釈放で責められるビデオの内容
尖閣諸島で海上保安庁の船に激突して来た中国漁船を撮影した映像が公開されていない。一節には国際航海の原則から海上保安庁の船が中国漁船を止めようと進路妨害をしたとの説が流れた。日本の領土であれ公海であれ船の進路妨害は妨害した側に責任がある。
卑近な話では海上自衛隊のイージス艦「あたご」がマグロ延縄漁船と衝突した時に右側に見た側に回避義務があるのにそのままイージス艦「あたご」がマグロ漁船の進路を横切り船体をまっぷたつにしてしまった事件があった。
車の場合、相手の前に出て相手を止める手法はあるが、これはブレーキが使える車だけの特性で船舶は基本は相手の進路を妨害してはならない。そのため、映像が公開されると日本側に非があることになる映像なので公開を控えたと考えられていた。
しかし9/28日午前中に開かれた参院外交防衛委員会で前原外務大臣は映像を見たのか「あきらかに故意にぶつかってきた、逮捕は当然」と主張している。また、一緒に見たかどうか不明だが民主党の一部から「これを公開したら、なんで釈放したんだと国民が納得しないだろう」と真逆な発言が出ている。
いずれにしても映像を見ないとなんとも言えないが、当時の現場では逮捕は当然の雰囲気があったのだから、後者の「とても、見せられない事由」なのではと思われる。
「領土問題は無い」では駄目
国際社会へのメッセージ、特に中国の軍拡を横目に見ながら自らの防衛力の拡充を行っている東アジア諸国は、今回の日中の対応を事例研究として興味深く見ていただろう。前原外務大臣はいち早くクリントン国務長官から「尖閣諸島は日米安保の対象区域」の言質を得た。これが最初の強力な外交カードになるはずだった。
ところが同じ国連総会に向かった菅直人総理大臣はいつものイラ菅で「さっさと解決しろ」と騒ぎ立てた。そもそも、尖閣諸島で中国人船長を逮捕した報告はホテルで就寝中の菅直人総理大臣を早朝に起こして伝えられたものだが、「ふーーん」と応えただけで具体的指示は行われなかった。いや、しいて指示と言えば「早く解決しろ」のみだった。
前原外務大臣はアメリカではコメントしない姿勢を貫いた。これは正式の記者会見が開けない外遊先で正しくメッセージが中国側に伝われないことを懸念した慎重姿勢だったろう。それに比べて留守番役の仙谷官房長官はこまめに動きすぎた。先の田中真紀子当時外相と同じで司法当局に圧力をかける。「ミサイルでも飛んで来たら大変だ」のパニックである。自らミサイルの矢面にたってでも筋を通すって顔つきでは無いのは衆人承知のこと。弁護士の考える危機管理は往々にして自己保身が先行する。自己犠牲ってのは弁護士には無い選択だ。
さっさと中国人船長を釈放したのは何の解決にもならなかった。いや、中国の脅威を計りかねている東アジア諸国には「中国は怖いでぇ」と思わせた分、中国と話し合いは通じないとのメッセージを発信したようなものだ。これは、各国の警戒心を助長し決してアジア共存の考え方と組みしない。つまり、民主党の政策とも組みしない。
結局クリントン国務大臣がくれた外交カードを使うことも無く、また、映像の公開では国会での野党の追及が怖いって四面楚歌の状態に陥っているのが今の民主党だ。
前原外務大臣のお手並み拝見の機会だったが、仙谷官房長官が全てをぶちこわしてしまった。
ま、真実は数日以内に公開されるだろうが、なんとも政権担当能力の無い民主党をさらけ出した事件だった。