「天下り」の斡旋(あっせん)の全面禁止
民主党は選挙対策なのかムードは「天下りの根絶」なのだがマニフェストでは上記の「斡旋(あっせん)の全面禁止」だ。何処までが斡旋で何処からは斡旋では無いのか判断する基準は示されていない。つまり、本人が斡旋されたのでは無い自分で探したと言い切ればこのマニフェスト通りに禁止される行為では無くなる。つまり、官僚に配慮した玉虫色の実効の無い表現に書き換えられている。
一方の官僚はムードに流されて駆け込み「天下り」連発だ。国土交通省の元次官峰久幸義氏が7月28日に独立行政法人住宅金融支援機構の副理事長に就任。文部省の前事務次官である銭谷真美氏が8月1日に独立行政法人国立文化財機構の東京国立博物館の館長に就任。公立学校共済組合は元文科審議官で独立行政法人日本学生支援機構理事の矢野重典氏が理事長に就任している。しかも矢野氏は3度目の「天下り」いわゆる「渡り」である。
これだけ駆け込み天下りの実態を見せつけられると国民は自民党の管理不行き届きを責めなくてはいけないだろう。結局、公務員制度改革は絵に描いた餅で渡辺喜美氏はドンキホーテを演じさせられたのだろう。いや、そもそも麻生太郎総理大臣が自民党のドンキホーテだからサンチョパンサなのかもしれない。とすると、鳩山邦夫氏もサンチョパンサなのだ。ま、どちらにしても小泉劇場ならぬ麻生新喜劇なのは間違いなかったのだろうが。
そもそも「天下り斡旋の全面禁止」では「あうんの呼吸」の天下りには踏み込めないわけで、ましてや多額の退職金を受け取りながら「渡り」を繰り返す現在の公務員就業形態は変らないことになる。
渡辺喜美氏を再度行革担当大臣に
小泉純一郎元総理の改革方針は間違いは無かった。ただ、国民も国会議員も不勉強だったので改革路線(戦略+戦術)には稚拙な所があった。そもそも、改革を常に意識しておかなければ政治や制度は腐敗する。PDCA(プラン、ドゥ、チェック、アクション)のサイクルを回すことがマネージメントであり改革であるとは前に書いた記憶がある。
もう一度小泉純一郎氏の語録を紐解いてみると「改革には痛みが伴う」って部分がある。逆に言えば残念な事だが誰かが傷付かなければ改革は進められないってことだ。その意味でセーフティネットが必要なのだが、このあたりの手当が十分に出来ていなかった小泉改革路線が不十分で国民の批判に晒されているのだろう。
公務員制度改革も痛みを伴う。その痛みをセーフティネットで補完しながら改革を進める必要がある。痛みを避けて改革を止めてしまってはリーダーシップが無い。今の民主党に不安があるとすれば鳩山由紀夫氏では温厚すぎて大ナタは振り下ろせないのではって不安だ。逆に小沢一郎氏ならバッサバッサと切っていくイメージがある。
政権を担うってことは日本国のトップ経営者になることだ。決断を迫られる事案は山ほど有る。「改革に伴う痛み」に配慮するあまり決断が鈍るのなら、それは適材適所で乗り切らなければならない。選挙後に公務員改革部署を設置するのなら渡辺喜美氏のリベンジを利用すべきだろう。渡辺喜美氏には道半ばで官僚に潰された公務員改革の怨念のエナジーが残っている。このエナジーを使わない手は無い。
どうも民主党のマニフェストを読むと「やったら政治家の手柄になるが、実効は微々たるもの」が散見される。FTA(自由貿易協定)なんかは自民党も一生懸命FTAに近いEPA(経済連携協定)をやってきた。しかし、その実効ははなはだ微々たるもので両国に目に見えた経済の変化は生まれていない。
今回の「天下りの斡旋(あっせん)全面禁止」も暖簾に腕押しの感がいなめない。