消費税問題は説得する力が無ければ駄目

消費税問題は政治の鬼門
 過去、与党であっった自民党は消費税問題に触れる度に選挙で負け続けてきた。消費税導入は1989年4月の竹下総理の時。その後の最初の国政選挙は1989年7月の参議院選挙。これで自民党は大敗を期した。1997年4月には橋本龍太郎首相の下で消費税を3%から5%に上げたが、この後の1998年7月の参議院選挙でも大敗し橋本龍太郎首相は退陣に追い込まれた。消費税が5%になってから12年間、自民党は消費税率アップに触れなくなってしまった。政治の大きなタブーにしてしまった。憲法改正よりも大きなタブーだ。
 政権交代した民主党は、そして入れ替わった菅直人総理は、官僚の入れ知恵なのか安易に消費税を口にしている。「自民党案の10%を参考にさせてもらいたい」と自らの首を絞める言動まで行っている。「党派を超えた横断的な組織で消費税のあり方を議論しよう」ってのが本位らしいが、自民党が最大のタブーとした消費税に手を染めるのならば遠慮深謀の方針決定が必要で、安易に発言して消費税の亡霊に取り憑かれてお遍路で禊ぎとなる公算が高い。
 そもそも自民党が消費税率アップを封印したのは脆弱な政権基盤で連立を組まなければ政権与党になれない状態があり、これ以上選挙で負ける訳には行かないからだ。
 一方、民主党に国民の支持があるとは思えない。政権交代は自民党の自滅のウエイトが高かったのであって「民主党にやらせてみよう」って選択だった。そして、その実行力を見せてもらっている発展途上なのだ。民主党はまず、国民の支持を盤石なものにするための政治を行わなければならない。それには最大のタブーの消費税に切り込むよりは、やらなければならない事が沢山残されている。
 消費税率アップ問題は万全の政権基盤を持ってないと手がつけられないのだ。そんな政治のイロハを菅直人総理は解らないのだろうか。

国家観、歴史観が見えてこない菅直人総理
 確かに市民運動が出身母体なこともあり、今そこにある課題は見えるが、方針なり戦略なり、目に見えていないものを作っていく能力については菅直人総理は劣っていると思う。そして、政治家に一番必要なものが国家の未来を描く想像力とそこにたどり着く法案整備だ。
 何でもタブー扱いにして何もしなかった自民党の失われた10年とも15年とも呼ばれている時代の閉塞感が結局政権交代の機運に繋がった。年金問題も放置、尖閣諸島問題も放置、竹島は韓国の不法占領状態にある。中国の躍進に手をこまねいて眺めていただけの自民党政治がやり残した政策は山ほどある。その中で一番厄介なカードが消費税問題だ。そして、その裏には巨額の赤字国債問題がある。
 財政を立て直すには消費税問題を避けて通れないと菅直人総理は考えてるのだろうが、民主党的な政策ではまず国家財産の処分では無いのか。売って売って売りまくってから国民へ増税をお願いするのが筋だろう。同様に国家公務員人件費2割減の公約も実施してもらいたい。バラマクだけでは無く、閉めるところは閉める姿勢を国民は見ている。
 200億ユーロ(約2兆4000億円)の国債の償還が迫ってギリシャ危機が起きたが、日本の国債発行残高は670兆円にもなる。ギリシャと事情が違うのは外国金融会社は6.4%(2009年7月)しか保有しておらず、短期的にデフォルトになる可能性は低いだけだ。
 外国金融機関の保持金額は43兆円程度だがGDPがギリシャの10倍ある日本だが、今回のギリシャ問題の引き金になった額は2.4兆円だから、決して少ないとは言えない。
 そのギリシャは6,000もある島を外国に売ることで外貨を獲得し財政の健全化をはかろうとしている。購入層はロシアと中国の富裕層ってのが皮肉だが。
 ギリシャの長期短期の発行済国債は2700億ユーロ(32兆円)程度である。日本の国債発行額は、その20倍もあり、GDP比率で比較してもギリシャの2倍の額になる。日本の財政状態も危機的である。
 子ども手当とか高校無償化を一方で行っていては財政再建が出来る訳が無い。
 まして、消費税を仮に10%にアップしても焼け石に水、官僚の隙間に流れ込んで消えてしまうだけだ。

財政再建は消費税率アップでは追いつかない
 消費税の1%アップで税収は2兆円増える。仮に10%にしても現在の税収が5%上がるので10兆円増えることになるが、地方税や軽減策を盛り込むとせいぜい8兆円くらいのアップだろう。で、駆け込み購入でアップ後の消費は急降下する。内需が縮小する。
 現在の政治の課題は家計簿のやりくりのような現状への対処では無く、日本の安定的成長をどのように計っていくかだ。税収を増やすには経済を活性化しなくてはいけない。国民の貯蓄に頼った国債発行政策は20年も前に決別すべきだったのだ。消費税問題も今まで議論していないのに急に脚光を浴びせるのはいかがなものか。
 バラマキ政策を見直して国家観を明確にし、成長戦略を立てるのかこれからの日本に求められる。また、特別会計の事業仕分けも早急に行うテーマだろう。新しい国の形を作っていくのが政権交代の本当の意味だろう。せっかくの政権交代を消費税問題でふいにしないように菅直人総理には深慮遠謀が求められる。
 消費税アップを現実の問題にする(今の段階では不可能だと思うが)には最も求められるものは国民への説得力である。国民は納得したら賛成する。熱しやすく冷めやすい日本の風土はワールドカップ・サッカーを見ても明らかだろう。しかし、国民を説得する政治家として管直人総理程不向きな政治家は居ないだろう。イラ管そのもので、相手が納得しないと怒鳴り散らす。自分中心の論点の展開には説得力は無い。となると、消費税アップとのツートップ退陣人事が先に見えてくる。
 トラの尾の消費税アップに挑むなら、まず性格を変えることだ。強引な増税が過去の自民党の大敗を招いた。国民を納得させるだけの政治手腕を発揮しなければ消費税アップ問題は裏目に出る。
 管直人総理にはどれだけ大衆を納得させる話術があるのか?
 世界はそれを知りたがっている。
 で、たぶん無いのだから消費税アップ問題については「しばらく、静かにしてもらいたい」。

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2010.06.28 Mint