消費税発言は政権担当能力を隠す意図か

争点隠しが大本命だったのか
 今回の参議院選挙の結果は民主党の惨敗で政局にもならない。しいて言えば民主党内部の内紛が起きてくるだろう。谷垣偵一自民党総裁は攻めの性格が弱いから相手の自滅を待つ戦術を取るだろう。9月に民主党の代表選挙があって、新たな対立相手が見えてくるまでひたすら引き延ばし国会運営になり、政治はますます国民から乖離してしまう。
 参議院選挙は衆議院選挙に比べ争点が明確にならない面があるが、今回の選挙には政権交代後の民主党の評価が多分に含まれる。その意味で政権担当能力が最大の争点で、その一翼が政治と金の問題であり、普天間決着に向けてのリーダーシップ欠如の問題だろう。消費税を争点に持ってくるのはあまりにも唐突だ。
 民主党が一番恐れたのが「政権担当能力が無い」との攻撃だろうが、これを自民党は争点にしなかった。「一番」はなんともやれやれな選挙スローガンで、北海道ではこのスローガンを使わず「強い北海道を作る」となっている。せめて「政権担当能力1番」であれば訴求力もあっただろう。
 攻め込まれ易い状況にある民主党は小泉純一郎元総理の選挙戦術と同じように争点一本化を画策した。そのためには消費税を争点にして数議席減っても、政権担当能力を問われて惨敗するよりよしとしたのだろう。
 そのような深慮遠謀が無く思いつきであったなら、益々政権担当能力に疑問符が付くのだが。
 自民党も歴代総理の鬼門であった消費税の土俵に積極的に乗ることは避けた。将来の消費税は10%であり、今回の争点に持ち込む気持ちは無かった。そのため消費税を積極的に発言したのが民主党となってしまって一人相撲の様相を呈した。
 終わってみれば44議席と改選前を10議席も割り込み、単独過半数にはほど遠く政策運営は大変厳しい状態に陥った。
 これは民主党のみでは無く日本の政治への大きな痛手にもなった。

民意が問うたのは政権担当能力
 政権担当能力が有るとか無いとかの二律背反では無い。未熟ってことだ。その未熟さをどのようにカバーするのか、その方向を民主党は明示できていない。典型的なのがおぼっちゃま総理と揶揄された鳩山由紀夫元総理の普天間問題だろう。そして体質としての子ども手当9億円の政治と金。この問題は選挙の争点から外された感があるが、国民が民主党に求めているのはこのような課題の解決策だ。
 そして、日本の政治全体に求めているのが経済の再建と国民の暮らしを守る政策の実行だ。
 政権交代から一年弱、この期間に民主党は何をやってきたのか、国民には「民主党は何をやっているのか!」としか見えない。勝って官軍でマニフェスト至上主義。これが責任有る政権政党の行う行動だろうか。マニフェストと言えど所詮選挙向けの公約、方針の明示であり実行計画では無い。
 方針>戦略>戦術>実行計画の段階を踏むのであるから、方針=実行計画とはならない。それは何事についても同じである。ただ、民主党のマニフェスト至上主義だけが方針=実行計画を標榜している。
 マニフェストの項目を実行計画にするプロセスを透明化することにより政策実現のプロセスが国民に情報提供され、その過程で加えられた修正の妥当性を国民が判断できる。今回の菅直人総理の消費税増税議論はまったくこの轍を踏まない唐突なもので、選挙戦略で無いとしたら政権担当能力も問題になる。

海江田万里氏の周到な動き
 当選、落選を繰り返してあまりテレビ出演の機会のない海江田万里氏が最近積極的にテレビ出演を行っている。今回の参議院選挙の結果は民主党の惨敗により政局よりも民主党内部の紛争に発展するのは明確だ。その内部紛争は9月に想定される代表選挙で確実になる。また、この機会を利用しなければクーデターでしか無い。
 9月の代表戦は定期的なもので、早急な代表選出が必要な国会議員のみで行われるものでは無く、党員やサポータを含んだ代表選挙となる。9月の代表選挙に投票出来る党員やサポーターは5月末で締め切られるが、とりあえずの党員は小沢一郎氏が多くをかき集めている。小沢一郎氏自らが代表戦に立たないとしたら、代理戦争の旗頭は現在の総務大臣の原口一博氏か海江田万里氏だ。
 鳩山由紀夫代表辞任の後の選挙にも直接小沢一郎氏から養成があったことを原口一博氏も海江田万里氏も認めている。田中真紀子氏にも声を掛けたのだから、多少動転してたとしても、一度名前が上がったからには、9月の代表戦の有力候補者になるだろう。
 先に書いたように、政治家に再チャレンジは無い。一発勝負で実績をあげてこそ政治家だ。その意味で相変わらずのメンバーで9月の代表戦が行われるよりは、一発勝負型の政治家が代表に選ばれ、総理大臣になる。過去5人の総理大臣は全て再チャレンジ型で全て短命に終わる(含む、菅直人総理)。
 小沢一郎戦略は海江田万里総理に向けて動いている。これは9月に向けて動いている。ささやかな小競り合いを行わず一刀両断で小沢一郎氏は最後の戦いを考えているのだろう。その布石が今後の海江田万里氏のメディア露出度で解ってくるだろう。

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2010.07.16 Mint