虎の尾を踏んだ民主党の小沢一郎幹事長

会見で事を荒立てて墓穴
 中国の習近平国家副主席の訪日に合わせて天皇陛下との会見を強く要望したのが政府では無くて小沢一郎幹事長だった公算が高い。大議員団を引き連れて中国訪問を行いリップサービスが過ぎる小沢一郎幹事長だが、今回の行為は党務専任と言いながら政府に指示を出す「越権行為」が過ぎた。
 民主党にとって小沢一郎幹事長は民主党の幹事長であって、政府の要職は任せられない。その意味でも小沢一郎幹事長は党務のみ行っていれば良い。ところが、党と内閣の垣根を越えて政府に指示を出せば、現在の鳩山由紀夫内閣は小沢一郎傀儡政権と揶揄される場面に陥る。これは政策より政局好きの小沢一郎氏の壊し屋の本領発揮になり、政権交代後混乱を積み重ね安定感に乏しい民主党にとって致命的な災いになる可能性がある。
 そもそも小沢一郎幹事長は記者会見で「憲法で天皇は内閣の助言と承認で行うと定義されている」と抗弁したが、そもそも外国要人との会見は国事行為では無い。しいて言うなら象徴天皇の公的行為と解釈される。記者に「憲法読んで出直しこい」ってのは少々無理がある。そもそも、国事行為で小沢一郎幹事長は政府に指示を出し、政府がそれに沿った対応をしたのなら、党務専任を逸脱した行為になる。
 日本人の天皇家への特別な心情を逆なでするような行為を、しかも中国よりの立ち位置で強引に進めた今回の行為はよほど上手に治めないと鳩山由紀夫内閣の致命傷にりかねない重大案件だ。鳩山由紀夫総理大臣も慎重に事を進めないと、思わぬほころびが全体に広がる亀裂に発展する可能性がある。

小沢一郎幹事長の放言の数々
 12月10日からの小沢一郎幹事長の中国・韓国訪問は600名からなる集団を率いての外遊だ。例年行われている中国共産党との交流会「長城計画」を兼ねてのもので国会議員143人も含まれている。また、韓国では李明博大統領主催の夕食会い参加した。
 韓国ではソウル市の国民大学学術会議場で学生らに講義した。この会場で学生からの質問に答えるかたちで永住外国人への地方参政権付与について政府提出の法律にすべきと積極姿勢を見せた。また、帰国後の会見では、我々の政府提出の法案なのだから意見は色々あっても良いが賛成して貰うと党議拘束も辞さない発言を行っている。
 ソウルでの記者会見では天皇の訪韓に関して「韓国の皆さんが受け入れ、歓迎してくださるなら結構なことだ」と述べた。
 一連の天皇の公式行事に対する発言は、まさに踏んではならない虎の尾を踏んだと思われても仕方がないだろう。
 外国での党の幹事長としての発言で政府要人の発言では無いとは言え、一連の小沢一郎幹事長の発言は日本国内では決して歓迎されるものでは無いだろう。天皇の政治利用は日本人が一番ナーバスになる部分で、これは与野党を問わず政治家が一番配慮しなければならない事案だ。
 かの小泉純一郎元首相も皇室典範に手をつけようとして、織田信長すら手を出せなかった部分と揶揄された。こちらは、女性天皇問題に突っ込むことなく自然消滅したので小泉純一郎元首相は危ない橋を渡らなくて済んだのだ。

自ら政局の渦を形成するのか
 政権交代から3ヶ月。有効な経済政策を打ち出せず、マニフェストの実行も紆余曲折する鳩山由紀夫内閣だが。ある意味、試行錯誤を重ねながら徐々に政権党としての形を模索している。
 治より乱を好む小沢一郎幹事長の性格としては、政府からは外され党務中心、それも来年の参議院選挙対応と、政治の中心から距離を置いた位置に満足せず、あえて、火種をまき散らしたいのだろうが、それは、野党の時と与党の時では大きく違うってことを解っていない。
 少なくとも中国、韓国寄りの行動を政府に求める発言を行うと、凋落久しい自民党に民主党との明確な相違点の旗を揚げるチャンスを与える。必ずしも民主党が選ばれて政権交代したのでは無く、自民党が3代続けて総理大臣たらい回しを行った末の自民党嫌いが民主党の政権交代の原動力だったのだ。だから、小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏、岡田克也氏等々の元自民党田中派軍団であっても政権を形成できている。
 小沢一郎幹事長の天皇関連発言は年末に向けての政治マターになる予感がする。

button  外国人参政権付与法案は民主党の迷走
button  2010年の参議院選挙が最終決戦の場

2009.12.15 Mint