与党根性の自民党、野党根性の民主党

政治家の意識改革が遅すぎる
 鳩山由紀夫元総理は反面教師だった。野党から与党になった段階で発言の重さは野党の時とは比較にならない程重い。その1点ですら認識していなかった。そもそも政権交代を目指すなら「国外、最低でも県外」との方針だけでは政権は担えない。
 発言がブレルと言われて「同じ話を繰り返すのは失礼だと思った」って発想もしくは言い訳は小学生並みだ。首尾一貫することが政権を担う与党のリーダシップだ。その意味では最後は詭弁になろうとも首尾一貫することが意見をコロコロ変えることより何倍も大切なことなのだ。
 民主党は野党も含めて議論をしようと呼びかけているが、これも変な話で、基本的に与党はたたき台を作り、野党は広義の「なんでも反対」するのが過去の政治だった。なんでも反対の野党はマスコミと同じでそれが正義と思っている文化に浸っていれば良いが、与党はたたき台を作り受けて立つ姿勢が求められる。
 話し合いで妥協点を見つけるのは民主主義の基本だが、まず、たたき台が無ければ議論も始まらない。与野党共同でたたき台を作るってのは大政翼賛会的で必ずしも健全な政治状況とは言えない。
 政治家は山積する問題を政治の力で解決することが求められている。最近、本棚で埃をかぶっている日経の「2020年、日本は消滅する」を読み返したが、政治は山積する問題を一つも解決してこなかった。実はこの本が書かれたのは橋本龍太郎総理の時代で1997年である。今から13年も前に指摘された課題に政治はいまだに解決策を見いだしていない。
 政局に終始し、問題解決の政策を立案してこなかった。そもそも定年のある官僚と政治家の大きな違いは、政治家はより遠くの長期的な日本に責任があるってことだ。それを目先の選挙対策に終始したから官僚のほうが長期的視点になってしまい、政治は自滅したのだ。

体質、根性の問題と気づくべき
 議論の前提は互いの立ち位置の明確化だ。立ち位置を明確にしないで議論をすると互いに相手の目指しているものが見えない。故に、方法論、小手先の妥協案に陥りやすい。
 現在の民主党の立ち位置は「政権政党」だ。その民主党に政権担当能力があるのかと疑問符が付くのは、まさに与党の立ち位置では無く野党の立ち位置に居るからだ。「国外、最低でも県外」は野党的な方針である。決して行動計画では無い。そこまで詳細に検討されていない。それでも野党なら許された。何故なら与党の行うことに相反する論理で挑めば良かったから。広義に「なんでも反対」が野党の文化なのだ。そして、実現する責任は問われない。そもそも、実現しない。
 しかし与党は政権政党で日本の国策の中心に居る。言ったことは実現しなければならない。それが政権与党に国民から求められる。実現しない、もしくは実現の方向が二転三転すると「ブレテイル」と決めつけられる。これは決して野党には向けられない批判だ。
 政治家は日本に山積する問題を解決する最前線に居る。この意識改革が最も早く出来たのが辻元清美衆院議員ではないかと思う。福島党首の普天間反対による内閣更迭、連立離脱で最前線から撤退した姿勢を嫌って離党した。国土交通省副大臣を務めることにより、政治家がいかに国民から課題解決を迫られているか。それに応えるの政治の醍醐味でもあると気がついたのだろう。
 一方の自民党も野党の立ち位置が出来ていない。野党は広義の「何でも反対」が文化だ。代替案なんか無くても良い。相手の欠陥を責めるのが野党の文化だ。もっとも、そのような野党では二大政党制には馴染まないのも事実だが、現在の自民党は長期低落傾向は止まらず、このまま政権復帰は難しい。
 最後は政界再編成と政治家の刷新に落ち着くが、これは政権交代から10年は要するだろう。それまでは自民党は古い体質を引きずった与党の立ち位置の野党を続けざるを得ないだろう。早い時期に、それを打破するには次回の衆議院選挙で一気に若返りしか無い。

今後10年間政治は不作為を続けるのか
 自民党も民主党も古い体質を刷新できないでいる。それが立ち位置の定まらない現在の政治の混乱に繋がっている。結局、「新しい酒は新しい革袋に盛れ」である。野党になった功労者(?)、与党になった功労者は実は過去に真逆の状態の体験者だった。それ故、古い体質を引きずっている。ここは政治家の一新を考えなければならない。古い体質の一新には古い政治家のリストラしか無い。新しい政治家で構成する国政を実現する必要がある。
 それにも10年を要するだろう。しかし、選挙の頻度が高ければ10年もかからない。直近2回衆議院選挙があれば大きく体質(構成員)を改善できるだろう。そもそも政権交代は細川内閣の時の選挙制度改革からだから1993年が出発点になる。それから一時期の自民党のカンフル剤である小泉純一郎総理の時代もあったが、16年必要としている。
 この国は10年後は2020年である。1997年に指摘された日本の沈没まで10年しか無い。残念ながら現在の政治が政権担当能力を持つまで10年かかる。よほどドラスティックな政治改革が無ければ、我々は2020年に向けて坂道を転がり落ちることになる。
 「坂の上の雲」を目指して登った坂は峠を越えて下り坂に1997年から入っているのだ。

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2010.08.03 Mint