最初の壁である組閣を乗り切ったか?

民主党のアキレス腱は3つ
 党内が一枚岩では無いことは民主党に限ったことでは無く自民党にも同じ事が言える。しかし、国民が自民党に愛想を尽かしたのか民主党に期待しているのか選挙結果をどう読むかで既に議論百出状態なので民主党はスタートラインで仕切り直しを行って、これから国民の支持をひとつひとつ積み上げていく努力が必要だろう。
 自民党内の政策の違いのベクトルが90度くらいだとしたら、新政権である民主党は60度くらいにベクトルを併せて、とにかく前に進む体制を構築することが急がれる。
 まず一つ目は防衛問題。
その中でベクトルが120度くらい違うのが安保と国防に係わる防衛大臣の担う政策だろう。これに連立を組んだ社民党が加わると、下手をするとベクトルは180度くらい差が出て、全体として何処へも向かえない膠着状態になる恐れもある。
 一時、亀井静香氏を防衛大臣にって案もあったが、他党からの招聘では議論を避けてるようで、やはり民主党から選ばざるを得ない事態になった。しかし、自衛隊のインド洋派遣の期日は1月に迫っており、急に戻すのでは無いにしても来年の1月までには何らかの結論を出さなければならない。しかも、アメリカから既に圧力が掛けられているように、非常に大きな外交のテーマでもある。
 二つ目は教育問題。
 さっそく、輿石東参院議員会長が教員免許制度の廃止をぶちあげているが、ま、正直言って民主党に日教組支配が及ぶのなら、国民の支持は急速に低下するだろう。選挙に勝って暴言はいてるとして思えない輿石東参院議員会長の言動に国民は嫌悪感を持っている。そもそも、教育の現場にイデオロギーを持ち込み教育よりも自らの権力闘争の場としてしまった日教組は日教祖と呼ばれるほど宗教化している。
 教職を免許制度に立脚してる社会制度と考えた場合、免許の不的確事項に抵触しないかチェックするのは当然のことで、教職だけが終身免許で優遇される根拠は無い。医師免許が終身免許ではあるが、医師は日々の治療を通して社会的責任を負わされているもので、教員、特に公立の学校の教員は社会的責任を負っている自覚に乏しく、このことが不的確事項なのだが甘やかされている権利闘争を繰り広げる。
正直言って教員免許更新制度は国民の支持を得ている。それを廃止などと叫ぶ議員が居る民主党は、この件でも120度くらいベクトルが違っているのだろう。
 不適格な教員をどのように矯正や排除するのかの手段を明示しないで、免許更新制度廃止だけを先行させるのは政策では無い。まして、免許取得時に2年間の大学院を義務づけても意味は無い。日々の教員活動の中で精進できる仕組みを考えなければ、既存の教員の既得権益だけ主張してるのでは国民はそっぽを向く。

三つ目は外交そのものである
 この場合、民主党内のベクトルは逆に30度くらいに収れんしてるかもしれない。親アメリカ度合いが自民党と比べてかなり低い。残念ながら日本独自の外交を考えるよりも他力本願と言うか外国頼みの外交路線が民主党には感じられる。
 アメリカに付くのかアジア重視なのかって二者選択路線だ。その前に日本をどのようにするのか、そのために諸外国とはどのように付き合って(外交して)行くのかの哲学を感じない。アジア重視は八紘一宇じゃあるまいし昭和初期の幻想を再度持ち出してるとしか思えない。大東亜共栄圏を作るには強いリーダー国が必要で、過去に軍事力って強いリーダシップを発揮した。しかし、現在は日本が軍事力を背景にリーダーシップを発揮出来る時代では無い。逆に、アジアの他国のほうがその懸念がある。
 まさに外交力を付けてアジア重視を行う必要があるが、現在はどっちの国とくっつくかの稚拙な外交戦略しか無い。このあたりは旧社会党の親中国、親北朝鮮も抱えている民主党にとって本来ベクトルが30度どころか180度違っても良いのだが、無知と不勉強が視野を狭め突っ走る危険性を持ったアキレス腱になる。つまり、国民とベクトルが180度違う局面も出てくるのだ。その意味でのアキレス腱だ。

15日発表の国務大臣を評価しておく
 以下の印は◎..期待、○..順当、△..努力を要する、●..不的確である。
No 役職 就任者 評価
1 内閣総理大臣鳩山 由紀夫
内閣府大島 敦 
内閣府古川 元久 
内閣府大塚 耕平 
2 副総理・国家戦略相菅 直人
3 財務大臣藤井 裕久
副大臣野田 佳彦 
副大臣峰崎 直樹 
4 外務大臣岡田 克也
副大臣武正 公一 
副大臣福山 哲郎 
5 総務大臣原口 一博
副大臣渡辺 周 
副大臣内藤 正光 
6 国土交通大臣・防災・沖縄・北方前原 誠司
副大臣辻元 清美(社民)
副大臣馬淵 澄夫
7 文部科学大臣川端 達夫
副大臣中川 正春 
副大臣鈴木 寛 
8 農水大臣赤松 広隆
副大臣山田 正彦 
副大臣郡司 彰 
9 防衛大臣北沢 俊美
副大臣榛葉 賀津也
10 法務大臣千葉 景子
副大臣加藤 公一 
11 経済産業大臣直嶋 正行
副大臣松下 忠洋(国民新) 
副大臣増子 輝彦 
12 環境大臣小沢 鋭仁
副大臣田島 一成 
13 厚生労働大臣長妻 昭政
副大臣細川 律夫 
副大臣長浜 博行 
14 郵政・金融担当相亀井 静香
15 消費者・少子化担当相福島 瑞穂
16 行政刷新会議担当相仙谷 由人
17 国家公安委員長 拉致問題担当中井 洽
官房長官平野 博文
官房副長官松野 頼久
この項目、後日訂正の可能性大
 基本的に、無難な人事ではあるが、それぞれの部署の職務分掌が無い部分もあり、越権行為とか不作為が発生する余地がある。また、官庁組織と同期していないので調整会議的な機能がより重要になる。特に戦略会議は菅直人氏のやりたい放題に陥る可能性も出てくる。
 気になるのは民間登用の道が塞がれていること。この部分は党内調整の結果だろうが、それでは鳩山由紀夫総理主導で民間ベースの「シャドウ・キャビネット」を作ったら良い。政権交代したのだから政治家中心のシャドウキャビネットは民間の若手で政策ブレインとして編成すべきだろう。かのイギリスの鉄の女サッチャーが行った政治手法だ。
 昔から「船頭多くて船山に登る」の民主党の体質が政権の引力を離脱して旧来のままなら、やがて国民は民主党から離れてしまうだろう。各大臣が本当に国民目線なのか、それとも自分の権益しか見ていないのかは、数ヶ月もすれば解るだろう。上記の表の青いマークは特に要注意な大臣としておく。

参考資料:民主党に暗に存在するグループの概要。
小沢グループ 一新会 小沢一郎氏ら120名
鳩山グループ 政権交代を実現する会 鳩山由紀夫氏ら45名
菅グループ 国のかたち研究会 菅直人氏ら40名
前原グループ 凌雲会 前原誠司氏ら35名
野田グループ 花斉会 野田佳彦氏ら30名
旧民社党グループ   川端達夫氏ら30名
旧社会党グループ   横路孝弘氏ら25名
グループ無所属   岡田克也氏

参考資料:歴代内閣の短命ワースト9
内閣名 在任期間在任日数
羽田孜 1994年4月28日〜1994年6月30日 64日
石橋湛山 1956年12月23日〜1957年2月25日 65日
宇野宗佑 1989年6月3日〜1989年8月10日 69日
芦田均 1948年3月10日〜1948年10月15日 220日
細川護煕 1993年8月9日〜1994年4月28日 263日
片山哲 1947年5月24日〜1948年3月10日 292日
麻生太郎 2008年9月24日〜2009年9月16日 358日
福田康夫 2007年9月26日〜2008年9月24日 365日
安倍晋三 2006年9月26日〜2007年9月26日 366日

button  正論で破れた岡田、迎合して復活した菅直人(2002年)
button  民主党のゴタゴタは説得力の問題(2002年)

2009.09.10 Mint