鳩山由紀夫総理退陣のシナリオは出来ているのか

普天間問題を核に退陣
 夏の参議院選挙に向けて決定打が無い自民党と民主党だが民主党には出来たばかりでその実力は未知数で期待を持たすって選挙対策の得意技がある。去年5月の小沢一郎代表退陣が自民党の敵失が大きいとは言え、結果として民主党の政権交代につながった。大きな敵失は麻生太郎総理が退陣しなかったことだろう。今回も小沢幹事長の退陣をもって選挙戦に突入ってシナリオがあったが、どうもそれでは足りず鳩山由紀夫総理の退陣のシナリオも書かれている雰囲気がある。
 普天間問題は鳩山由紀夫政権にとってささいな事案だ。本来は防衛省と外務省が土俵に上りアメリカとの決着をはかれば良い。それを鳩山由紀夫総理の陣頭指揮にまで大げさにしたのは政策遂行の大きな誤りだろう。普天間問題が不調に終わり鳩山由紀夫総理の指導力が問われた場合、選挙を控えて民主党は鳩山由紀夫総理の退陣に傾くだろう。しかし、旧来の自民党の総理交代のような無責任に投げ出したと国民に思われると参議院選挙で勝てないので、鳩山由紀夫総理の退陣には合理的で民主的で経済的な三拍子揃ったシナリオが必要になる。
 普天間問題を総理の陣頭指揮にして全責任を負わせる。その結論は結局自民党案の継続で辺野古の沖合への滑走路建設となる。これで社民党が連合政権を離脱する。鳩山由紀夫総理は社民党の連立離脱の責任を取って退陣する。こんなシナリオでどうだろうか。
 小沢一郎幹事長も総理を支えてきた幹事長職を総理が退陣するなら辞める。
 このシナリオが民主党にとって最高の「政権交代」だろう。
 ついでに7月の参議院選挙を衆参同時選挙にする手もあるだろう。そのためにも次の総裁を選び期待感のある内に選挙になだれ込む必要がある。それは6月の上旬だ。
 このシナリオに影響するのは自民党の舛添要一氏だ。彼が自民党内改革を選択すればその効果が現れるには時間がかかる。舛添要一氏が新党結成となれば目前の参議院選挙に直接影響(民主党過半数確保ならず)してくる。おおむね、舛添要一氏の選択肢は前者と思われるが民主党が割れるなら自民党を飛び出して一旗揚げる博打に打って出るかもしれない。このあたりは予断を許さない。詳細は前述

外交日程も空(から)約束
 出好きで目立ちたがりの鳩山由紀夫総理だが、今回の(4/12-14)オバマ大統領提唱の核サミットに出席して積極的に要人との会談を行っているが、外交日程を実施する約束は反故になってしまうだろう。そもそもオバマ大統領とは夕食会の10分しか会えず、公式な会談はアメリカの意向で設けられなかった。なんのためにアメリカくんだりまで行ったのか。
 6月のカナダ・サミット、11月の横浜でのAPEC等に加えて9月には訪ロを予定してるがこれらは全て空(から)約束になるだろう。せめてカナダ・サミットだけは出たいと言うかも知れないが参議院選挙の投票日の日程が7月11日と想定されるのでせっぱ詰まりすぎてしまう。また、新代表のデビューの場としてサミットを利用するほうが選挙戦に有利だ。
 国民が政権交代によって民主党に期待したのだが、逆に失望したものは2つに絞られる。それは国の成長戦略と国防のありかただ。小沢一郎幹事長は口を開けば選挙対策で政策の話は出てこない。鳩山由紀夫総理は社会主義的福祉政策論者で経済成長や外交には疎い。政治家に一番必要な政策論争が出来ない執行部に国民は民主党への期待を裏切られたと感じている。そしてこの二人には「政治と金」の旧態然とした政治家の姿勢が継承されている。
 祖父の念願だった日ソ友好条約締結の後を追って北方領土問題解決に動くのかと思ったがまるで関心が無い。加えて尖閣諸島問題や竹島問題にも何も手を講じない。対外的な交渉事にも目立った成果は無い。
 このあたりに国民が期待を裏切られたと感じるのだ。

次の総理は誰が相応しいか
 世論調査では舛添要一氏に期待が集まっているようだが、首班指名選挙で勝てる状況に現在は無い。次の総理も先の衆議院選挙で勝ちすぎた民主党から出てくることになるだろう。
 岡田克也外務大臣が最右翼だと思われているが、彼は自民党田中派の過去を持つ。民主党の若手からは堅物過ぎて政治がやれるのかの疑問もあるしグループに属さない一匹狼でもある。
 菅直人氏も候補にはなるだろうが市民運動が原点の彼は社会主義的福祉政策になりバラマキが蔓延する。国民は今の政策には否定的だ。財務大臣になった経緯も藤井裕久氏が小沢一郎幹事長の口出しに嫌気がさして辞任したピンチヒッターで経済音痴は知れ渡っている。
 小沢一郎幹事長の圧力が無いとして、民主党の代表の座に座るには過去のしがらみよりも実務肌が要求されるだろう。その意味で前原誠司氏も候補に上がるが鷹派的行動と自我の強さから支持する民主党議員は少ない。
 そもそも、上記の人々には民主党に一番欠ける危機意識が無いのだから代表戦に出馬する意思が薄い。危機を前にして「あえて火中の栗を拾わず」が民主党的なのだ。
 今の民主党の閉塞感、そして国民の期待はずれを払拭するのは上記の民主党の古株では駄目だ。
 実は海江田万里氏ではないかと考えている。
 先のシナリオで辞任する鳩山由紀夫総理に後継者指名があるとすれば(その可能性は低いが)、長年の政敵の中から指名することは無いだろう。とすれば原口一博総務大臣だが、最近の行動を見ると総理の器では無い。民主党のイメージである大学院生そのものだ。これでは国民の支持を集められない。とすると、やはり結論は海江田万里氏に行きつくのだが。
 ま、政治の一寸先は闇。沢山のシナリオが書かれて没になり現在があるのだから、この「鳩山由紀夫総理退陣シナリオ」もその一つかも知れない。

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2010.04.14 Mint