小沢一郎幹事長は自らの引き際を心得ていない

静観は自主退陣の勧め
 4/27日午後に検察審査会が小沢一郎民主党幹事長の政治資金規正法違反での不起訴を妥当性を欠くと起訴が妥当と答申を出した。
 いったんは不起訴を勝ち取った(結論が出た)と思っていた民主党や小沢一郎幹事長には晴天の霹靂だろう。再審査が行われ、その結果が出るのが3ヶ月後、世の中は参議院選挙の結果を受けて政局になっている時期だ。
 ここで改めて辞任を持ち出しても何の効果も無い。例え民主党が参議院過半数を得られなかった場合は選挙担当としての引責辞任とも言い逃れることができるが、検察審査会の2度目の不起訴不当の結論が出れば弁護士による裁判が開始される。
 もっとも、今回の起訴は政治資金規正法違反の政治資金の虚偽記載が争われているのであって、土地の購入に当てた資金が違法に入手されたものかどうかは争われていない。このため、感情論としては解るが、実際に起訴に持ち込むのは難しいのが実態だ。ただただ、国民の感情論で出た不起訴不当であって、論理的に考えれば控訴は無理な状況にある。
 具体的な証拠が無く公判の維持が難しいと判断した検察庁に「あやしいからもっと調べてみろ」ってのは法の冒涜であり、法の公正さも失わせる。
 にも係わらず、小沢一郎幹事長がこの件で「私個人の問題で党務をおろそかにする恐れがあるので辞任したい」と言えば、これほどの辞任タイミングは無いだろう。しかも、検察審査会の感情論はマスコミによって糾弾され、小沢一郎有利の状況が形成されるのは明らかなのだから。
 「今辞めなくて何時辞める!」政治的判断ではちょうど1年前の代表辞任と同じく、連休明けの幹事長辞任が政治的最も自らに有利なタイミングだろう。それが解らないのなら小沢一郎幹事長は無視してかかる。そんな政治判断が民主党内の反小沢陣営にあるので、直接過激な行動や発言が出ていないと推測される。
 小沢一郎幹事長は今辞任しなければ今までの政治生命の全てを失うことになると考えなくてはいけない。

参議院選挙で過半数確保は容易では
 鳩山由紀夫総理の支持率は下がっているが民主党の支持率は自民党を抑えている。戦後の日本で初めて起こった国民の明確な意思表示による政権交代を数年のレンジで評価は出来ないって意識が世論にあるのだろう。ただ、それの追い風と実際にやってることの矛盾による向かい風とのバランスを考えると、微妙な風の吹き方なのは事実だ。
 様々な問題を起こしているが鳩山由紀夫総理が退陣してしまえば、この3年間に自民党政権がやってきた事と同じで投げ出し総理と総理を支えない家臣の構造が繰り返される。よほど上手なシナリオが無ければ鳩山由紀夫総理退陣は向かい風にしかならない。
 一方、小沢一郎幹事長の退陣はこれとは大きく異なる。国民の代表であり行政府の長である総理大臣と、民主党を仕切る幹事長ではおのずと国民から見た重さが違うのである。政党の幹事長が替わっても国民の生活に直接影響しないが、そうりだいじんだとうそうは行かない。
 逆に、小沢一郎幹事長が辞任することにより向かい風が弱まれば参議院選挙での過半数確保は難しくないだろう。最高の選挙対策は鳩山由紀夫続行で小沢幹事長退陣のシナリオになる。それも、鳩山由紀夫代表による小沢一郎幹事長の更迭があれば最高のシナリオだ。
 秘書にいっさいを押しつけて「知らなかった」と言い切った鳩山由紀夫総理の宇宙人さを持ってすれば、小沢一郎幹事長を更迭するのは難しくないだろう。唯一、難点があるとすれば、母親からの「子ども手当」の用途が小沢一郎幹事長に握られていて、公表されると政治生命に係わる場合だ。この可能性は無いわけでは無い。
 ま、その時は両成敗で鳩山由紀夫総理も身を引くしか無いだろう。

小沢一郎幹事長追い出し行動は無意味
 右も左もごった煮状態の民主党で、いまさら小沢一郎幹事長と差し違えようなんて議員は居ないだろう。何故ならば、今度は政権って引力がある。今までは「政権交代できるかも」って引力だったが、それが現実のものとなった時に、野党をまとめ上げる困難さに比べて政権の引力は効果的であるか民主党の議員は知ってしまったのだから。
 次に来るのは「小沢一郎幹事長無視」のイジメだろう。何も自分が傷ついてまで民主党に貢献しなくても政権が手の中にあるのだから。極端な表現だが民主党に居るのは政権に繋がるためで民主党の力を飛び越えている。別に民主党で無くても政権に直結出来るならそれで良い。時節柄新党も立ち上がっているしってスタンスが蔓延する。
 今回の検察審査会の結論は民主党や小沢一郎幹事長にとってロッキード事件の時の「榎本美恵子氏の蜂の一刺し」程度のものだろう。しかし、それをトリガーに自らの進退を考えると、これは利用して損は無い「蜂の一刺し」ではないだろうか。小沢一郎幹事長の下、党内のまとまりが日々崩壊していく事に手を打つには、自ら政治的損得を考えて今のタイミングを最大限に利用すべきだろう。

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2010.04.28 Mint