平沼・与謝野新党は砕け散った星屑の輝き

夜空の星屑
 星空を横切って光る流れ星だが、その大きさは小石程度が多い。岩石が隕石となって降ることもあるが、この場合は「火急」とよばれかなり大きな光の跡を残す。これはまれな減少である。一般的に夜空を横切る流れ星は空気中で燃焼してしまう。ただ、この残骸を雨水を集めて顕微鏡で見ることもできる。これは隕石では無くて宇宙塵に分類される。燃え尽きた隕石の燃えかすである。
 今回の平沼赳夫氏、与謝野馨氏による新党立ち上げは、大いなる政治勢力を目指したとは思えないエネルギーの低い新党結成である。両者が高齢であるってこともイメージにはあるが、谷垣禎一総裁の元では芽が出ない人々の結集にも見える。そもそも、谷垣禎一総裁の求心力の無さが結果として他の天体の引力圏を目指して浮遊する自民党議員を生んだって結果に見えるのだ。
 隕石や星屑に例えたが、基本的に今までの自民党は宇宙塵であれ星屑であれ隕石であれ、政権って引力で引きつけていた。多少自転速度が速くなって振り落とされた渡辺喜美氏のような存在が居るが、ま、こちらは自らの引力で成り立つ所までこぎ付けた希な例。
 今回の平沼赳夫氏、与謝野馨氏の新党結成は自転速度が速まったのでは無く、引力が衰えた結果の自然発生的に宇宙を漂う星屑だろう。
 何人集まろうと小惑星のように「ただそこに漂う石」にしかならない。その最大の理由は強力な引力が無いため。宇宙を漂いやがて大きな惑星に引きつけられて落下し大気圏で燃え尽きる運命なのかも知れない。
 先に「ただそこに漂う石」である鳩山邦夫氏だが、これは漂うベクトルが違うのか、両者はあまり引力を発していない。

自民党に居るなら10年の臥薪嘗胆が必要
 諸外国の評価では自民党は「砕け散り状態」と踏みつけられた煎餅のように表現されているが、決して的を外していない表現だ。いままで草加煎餅のように堅く一枚岩のようだった自民党が、まさに「砕け散り状態」になっている。
 その大きな理由は「健全な野党」つまり次期政権を狙う野党になりきれて無い現状がある。つまり、「万年野党」にすら達していない。次期政権を狙うにはリーダが必要になる。残念ながら今の谷垣禎一総裁にはその力量が無い。良いも悪いもやはりリーダにはカリスマ性が求められ、乱において能力を発揮するタイプが適任である。谷垣禎一総裁は調整型の人間で、旧日本軍の欠点である逐次投入型戦術しか持ち合わせていな。
 これは民主党にも言えて、政権交代が手段にも係わらず万年野党の長老達は政権交代を目的とし、目的達成で我が世の春を満喫しているだけだ。予算編成の忙しさに隠れて肝心の政策がまったく出てこない。これは自民党より深刻で、国民に対する引力が弱まっている。最悪、今度は国民が、平沼赳夫氏、与謝野馨氏の新党結成のように民主党の引力圏を離れて浮遊することになるかもしれない。
 政権交代には10年の年月を前提に作戦を練らなければならない。何故なら、その間に3回の衆議院選挙、2回の参議院選挙があるから。1回の選挙で大逆転するような政党はヒトラーと同じで危なくてしょうがない。
 この10年を確実に狙っているのが舛添要一氏だろう。だからうかつに動かない。自民党の宇宙塵が星屑となって出て行って、新たな若手が台頭して来たときに舛添要一氏は動く。それまでは臥薪嘗胆と腹をくくっているのだろう。

政界再編は結局人身一新に行きつく
 過去の自民党政権の末期から学べることは、二世議員や三世議員の議員屋には総理大臣が務まらないってこと。安倍、福田、麻生とこの「悪の連鎖」は続いた。今の民主党の鳩山由紀夫総理も世襲議員では無いが議員生活が長くて政治屋になってしまった。そもそも民主党や自民党の若手と言われる松下政経塾出身者も、発言を聞くと政治屋のにおいがする。
 政治が官僚に操られているのは政治家が官僚をうまく利用してると勘違いして、実は官僚が政治家をコントロールしているシビリアン・コントロールならぬガバメント・コントロールが国会で蔓延しているからだ。その政治の実態に首までドップリ漬かった政治屋が明治維新から連綿と続く官僚機構と対峙できる訳がない。
 現在の民主党の引力の無さも、結局は人材は旧自民党田中派の流れであり、やってることも自民党的な「政治と金と色」の世界に陥って何も変わっていない。そもそも、小沢一郎氏は自民党の幹事長だった時代があり、政権交代と言うけれど自民党の派閥争いの縮図でしか無いのかもしれない。
 今回の政権交代は細川護煕総理の怨念の祟りじゃないかと思っている。一連の政局はやはり55体制の崩壊と言われた1993年7月の自民党政権の崩壊から変動は始まっていた。
 小泉純一郎氏ってのはカンフル剤であるのと同時に強心剤で、薬が利いている間は元気だが薬が切れると前に増して重体に陥る。そして、栄養剤がぶ飲みの3総理大臣が自民党の息の根を止めてしまった。
 長老の流れ星を追うよりも、地面に足を張った若手がしっかりと引力を形成していくのが今後の政界再編だろう。若手を引き連れて戦場に登場するのは舛添要一氏が最右翼だろう。民主党には見あたらない。それは、10年先を見据えた政治感覚を持った中堅議員が育っていないからだ。まさに、老害は万年野党病をはびこらしてしまった。
 10年後に舛添要一氏に対抗する戦士を育てていけるか。民主党の大切な長期戦略である。

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2010.04.05 Mint