CO2排出25%削減の実現は政策では無い

省エネで国民負担増
 一見矛盾する表現だがCO2削減で代替エネルギーを指向すると現在のエネルギー調達コストが上昇し、脱化石燃料政策によって国民負担は増加することになる。
昨今の家庭での太陽光発電補助に関しては、電力会社への売電(家庭から電力会社へ余剰電力を逆潮流して家庭が売りもとになり収入を得る)価格を現在の倍にして1kw/hを46円程度にし、一層の普及促進をはかろうとしてる。ま、政権交代によって民主党の太陽電池政策は更にエスカレートし、今後新築の住宅には太陽電池発電を義務づけるなんてことも言われてるのだが。
 この買い取り電力価格を倍にするために、現在の電気料金を実質値上げする。つまり、日本国民は電気を購入すると既存の電気料金に加えて自然エネルギー分を別途追加徴収され、この分が売電価格倍増の原資になる。詳しくは太陽光発電の売電価格上乗せは天下の愚策で責任転嫁を参照してください。
 そもそも省エネするのは無駄を無くし無駄な国民負担を「mottainai」の精神で減少させることに主眼を置かなくてはインセンティブ(動機付け)が出来ないと思うのだが、民主党の今回の政策はこれに逆行する。高くても代替エネルギーを使おうってのは精神論で経済的には現在の高い代替エネルギーのコストダウンを計ろうって視点に立脚しなくてはならない。
 その意味でCO2の25%削減は目標として解るが、その実施のためのシナリオは国策では無く経済策に終始している感がいなめない。その中には海外から排出権を買って25%実現って、金で解決するシナリオが含まれているのだから。
 25%が先歩きしてるが、実際の表現は「1990年に比べてCO2の25%削減を2020年までに達成する」だ。一方の自民党案は「2005年に比べてCO2の15%を削減する」だ。
 起点が違うので、言葉としては25%対15%だが、自民党案の起点を京都議定書と同じ1990年にすると実は8%削減にしかならない。つまり、25%対8%と3倍近い開きがある。もちろん、実現には費用がかかる。一世帯当たりの年間負担は25%案だと36万円、8%(15%)案だと7万円になる。どちらにしても、CO2削減は国民負担が伴う政策なのだ。CO2削減の基準を何処に置くかで国民負担の額は変ってくる。
ちなみに、鳩山由紀夫氏の発言を調べると「CO2」では無くて「温室効果ガスを25%削減」と表示されている。これにはメタンや代替フロンも含まれるし、その温室効果はCO2より3桁も大きい。これを加えて25%なのか、今後の政策展開に騙されないようにする必要がある。

そもそもCO2削減の目的は何か議論すべき
 「地球温暖化の影響を低減するためにCO2を削減する」ってのが目的なら、残念ながら科学的根拠を持たない金融市場の回し者の手のひらに乗ったと哀れむしか無い。地球温暖化CO2起源説には、はなはだ議論のあるところだから。地球温暖化は客観的事実だが、その原因がCO2増加にあるか無いかは現代の科学技術では証明が難しい。「関係有るかも知れない」程度が現在の科学者の見解だろう。それを根拠に政治が動くのはラスプーチンに振り回された旧ロシア政治(王朝)と何も変らない。
 正確に表現するなら「化石燃料への依存を低減するためにCO2の排出量を削減しよう」なら政策として論理的である。
 現に選挙前のマニフェストでは自民党案にあった石炭のクリーン燃焼技術育成を民主党は採用していなかった。同様に空気中からの熱エネルギー回収(ヒートポンプの普及促進)も民主党のマニフェストに無かった。単に思いつかなかったのが実態かもしれないが。
 全世界に占める日本のCO2排出量は4.7%(2005年統計)である。これを15%削減(自民党案)か25%削減(民主党案)かは世界全体のCO2排出量の0.7%か1.2%とかの議論で双方の差は0.5%しか無い。
 世界各国のCO2排出量割合ベストテンは2005年統計で以下のようになっている。
アメリカ 22.0%
中国 19.0%
ロシア 5.8%
日本 4.7%
インド 4.5%
ドイツ 3.0%
イギリス 2.2%
カナダ 2.0%
イタリア 1.7%
韓国 1.7%
出所:日刊温暖化新聞
 ちなみに、2009年統計速報では中国がアメリカを抜いてダントツのCO2排出国になったようだ。
 例えば、世界のCO2排出量を5%削減する技術が開発されれば(単独の技術で無く、様々な場面での複合技術と思われるが)日本のCO2排出量なんかゼロに換算される。
 つまり、アメリカや中国を筆頭にCO2削減技術が未整備な国は多い。日本がCO2排出削減技術を開発してこれを世界各国に輸出する。ってのが日本の国益を考えた政策では無いのか。日本国内の削減数値を決めることが政策とは思わない。これはスローガンだ。政策目標は日本がCO2削減の技術を開発することに置かなくてはならない。

政策の優先順位と工程を示すべき
 今回の衆議院選挙での民主党の圧勝(勝ちすぎ現象)は、民主党のマニフェストが国民に受け入れられたのでは無く、自民党の自壊によるものだ。その意味で国民から民主党のマニフェストへの批判は多い。高速道路無料化については国民の過半数が反対である。
 民主党がマニフェスト実現が自らの使命と感じるのなら、それは大きな幻想だ。マニフェストは問題提起であり解決策の一案である。一字一句違わないように実現するべきで無い。議論の土俵に乗せるためのたたき台と理解している。その意味で、早急に行わなければならないのは政権奪取前のマニフェストに実際に政権政党となった政権として評価を加えることだ。
 てんこ盛りのマニフェストを見直し、実現へ向けた優先順位とその工程(スケジュール)を「民主党の骨太の政策」として開示すべきだろう。
 そして国民の声を聞くことだ。それが国民第一主義の姿勢なのだ。
 そもそも、マニフェストでは安保を筆頭に外交問題。自衛隊を筆頭に国防問題。そして九条を筆頭に憲法改正問題には触れてこなかった。日本の議院内閣制の下では政権政党の役割は行政であり(ここに私は異論があるが、今回は触れない)、地方自治に組み入れることが困難な外交と防衛は国家行政つまり政府の重要職務である。加えて内閣を頂点とする行政機構の把握であり、政策の実現である。
 総理大臣予定者を筆頭に自らの考えだけを述べていたのでは弁論大会でしか無い。政権政党が担わなければならないのは自民党のスローガンである「責任力。」である。国民から預託された国会議員、そしてその集合体である政党、政権政党は国民に選ばれた時から国民への説明責任を負う。
 今回の自民党案15%と民主党案25%案が、世界から見たら森田健作千葉県知事のように「こまけぇ事は、どうでもいいんだよぉ!」の範疇だと思うがいかがか>鳩山由紀夫総理大臣(予定)。

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2009.09.10 Mint