前原誠司外務大臣は右側の一匹オオカミなはず?!
今回の尖閣諸島問題で一番右よりの行動や発言をしているのが前原誠司外務大臣だろう。事件発生時は国土交通大臣で直接海上保安庁を指揮する立場にあった。民主党の学芸会である代表選挙が終わって外務大臣にスライドした。
ちなみに後任は馬渕澄夫国土交通省副大臣の昇格である。内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策担当)も兼務することになった。これに防衛大臣の北澤俊美氏が加われば2+2の日米協議と同じメンバーになるのだが、何故か今回は防衛省は蚊帳の外である。前原誠司外務大臣がアメリカとのパイプ役である。
ところが、ここに来て変な動きがある。前原誠司外務大臣が自ら率いるグループである「凌雲会」で「国会議員は体を張ってでも尖閣諸島を実効支配していく腹づもりを持ってもらいたい」と発言したと産経新聞が報道したことに対して、産経新聞は揶揄していると「イラ菅」ならぬ「イラ前」状態だった(産経新聞の報道)。
中国の前原誠司外務大臣への警戒感は相当強いものがあるだろう。なんせ彼は左の仙谷由人官房長官の両極の右側の極なのだから。その発言が中国を刺激しているのは間違いない。が、ここにきて中国側を刺激しない発言に切り替わっている。産経新聞を「イラ前」したのは、方針と真逆だったからだ。
これが前原誠司外務大臣の「大人の対応」と見るのは無理がある。
菅直人内閣の実質の舵取りは仙谷由人官房長官が行っている。アメリカで尖閣諸島で船長を逮捕した後の中国の強硬姿勢に対して「何とかしろ」としか指示が出せない菅直人総理では物事が何も進まない。そこで、仙谷由人官房長官が仕切ることになるのだが、左側の彼は正面切っての法廷闘争を止め裁判長(中国)の温情に訴えてせめて執行猶予付きの判決をと考えた。これに菅直人総理が同意して内閣の方針として中国を刺激しないことになった。前原誠司外務大臣がこれに従わないのなら切っても良いと迫っているのだろう。
偽メール事件で自分の考えだけで猪突猛進して代表の座を棒に振ってしまった前歴のある前原誠司氏としては、引かざるを得なかったのだろう。本来防衛省が行う米軍関連の事案にも首を突っ込みすぎたきらいもあった。つまり、前原誠司外務大臣の「大人の対応」は「昨今、この内閣は倒れる」って大人の対応だと思われる。
一匹オオカミの群れはカオス状態に
一匹オオカミの群れってのは適語表現では無いが現実にはあり得る。中国の事例をここで持ち出すのは不適切かもしれないが梁山泊である。
日本で一匹オオカミの群れと呼べるものは過去存在しなかった。清水の次郎長がこれに近いがやはり日本的な「和をもって尊ぶ」でしか無い。プロ野球の監督の星野氏の発言だったと記憶しているが「アマチュアは和をもって勝つ、プロは勝利をもって和する」ってのがあった。まさに後者が一匹オオカミの群れを統率する手法である。
しかるに、菅直人総理は前者の人である。仙谷由人官房長官に至っては状況判断の逐次対応の人である。今の内閣に大局観を持って物事に対峙する人は居ない。局地戦の逐次対応の繰り返しが結局大敗へと繋がるのは先の太平洋戦争のガダルカナル島戦の戦訓でもあるのだが。
リーダ不在では、一匹オオカミの群れは無統率状態のままカオスの世界に入っていく。
一方に中道のオオカミ集団が居る。親小沢一郎派のメンバーである。こちらは一匹オオカミ風も居るが基本は「和をもって尊ぶ」であるが、リーダは「勝利をもって和する」人間である小沢一郎である。これほど両グループのリーダの素養が違う。
一匹オオカミ集団は統率者が居ない状態で外圧が訪れると四散するだろう。外圧とは中国のことでは無い。国会運営である。本人達が自覚してるかどうか別にして所詮、政治家は結果責任である。法律を成立させることが出来なければ政治家の価値は無い。
政治家は法律を作り成立させ実施し、そしてその結果に責任を持つ。あたりまえの事が出来なければ国民は政治を預託した意味が無い。つまり「こんなもんなら、イラナイ」となる。
サポータの投票で代表選挙圧倒的勝利と菅直人氏は信じているようだが、国会議員票では薄氷を踏む状態だったことを思い出すべきだ。そして、協調性の無い一匹オオカミはリーダにすら牙をむく事がある。
統率の取れた集団と各人バラバラの集団ではどちらが戦いに勝利するかは歴史の示すところだ。菅直人総理はもはや首を洗って待つ時期に突入したのかもしれない。