公開のタイミングは国会公開後
アップされた尖閣ビデオは事件の直後に検察への説明と内部研修(逮捕時の記録事項の確認)のために編集されたもの。製作時期は9月7日の事件発生から数日の早い時期に作成されたものだ。また、取り扱いも検察への証拠扱いにはなっているが管理は緩やかなもので誰でも閲覧出来る状況に10月中旬まであった。
sengoku38氏はこの初期に尖閣ビデオを入手していたと思われる。入手と同時に公開しなかったのは、検察への証拠の一部とされていたため、合理的な公開事由が無く、もちろん、国家公務員法の守秘義務対象であった。
しかし、11月1日午前に6分50秒に編集された尖閣ビデオが国会内で30名程度の国会議員に公開された。この時、法務・検察当局は「公益性を考え、国会要請に応じて提出しただけ」と語っている。これは係争中の裁判資料を公開したのでは無く、編集した(証拠品とは別の)ものを「要請に応じて提出」となる。つまり、この時点で編集された尖閣ビデオは係争中の事件の証拠品では無くなる。
そして11月4日夜全44分の尖閣ビデオがsengoku38氏によりyou tubeに公開される。
これをAPECを狙ったタイミングと解釈する例が多いようだが、純粋に司法判断から類推すると44分の尖閣ビデオは国家公務員法で規定された守秘義務対象にならなくなったタイミングとも解釈できる。
sengoku38氏像が司法の仕組みに詳しい人物か団体と推測される所以である。万が一逮捕されても国家公務員の守秘義務では有罪にならないだけの背景を周到に計っていたのだ。もちろん、根底には政治的圧力により検察の独自性が失われた件。苦労して逮捕した船長の釈放では現場の指揮にかかわるとの義憤が根底にあるのだろう。であればあるほど政府の弱点に合致した行動を計画し実行する前に理屈の積み上げを行ったのだろう。例えば、国会で公開されたらアップするのような、計画が事前に出来ていたのだろう。
sengoku38氏を逮捕するのは政府に不利
政府が検察の行動を制限するには法務大臣の指揮権発動が必要だが、事態は海上保安庁からの控訴で事案は検察の手の内にある。sengoku38氏を特定し逮捕した場合、公判を維持するためには尖閣ビデオの全貌を裁判で公開することになる。
sengoku38氏の義憤の根拠を証拠として求められるから。
しかし純粋に司法判断として守秘義務違反は問いようが無いだろう。もっとも、元毎日新聞記者を国家公務員法の情報漏洩幇助で有罪にしたテクニックを持つ検察だから裁判にまでは何としてもたどり着くかもしれない。
問題は尖閣ビデオの全容が裁判で公開される場面だ。そこに東京都知事が入手した「接舷時に海に落ちた海上保安員を棒で突いた」まであるのかどうか。もし有るとしたら今までの菅直人政権の「中国への配慮」は国賊的であったことが公表される。
政府としてはsengoku38氏は時限爆弾なのだ。出来ればうやむやに終わって、もしくは時間を引きづって終焉に持ち込みたい。はたしてそれが可能か。
どちらに転んでも初動の誤りが尾を引く事案で菅直人政権に致命傷になる火だねだ。
火だねは時間が経過して鎮火するのを見守るしかない。今回の捜査は一筋縄には行かないだろう。
ちなみにインテリのsengoku38氏は尖閣→仙谷→sengoku38と一連のしゃれっ気を出しているのだろう。