンを売るべきでは無いと思うが、その経営課題も初期の頃から放置状態だ。

完全に経営判断ミスだ
 トヨタの場合は悲惨としか言いようが無い。同族社長が今回就任するが、その前の渡辺捷昭社長は机上の計算だけでトヨタを経営してきた。現状を延長線を描いておけば伸ばすことができる。これがトヨタ式の経営だと考えていた。だから、発想が係長クラスの発想だ。世界一の販売台数にするには生産設備がこれくらい必要だ。ならばアメリカに工場建ててこの生産不足分を賄えば良い。これでことしは悲願の世界一販売の座を手に入れられる。
 とまぁ、こんな感じで本来経営者が配慮しなければ成らない危機管理はまるで飛んでしまっている。これもトヨタは豊田家のもので、自分はオペレーションを預かった番頭って意識だったのだろうか、まったく世界に羽ばたく企業の経営者としてはおそまつである。
 このあたりはソニーにもあてはまり、井深氏が「為替変動で会社の利益が左右されるのはかなわない」と銀行を持って金融に進出するのが悲願だったのだが(現実にソニーは金融に進出を遂げた)、その魂を忘れて「ユーロが高いからヨーロッパ販売を強化しよう」とまったく危機管理の無い戦略を実行したのだ。
 トヨタの場合は「作れば売れる。だから売上げ分の台数を生産する」って気持ちしか無かったのだろう。
 その結果、生産調整のために契約社員や派遣社員を切り、加えて下請け会社への発注の縮小で下請け会社の経営計画までオジャンにしてしまった。これを経営責任と呼ばずに何と呼んだら良いのだろうか。そのとばっちりを受けた関係各本面にはおわびの一言も無い。もっとも、今回就任する豊田章男社長はキヤノンの御手洗不二夫氏よりも面の皮が薄そうなので、なんらかのアナウンスメントがあると思う。
 でも、こんな会社のビッツとかエスティマとか買います?
 買うなら中古にしましょう。どうせ新車は管理職が買うので品薄になるでしょうから。

一将成って万骨枯る社会は駄目
 数年前に藤原正彦氏の「国家の品格」がブームになり、「品格本」が多数出版された。新渡戸稲造氏の「武士道」も読まれている。そして最近の「蟹工船」ブームだ。
 庶民はやがて訪れるクライシスを肌で感じ予見していたのだろうか。サブプライム問題でアメリカ経済が立ち行かない状況は一昨年の秋から情報が流れていた。その実経済への象徴的な事件がリーマンブラザーズ・ショックだろう。実は予見されていたのだが、誰が引き金を引くかって状況にここ数年はあったのだ。
 その中で皮肉にも危機管理を忘れイケイケ・ドンドンと突っ走った会社が手痛い営業損失を被った。しかも、下請け企業を含めると単に1企業の問題では無く、日本経済すら道連れにする経営判断の誤りであった。
 事後評価との意見もあろうが、サブプライムローン問題は一昨年からの課題で、少なくとも年次計画レベルでは予見可能な範囲だろう。しかも、家を抵当に入れて金を借り自家用車を買っているアメリカの一般家庭の借金構造はさらにその数年前から情報収集可能であった。
 しいて言えば「聞こえなぁい、見えなぁい」の情報過疎が変化する市場を読めなかったってことだろう。これは、とりも直さず経営責任である。しかも市場放任主義とは違い、この経営責任は近くは従業員、遠くは日本社会に対する責任である。
 であれば、せめて真摯に従業員や日本国民(市民)に接するのが筋だろう。実際は未だに株主しか目の向かない発言である。これに日本国民は怒っている。不買運動に発展するまえに日本での企業の使命に立ち返り経営方針なり組織体制なりを改めなくてはポスト・グローバルスタンダードトレンドの時代に生き残れないだろう。
 #週刊誌は経団連会長の御手洗不二夫氏のバッシングに熱心だが、実際、御手洗氏の任期中途降板は有ると思われる。

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2009.01.29 Mint