選挙日程は最大何時まで引き延ばし
通常なら任期満了前の30日以内に選挙を行う必要があるので8月11日から9月9日までの間に総選挙(公職選挙法31条1項)。が、今回は国会が延長されていて7月28日までが国会の会期。その場合は、国会終了から24日〜30日以内に総選挙をする(同条2項)。この例外規定を用いた場合投票日は8月23日になる。
それでは合わせ技で会期末の7月28日に麻生太郎総理が衆議院の解散総選挙の手続きを行えば、先の「衆議院解散から40日以内」の原理で最大9月6日までに投票を行えば良い。この場合、後述の12日以上前に公示の規定があるので、8月9日〜9月6日までの間に投票を行うことになる。
これに加えて奇策と言うか憲法解釈に賛否が分かれる方法が、臨時国会の召集。通常国会は会期を一度しか延長出来ないので7月28日に国会は閉幕する。その後、臨時国会を召集すると任期満了の9月10日までは国会が存在する(変な表現だが)。で、任期満了とともに自動解散となり選挙の投票日は10月4日になる。
しかし、この方法では衆議院が消滅状態になり、衆議院解散時の参議院の緊急集会の手続きも出来ず完全に政治の空白期間が発生する。つまり、自民党による政治放棄が衆議院議員が登庁し首班指名が行われるまで続く。
さすがにこの方法による衆議院解散総選挙は技術論として存在するが現実的では無いだろう。
すると、最大遅れて8月23日だが、選挙期間が盆休みと重複しまともな選挙運動が出来ないだろう。すると前に向かって投票日を探る必要があるが、8月16日も盆休みの真っ最中で駄目。8月9日は長崎原爆の日で難しい。ただし、投票日は日曜日である規定は無いので、一日早めて8月8日の土曜日に行うことが出来る。あとは8月2日だ。
選択肢として現在では8月2日か8日が上げられる。衆議院解散を行った場合40日以内に選挙投票を行うことになっている。これを先の規定から逆算すると麻生太郎総理が衆議院の解散の手続き(詳細後述)を終えるのは既にタイムリミットが過ぎていることになる。また、公職選挙法では衆議院議員総選挙の期日は少なくとも12日前に公示(公職選挙法31条4項)なので、7月20日には決着が付いていないと8月2日の選挙投票は出来ない。
選挙投票予定カレンダーとして取りまとめておく。
日 付 | 要 件 |
8/2 | 7月20日までに解散+公示 |
8/8,9,16 | 7月27日までに解散+公示 |
8/23 | 7月28日会期満了 |
8/30、9/6 | 7月28日会期満了時に解散 |
ちなみに、選挙日和の大安吉日は8/2と8/30になる。変則の8/8も大安である。
衆議院解散は天皇の国事行為
衆議院解散に至る諸手続だが、麻生太郎総理が言うように「総理の専権事項」ではあるが、手続きは必ずしも独断では進められない。いわゆる7条解散の場合、日本国憲法7条で「内閣の助言と承認」により天皇が国事行為として衆議院を解散できるとなっている。
必ずしも内閣総理大臣のみでは無い。そのため、内閣は閣僚の総意を持って衆議院解散の閣議書を起こす。これを奏上し、詔書の原案に天皇の署名、御璽の押捺を受ける。この詔書に内閣総理大臣が副署して衆議院議長に送られ衆議院の解散が成立する。
問題は「内閣の総意である閣議書」 である。大臣が一人でも署名しなければこれは天皇には送られない。先の郵政解散の時には最後は農水大臣を更迭し、小泉純一郎総理が兼務して閣議書を「内閣の総意」として作成した。
今回、与謝野大臣が東京都議会選挙が終わった後に「一人でジックリと考えたい」と述べたのは例え麻生太郎総理が衆議院の解散の閣議書に署名を求めても署名しないとのブラフ(脅し)だろう。署名しなければ更迭するしか無い。
先の三木武夫総理による任期満了解散が起きたのは三木武夫総理が衆議院の解散を内閣にはかったがほとんどの(一節には15名)国務大臣の反対に合い閣議書を起こすことが出来なかったものだ。
今回の麻生太郎総理の衆議院解散は可能なのか。非常に微妙な所だ。もし内閣不一致で解散出来なければ野党による内閣不信任案が国会に提出されるだろう。この時に先の「加藤の乱」のような事が起こるかどうか。これもまた微妙な所だ。
内閣不信任案が可決されれば69条解散で衆議院が解散になるのか、それとも内閣を解散するのか。どちらにしても過去に例を見ない政局が数週間後に迫っている。