鳩山由紀夫総理の国際公約は「温室効果ガス25%減」

発端は9/7の朝日環境フォーラム
 国際公約になったと言われるのはその後22日午前(現地時間)国連気候変動サミットで演説してフォローした時である。どちらの発言でもCO2は出てこない。温室効果ガス(GHG)と表現されている。
 では温室効果ガスとは何をさすのだろうか。京都議定書で定義した温室効果ガスの中で我が国で排出量が把握(環境省所轄)されているものは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類がある。
 IPCCの勧告では人為的に空気中に放出される温室効果ガスの中でCO2が一番影響が大きいと言われているが、その真偽は定かではない。気温が上がるとCO2が海水中から溶け出すので因果関係は逆だとの説もある。
 ま、その他のものでは人為的よりも自然発生的な「メタン」が量が多い。
 「亜酸化窒素」は俗に笑気ガスといわれて外科手術の麻酔効果ガスとして使用されている。
 「ハイドロフルオロカーボン」はいわゆる代替フロンである。フロン自体はオゾン層の破壊を行うとのことで使用が規制されているがそれに変わるハイドロフルオロカーボンはオゾン層こそ破壊しないが、温室効果ガスである。これも排出抑制策はとられているが中古冷蔵庫、冷凍庫、カーエアコン等からの回収は遅々として進んでいない。
 「パーフルオロカーボン」は不活性ガスとして半導体の洗浄や代替ハロンとして密閉された部屋の消化剤として利用されている。現在は排出規制対象になっている。
 「六フッ化硫黄」は高い絶縁性を有するのでガス変圧器、ガス遮断機等に利用されている。これは100%人間が製造して空気中に拡散させているので同じく排出規制対象である。

地球温暖化係数って知ってますか
 真偽の程は別として、CO2に比して各温室効果ガスの地球温暖化への影響度を100年間大気中に留まった場合を想定してCO2の何倍と表したのが地球温暖化係数である。個々の温室効果ガスがどの程度地球温暖化能力(機能)を持っているかの指標になる。
二酸化炭素1
メタン21
亜酸化窒素310
パーフルオロメタン6500
フルオロメタン150
六フッ化硫黄23,900
一部のみ抜粋したが、CO2の量に比してその使用量は少ないが係数値は高い。特に人為的発生では無いがメタンは量的にもCO2に匹敵する温室効果ガスだ。
 先の話に戻ると鳩山由紀夫総理は「温室効果ガス」と言っている。決してCO2ともCO2換算でとも言っていない。
 これは政治的手法なのだろうか。
 例えば日本の代替フロンはフロン回収破壊法で回収が義務付けられているが環境庁の調査では実際には当初想定した倍以上の量が空気中に拡散していると見積もられる。この代替フロンの回収の仕組みを構築するだけでかなりの「温室効果ガス削減」になる。

CO2排出権を日本は買わされるのか
 世界金融の亡霊はリーマンショックを経ても消えていないようだ。先に「不都合な真実」について述べたが世界の原発燃料を供給しているゴア氏の所属企業は温室効果ガス削減をCO2削減に読み替え、CO2削減した設備を売った企業にCO2排出権を与え、これをCO2排出が止まらない企業が買えば、その企業はCO2排出に関して辻褄を合わせられ社会的道義的責任を果たせるなんて仕組みを構築している。
 この話を聞いて高校時代に世界史で(あ、世界史は選択科目なので知らない世代も居るのか、いわゆる「ゆとり教育バカ世代」が)宗教革命に至った「免罪符」を思い出す。金を払って札を買えば許されるなんてのは中世からのまやかしもので、その結果宗教革命に発展したのは歴史の事実。
 にも関わらず21世紀の免罪符よろしくCO2排出権なんてのを持ち出す西洋人は単細胞で歴史に学ばない民族なのだろうかと思う。
 グローバリゼーションって言葉が一時日本を席巻したが、これとて日本の文化を顧みなければ別だが、基本的に西欧のバカ文化でしか無いものを何で日本が受け入れる必要があったのか。結局、国益が外交だと言うが、もっと基本的な所で国益とは何かを考えなくてはいけない。西欧社会では国益は勝ち負けの論理の延長線上にある。しかし、アジアの特に日本では国益は全体主義(世界全体)の中で許される果実の摘み取りのような位置づけになる。それ故に、日本では国益は固有の価値観の利息程度の重きしか無いが、西欧社会は国益、特に外交には一か八かの博打を打ってくる。
 地球の温暖化を防止するための「一手段」としてCO2削減なのだが、金融の世界では地球が温暖化しようがどうだろうが、CO2削減が金融ビジネスと化している。そして、、本末転倒で地球が温暖化で滅びても金融は不滅だと思っている。
 騙し合いが外交なら、鳩山由紀夫総理の「温暖化ガス25%削減」は日本の国益を守る国際的「目くらまし」なのだが。ま、どこまで意図しているのか国民は不安な目で見守るしか無い。

CO2の25%削減に向けたタイムスケジュール
 実は「無謀」とか「荒唐無稽」と言われている鳩山由紀夫総理の2020年までに温室効果ガス25%削減だが、今年7月にイタリアで開催されたサミットでは2050年までに先進国全体で温室効果ガスを80%も削減することになっている。鳩山由紀夫総理の2020年までに25%削減は、この2050年に向けた一里塚でしか無い。
 CO2の25%削減の達成のためには究極「燃やさない文化」の形成が必要になる。特に「化石燃料を燃やさない文化」と絞り込んでも良いだろう。その化石燃料を燃やす文化のの中に今の車社会がある。実際、自動車で排出されるCO2は日本全体の20%を占めている。2020年にEV(電気自動車)がどの程度のシェアになるか、また、目標値を決めて積極的に誘導した場合どのようになるかのタイムスケジュールを作る必要がある。10年後にガソリンエンジン車を作っていては自動車業界に未来は無いと思うが。また、その試金石がF1に代表される自動車レースが何時廃止になるか、だろう。F1はあと数年で廃止されると思うが。
 実は一番大きいのが火力発電でこれは日本全体の30%を占める。残念ながらITの普及に伴って今後とも電力需要は急増し、なおかつエネルギー全体が電力にシフトすることにより電気需要は益々拡大する。この拡大分を原発で補うのだが、今後発電は「燃やさない(ウランも含む)」文化にシフトして自然エネルギーを利用する方向に持っていくべきだろう。一般家庭の太陽電池利用はローカル・エネルギーの自給化って面で見ておけば良く、これを現在の発電に替わるものと位置づける必要は無い。逆に産業用需要を賄うために10社しか無い電力会社に積極的にメガソーラ発電を義務づけるのは政治的に容易なことだ。蓄電の仕組みには短期的には揚水発電が最もコストパフォーマンスが良いが、現行水力発電所を建築するには莫大な役所仕事と対面しなければならない。これも規制緩和で政治的に対応するのは容易なことだ。
 2020年CO2の25%削減に向けてせめて数年先までのタイムスケジュールを早急に発表すべきだろう。

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2009.11.19 Mint