白洲次郎が望んだ教育
NHK on Demandってホームページがある。過去NHKが製作した映像をアーカイブにして1番組ナンボの世界で売るってホームページだ。2年前にスタートしている。この事業は最初から巧く行かないと思われた。街のレンタルビデオが過当競争で7泊8日で50円の時代にNHKの朝ドラの「てっぱん(15分)」を見るのにクレジットで105円払えって仕組みなのだ。Nスペだと1作315円も取る。
で、初年度は売上げ目標40億円に対して実際の売上げが1億円強と惨憺たるものだった。で、「レンタルビデオなら1作毎に課金しても売れるがオンラインは月額固定見放題が基本」と何度もメールしておいた。ま、メールの最初には「あんたたちばっかじゃないの、」の枕詞は必ず付けたが。
で、12月1日より月額945円で見放題プランが始まった。ブロードバンドがいよいよ社会インフラとして地方にも広まると、現在のデジタル対応テレビでOCN経由で楽しめるのだから裾野は広がる。その意味で月額見放題が正解なのだ。
で、早速加入して「白洲次郎」を見ている。
彼がケンブリッジで受けた講義は「白洲くん、君のリポートは完璧だ。英語にも間違いはないし論理の展開も良い。ただ、ここに書かれていることは私が教えたことをまとめただけだ。何も新しいことが入っていない」とリポートを突き返される。そして、他の学生に向かって「人の意見を疑ってみなさい、そして反論しなさい。それであなたの小さな頭が考えて、考えて、少し大きくなる」と話した。
白洲次郎は自分のリポートを破り捨てるとともに「俺が受けたい講義がここにあった」とつぶやく。かの教授は「それは、お役にたてて嬉しい」と答える。
そんなシーンがあった。
自ら考える。それが教育の原点なのだが、先の原理主義者は考えない教育を65年も続けてきた。その結果どうなったかは先に書いた。
佐藤栄作による学生運動弾圧が現在を作った
実は白洲次郎の話を書いたのはそれが現代では特別なことに聞こえるがわずか50年前の60年安保、そして大学改革が叫ばれた70年台安保の頃には常識だった。
学生は「全ての事を疑え」をスローガンに「全ての事を疑え」の言葉すら疑った。政治的意見を戦わすのは各自の存在事由(レーゾンデートル)であったし、疑うことで成長できる機運があった。実はこの時代の最終列車に乗っていた世代なので当時の様子が思い出される。
10.21の国際反戦ディには修学旅行で東京の新宿の路上に居た。
東京タワーにはベトナム戦争からの一時帰国の米軍のGIが妙に澄んだ目で夜景を見ていた。
しかし、佐々淳行氏に代表される機動部隊が大学のバリストを蹴散らし、最後は浅間山荘事件に繋がり学生運動は急速に萎んでいく。
確かに過激に走りすぎた傾向はあったし、日大から始まった大学改革は左派の草刈り場と化した政治的不安定も要因ではある。しかし、僕は今でも浅間山荘事件を力による統治のデモンストレーションと見ている。自民党が行った226事件だ。結局、暴力(恐怖)による統治のテロリズムなのだ。
そのテロリズムが大学改革の動きを止め、大学内部の職員も萎縮させ、現在の皆大学生の時代につながった。しかも社会人にまで蔓延し、自衛隊の最高責任者は総理大臣だとは知らない総理大臣を生んだり、「最低でも県外」と言いながら出来ないときの責任を取らない総理大臣を生んだり。ま、自民党も同じで「ねじれ国会を乗り切るのは誰かにやってもらう」とか、「あなたとは違うんです」とか責任の無い人間を山ほど搬出した訳だ。
で、皮肉を込めて戦後の日教組の原理主義は成功した。そして日本は滅んだ。
いや、まだ再建の余地はあるのかもしれない。本日は開戦記念日だから教育問題で開戦してみるかぁ。10年先20年先にしか結果は出ないが。