公務員制度改革には文化大革命が必要

官僚の文化を変えなくてはならない
 公務員制度改革は制度の最後にある天下り方式の改革ばかり目が行くが、実は日本の公務員の年功序列の徒弟制度のような文化風土がその根源にある。厚生労働省はサービス残業の撤廃等労働環境の改善に熱心だが、お膝元の若手の官僚は労働基準法を逸脱した極悪な職場環境で長時間労働を強いられている。
 小池百合子氏が環境大臣だった頃に省エネのために残業を抑制し午後6時に職場の照明を消すことにしたが、各自スタンドを持ち込んで照明に使い仕事を続けていた。
 実は公務員文化は退職後の天下りによるバラ色の人生をゴールにちらつかせ、徒弟制度的な終身雇用を前提とした仕組みに(文化に)なっている。現在バラ色の人生の人間は何時でも身をひくだろうが、やっとバラ色の人生の入り口が見えた層にとっては「詐欺だぁ、金返せぇ」と叫びたくなるだろう。
 公務員の雇用者は急遽的には国民なのだが、その公務員の就業の仕組みは国民の代表である政治家が許認可しなくてはならない。現実には自由放任主義で現在の仕組みが出来上がってしまった。グレシャムの法則「公務員は放っておくと益々増えていく」が全然考慮されていない。
 つまり、戦後の自民党政治の残した負の遺産なのだから、これを一朝に直すことは難しいだろう。民主党が政権を取ったら何でも変えられる訳では無い。現在の天下りを禁止するには、その根源である公務員の労働体系から見直さなければならないし、実施は段階的に進めていかなければならない。改革とは何でも直ぐに変ることでは無く道筋を立てて実施していくシナリオを作ることから始まる長期戦略的な改革もあるのだ。

「天下り」の斡旋(あっせん)の全面禁止
 民主党は選挙対策なのかムードは「天下りの根絶」なのだがマニフェストでは上記の「斡旋(あっせん)の全面禁止」だ。何処までが斡旋で何処からは斡旋では無いのか判断する基準は示されていない。つまり、本人が斡旋されたのでは無い自分で探したと言い切ればこのマニフェスト通りに禁止される行為では無くなる。つまり、官僚に配慮した玉虫色の実効の無い表現に書き換えられている。
 一方の官僚はムードに流されて駆け込み「天下り」連発だ。国土交通省の元次官峰久幸義氏が7月28日に独立行政法人住宅金融支援機構の副理事長に就任。文部省の前事務次官である銭谷真美氏が8月1日に独立行政法人国立文化財機構の東京国立博物館の館長に就任。公立学校共済組合は元文科審議官で独立行政法人日本学生支援機構理事の矢野重典氏が理事長に就任している。しかも矢野氏は3度目の「天下り」いわゆる「渡り」である。
 これだけ駆け込み天下りの実態を見せつけられると国民は自民党の管理不行き届きを責めなくてはいけないだろう。結局、公務員制度改革は絵に描いた餅で渡辺喜美氏はドンキホーテを演じさせられたのだろう。いや、そもそも麻生太郎総理大臣が自民党のドンキホーテだからサンチョパンサなのかもしれない。とすると、鳩山邦夫氏もサンチョパンサなのだ。ま、どちらにしても小泉劇場ならぬ麻生新喜劇なのは間違いなかったのだろうが。
 そもそも「天下り斡旋の全面禁止」では「あうんの呼吸」の天下りには踏み込めないわけで、ましてや多額の退職金を受け取りながら「渡り」を繰り返す現在の公務員就業形態は変らないことになる。

渡辺喜美氏を再度行革担当大臣に
 小泉純一郎元総理の改革方針は間違いは無かった。ただ、国民も国会議員も不勉強だったので改革路線(戦略+戦術)には稚拙な所があった。そもそも、改革を常に意識しておかなければ政治や制度は腐敗する。PDCA(プラン、ドゥ、チェック、アクション)のサイクルを回すことがマネージメントであり改革であるとは前に書いた記憶がある。
 もう一度小泉純一郎氏の語録を紐解いてみると「改革には痛みが伴う」って部分がある。逆に言えば残念な事だが誰かが傷付かなければ改革は進められないってことだ。その意味でセーフティネットが必要なのだが、このあたりの手当が十分に出来ていなかった小泉改革路線が不十分で国民の批判に晒されているのだろう。
 公務員制度改革も痛みを伴う。その痛みをセーフティネットで補完しながら改革を進める必要がある。痛みを避けて改革を止めてしまってはリーダーシップが無い。今の民主党に不安があるとすれば鳩山由紀夫氏では温厚すぎて大ナタは振り下ろせないのではって不安だ。逆に小沢一郎氏ならバッサバッサと切っていくイメージがある。
 政権を担うってことは日本国のトップ経営者になることだ。決断を迫られる事案は山ほど有る。「改革に伴う痛み」に配慮するあまり決断が鈍るのなら、それは適材適所で乗り切らなければならない。選挙後に公務員改革部署を設置するのなら渡辺喜美氏のリベンジを利用すべきだろう。渡辺喜美氏には道半ばで官僚に潰された公務員改革の怨念のエナジーが残っている。このエナジーを使わない手は無い。
 どうも民主党のマニフェストを読むと「やったら政治家の手柄になるが、実効は微々たるもの」が散見される。FTA(自由貿易協定)なんかは自民党も一生懸命FTAに近いEPA(経済連携協定)をやってきた。しかし、その実効ははなはだ微々たるもので両国に目に見えた経済の変化は生まれていない。
 今回の「天下りの斡旋(あっせん)全面禁止」も暖簾に腕押しの感がいなめない。

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2009.08.20 Mint