亀井静香特命大臣を斬って民主党の政治を

礼節を知らない少数党の傍若無人
 鳩山由紀夫内閣発足から100日は政治的話は避けてスマートグリッド電力網なんかの話を書こうと考えていたのだが、どうも民主党内にテロリストを抱き込んだために屋台骨にまで被害が発生しそうな雲行きだ。
 民主党のお家芸である人事が原因のゴタゴタが避けられたのは政権引力の前ではお家芸すら引っ込むって、政権引力の強さの確認だった。
 この組閣人事に連立政権政党の閣内協力があった。金融郵政改革担当の亀井静香特命担当大臣(国民新党)と消費者及び食品安全、少子化対策、男女共同参画担当の福島瑞穂特命担当大臣(社民党)だ。閣外協力に留めるべき所を選挙協力の実績や参議院での過半数確保のために結局、閣内協力ってことで内閣に迎えてしまった。
 衆議院議席数と参議院議席数を見ると民主党は(308+109=417)議席に対して国民新党(3+5=8)議席、社民党(7+5=12)議席である。いくら参議院での過半数獲得のための譲歩とは言え、417議席の政党が両院それぞれ単独ではドシングル議席の国民新党や民主党に振り回されるのは割に合わない。
 また、常識的に5議席や12議席の少数政党は自らをワキマエルの行動をとると読んだのだろうが亀井静香特命大臣はそのような常識が通用しない。本人は郵政民営化選挙直前に「絶対解散は無い」と言い切って衆議院が解散になって狼狽した経験から政治の世界で波紋を投げかける術を知ったが、少数政党では、それを披露する機会に恵まれなかった。ここにきて少数党ではあるが与党側に回った高揚感から「小泉劇場もどき」に走っている。
 政治の基本に国民を置いているのが民主主義の原則だが、当選したら俺のものと暴れ回るのでは、政治家として二流だろう。大学院生の集まりと揶揄される民主党に高校生がまじる。それも体育会系の応援団が紛れた違和感を感じる。

政治は方針を示す、政策は実現の手段
 どうも亀井静香特命大臣の発言を聞いていると法案名が先に来て何を目的にしているのか見えてこない。中小企業への景気対策が何故借金引き延ばしのモラトリアム法になるのか解らない。先の小泉純一郎政権の時に改革派から「手術が必要な患者にカンフル剤だけうっている」と揶揄された方式だ。旧日本軍の「戦場への兵力逐次投入」が結局戦局の好転を招かなかったのは、何故それをするのかの方針が無く、随時対応を重ねた結果だった。まさに、モラトリアム法は世界の中で日本の経済をどうしたいのかの基本方針が無く、お騒がせの「大臣ご乱心」としか見えてこない。
 中小企業が大半を占める日本の産業構造の中で、大企業による下請けイジメが横行してる現状を鑑みれば、中小企業対策は延命策では無く、マーケットの構造を変える政治的手腕が望まれる。御手洗経団連会長に向かって「企業の倫理感の無さが親族殺人を生む」なんて言っている場合では無い。中小企業の努力の上に胡座をかいている大企業が今度は温暖化原因ガスの25%削減で、新たな下請けへの締め付けを行わない方策を考えるのが政治家の中小企業対策の方針だろう。
 センセーショナルに扱われて、何処に行っても「亀井さん、亀井さん」の雰囲気を楽しむのは良いが、それは政治家である亀井静香特命大臣を貶めているのだと本人が.....ま、気がつくタマじゃないか。
 せめて内閣の中で対亀井静香への鉄砲玉を担う覚悟のある人間は居ないのか。政治の世界を回していく真の「友愛」とは、友の瑕疵を諫める部分も含まれるのではないのか>鳩山由紀夫総理大臣

初期値(カラッポ)だから政策が定まらない
 鳩山由紀夫総理大臣の外遊が盛んだが、これは当面外遊しか手の打ちようが無い状況にあるからだ。日本丸の舵取りをするために引き継がなければならない情報は膨大にある。しかも、官僚しか知り得ない情報が存在するのが自民党政権の残した大きな禍根だ。特に外交に関しては沖縄返還時の密約に代表されるように当時の官僚から引き継がれた政治家の知らない情報が多々存在するだろう。このような本来知らなければならない情報が入手できず、外交約束が反故にされたと表面化しないためには、とりあえず「日本には新政権が誕生し、今までの表面に出ない密約事については反故になったように見えるかもしれないが、私を(鳩山由紀夫総理を)信用してくれ」ってデモンストレーションが必要になる。そのために、まず対外的な信頼構築に走り回るのはやむを得ないだろう。
 徐々に政策を詰めていけば良い。その猶予期間は来年2010年の参議院選挙までは許される。ここまでに臨時国会や予算編成を伴う通常国会があるのだから、これを利用して徐々に政権政党の形を作っていけば良い。但し、大切なことは与党初心者なのだから真摯に事にあたることだ。スタンドプレーはいけない。また核心に迫りすぎて訂正を余儀なくされるのも避けるべきだ。「ぶれてる」ってのは麻生太郎元総理の専売特許だが、よくよく研究してみると麻生太郎元総理は「何故、それをするのか」の方針の説明が欠如していた。だから、目的に向かって多様な選択肢があるって事実を踏まえず、選択肢の一つを公言する。すると矛盾が生じて更に別の選択肢を公言する繰り返しだ。これでは国民には「ぶれてる」と写る訳だ。
 この轍を踏まないためにも、まず、「何故、それをするのか」の説明をしっかり行う姿勢を大切にすべきだろう。
 その意味では亀井静香特命大臣は泳がせておいても良いかも知れない。過激なパフォーマンスも含めて泳がせておいて、最後に(参議院選挙直前に)「民主党は亀井静香とは違うんです」と福田康夫元総理ばりに「あなたとは違うんです!」で斬って捨て、国民へのアピールに利用できる。
 閣内協力に名をかりて与党参画を果たした両特命大臣は衆議院選挙で圧勝し敵を失った民主党にとって便利な仮想敵国として使い捨てされない大人の配慮が求められる。

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2009.10.09 Mint