マニフェスト選挙に右往左往する各政党

実現の可否が問われる
 マニフェストは政権を担わなければ実現できない公約なので、野党のマニフェストはきれい事ばかりになる。政権交代の可能性が高い今回の衆議院選挙では少なくとも民主党はマニフェストで公約した事を実現しなければ次回の選挙では野党に後戻りすることになる。何故なら、マニフェストは選挙公約がどれほど実現したか国民が採点できるように、次回の選挙に向けた採点票なのだから。
 つまりマニフェストに書かれた事柄は与党になったら実現する政策ってことで、選挙前の現時点では架空のものだ。
 それを公表して政権与党を目指すのだが、今までの野党のマニフェストには無い「実現性」がより求められるのが今回の民主党だ。ま、他の野党はどことくっついて実現するかの選択を迫られるのだが。所詮、マニフェストは政権を担った政党を採点するために選挙の前に国民に供託するって考え方に立たなければ、旧来の野党の「言いっぱなし」路線に見えてしまう。
 その意味で今回の民主党のマニフェストは正直言って「風呂敷の広げすぎ」の感がいなめない。何故なら、旧来の野党的な国民受けすればそれで良しの「言いっぱなし」に見えてしまうのだ。また、旧来のバラマキに近く、知恵を絞って税金を効率よく使うって面が置き去りにされている。
 財源問題を突いているのでは無い。政治が国民に約束する国家観や理念が前面に出てこない。細かな政策の羅列だけでは国民は民主党はどんな日本を作りたいのか解らない。健康を取り戻すのに体質改善をするマニフェストでな無く、傷口に絆創膏を貼り続ける対処療法の民主党のマニフェストはどこな物足りないのだ。

マニフェスト批判は「ならやってみろ」で良い
 自民党は不思議な戦略を持っているようで、民主党のマニフェストを一生懸命批判する。「財源の裏付けが無い」がその最たるものだろう。
 マニフェストの本来の目的は政策論争では無い。公約だ。他の党が公約として掲げたものを批判するエネルギーがあるのなら、自分たちのマニフェストの説明にそのエネルギーを注ぐべきだ。マニフェストを評論するのは国民に任せておけば良い。少なくとも目前に迫った衆議院選挙で勝利する戦略として他党のマニフェスト叩きは選択肢としては最悪の戦略だろう。自民党のスローガンは「責任力」だが、民主党に政権を取らせないのが自民党の「責任」だと思い上がっているとしたら、これはまったく国民感情とかけ離れた党利党略の選挙戦を戦う訳で、政権を維持することは困難だろう。
 せめて、相手のマニフェストに対しては自分のマニフェストのほうが優れている点を説明すべきだろう。「財源が無いから出来ない政策だ」ってのは国民に任せて貰いたい。
 そもそも「財源に裏打ちされてます。責任力があります」ってのは、とりも直さず「官僚のお墨付きをもらっています」と言外に含まれている訳で、相手の「官僚任せの政治」との批判を自ら認めているのだから戦略としてはまったく能が無い。そのあたりは国民に見透かされている。
 「民主党は大風呂敷を広げていますが、この国を財政破綻させるような政策はこの国のためにならない!」くらいの大上段に振りかぶるのがかつての自民党だったのだが、国民への説得よりも自分の回りしか見えない状況をますます露呈している。

マスコミの不勉強もいまさらだが
 マニフェストが出そろうと比較表のフリップを作って報道する。ここが違うんですよってのは高校生でも出来る仕事。何故、自民党の前回のマニフェストを引っ張り出してこないのか。何故、民主党の前回のマニフェストを引っ張り出してこないのか。何処が実現して何処が実現しなかったのか、実現に向けてどんな努力が払われたのか。それがマスコミの仕事であり放送する価値だろう。判断材料を国民に報道するのが指名なのだから、国民が引っ張り出せない先の衆議院選挙のマニフェストの実現評価を行ってこそジャーナリズムでありマスコミの本来の機能なのだが。
 結局前回の衆議院選挙を郵政と刺客問題に矮小化し、日本のこれからの4年間を意識の外に飛ばしてしまったマスコミは少なくとも4年前の選挙に立ち戻り、報道の誤りはなかったか自己評価すべきだろう。
 世の中にはコントロールされた機能をマネージメントが正しく行われてると評する。このマネージメントとは経営や営業や運営の全てを含んでPDCA(プラン、ドウ、チェック、アクション)つまり、企画し実行し見直し訂正するのサイクルが正しく回っていることを現してる。今のマスコミは毎度おなじみの選挙運動の繰り返しで放送時間や選挙速報のプランとドウだけで一過性に終わってしまう。
 多少のチェックがあるとしたら日本テレビが24時間テレビでイモトのゴールを早めることくらいか。
 森田健作知事では無いが「こまけぇ事は、いいんだよ!」と言いたくなる。

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2009.08.12 Mint