テロとの戦いに警察庁外事課は何をしていたのか

事件は国家間の外交では無い
 マスコミが使う「イスラム国」の名称が誤解を生むのだが、毎日新聞では『過激派組織「イスラム国」』と表記している。国家では無く犯罪組織の名称が「イスラム国」なのだが、誤解を招く表現が横行しているのと、自分で考えない日本人が増えているので「イスラム国」がイスラム教を代表する国家と思っている人が存在するのは笑えない事実だ。ネットでも「イスラム国の政府は何をやっているんだ!」みたいな発言を目にすることがある。自分で調べて自分で考えない人間は「口空いて、ハラワタ見える蛙(かわず)かな」となる好例だろう。
 事件が一段落した局面まで発言を差し控えていたのは現在進行形では交渉人(ネゴシエイター)に全権を任せるしか解決策が無いのがこの種の事件の常道だから。こうすれば良いとかああすれば良いなんて助言は雑音でしか無い。全ては交渉人(ネゴシエータ)の全権責任で終息に向かうべきだろう。
 その意味で、日本共産党と言うか、国会議員が「これ幸い」と安倍晋三総理大臣攻撃を行ったのは「野党は国政への責任が無い」との自覚を吐露した訳で、日本共産党は結局「世界同時共産革命」を信じた基地外ってことだろう。こんな政党に政権は渡せないし、政権能力も無い。
 事件の本質を考えると毎日新聞の表記を更に確実にする必要があり、「犯罪集団が国家を恐喝した」ってのが本質だ。
 これに対抗する日本の機能としての国民の生命財産を守る使命は警察にある。1970年台に赤軍派が世界各地でテロ行為(当時の表現ではゲリラ行為)を行った時に対応した窓口は外務省の現地大使館や領事館だったが、実質は警察庁の外事課であった。そして、そのほとんどに関与したのが浅間山荘事件の総指揮を担った佐々淳行氏である。
 当時は、浅間山荘事件の一連の延長戦として警察庁外事課が事件解決に向けてある意味「暗躍」する仕組みがあった。
 今回の事件の名称は定かでは無いが、警察庁外事課はまったく機能しなかった。外務省事案として放り投げて、警察庁は「ほおっかむり」である。
 テロとの戦いは専守防衛である、何故なら相手は国家では無い犯罪集団なので、首都陥落による勝利なんてのはあり得ない。現に、1970年代の赤軍派によるゲリラ(当時の表現)攻撃にはなすすべもなく、超法的対応を余儀なくされたのは国家との交渉では無かったので、今まで頼りにしていた日米安保での対応できない事案だったからである。つまり、テロとの戦いは軍事同盟すら無力になる異質の武力闘争だと認識する必要がある。

テロへの対応は警察力の強化なんだが
 国際テロリズムへの対応は自衛隊の事案では無い。日本国政府は10年前に警察庁に外事三課を設けて国際テロリズムへの対応を強化したと言っている。だが、この組織は今回の事件でまったく効果を発揮しなかった。
 そもそも、警察庁外事三課は2010年10月に捜査資料114件がネットに流出し、600人以上のイスラム教徒をテロリスト予備軍としてリストアップしていた事実が暴露された組織である。そのファイルを私は今でも保管しているが。何を目的に組織されたか、それがイザとなれば機能するための準備として機能していたのか、今回の事件の経緯を見ると10年間遊んでいただけとしか言いようが無い。税金を食い扶持に遊んでいた税金浪費集団だ。
 そもそも、安倍晋三総理からして単細胞だと言わざるを得ない。テロとの戦いは自衛隊が出て行くものでは無い。犯罪集団との戦いであるから警察力の強化が必要な事案だ。諸外国でも「相互捜査協定」を結べば、日本の警察機能を現地で発揮できる。捜査機能が無い武力行使がメインの自衛隊を即諸外国に出すのは無理がある。まずは、双方の治安維持機能である警察機能の相互運用である。
 邦人の生命財産を守るのは自衛隊機能では無い。警察の仕事である。役所は縦割りで自らの利権になれば「我が省の事案」と言い、面倒になると「我が省の事案では無い」と言う。つまり、役人独特の無責任体質なのだが、行政府のトップとして安倍晋三総理大臣に欠けているのは役所(官僚)まかせな行政手腕だ。自らは立法府の長として長期政権を目指すあまり行政府の長としての感覚が鈍い。だから、邦人保護には自衛隊って単細胞な判断になる。
 テロとの戦いに「攻め」無力だ。彼らは容易に「転進」する。まさに撤退では無くて「転進」である。領土を持たない強みがいかんなく発揮される。
 だから、自国でテロ活動をさせない治安活動が一番大切になる。そのことに失敗したのがシリアであり、イラクなのだ。
 で、日本も同じ轍を踏もうとしている。
 警察庁の無能が日本人の生命財産を危険に晒している。


先頭に立つべきは警察庁
 ちょっと整理しておくが警察庁と警視庁の違いが解っていない人が多い。テレビで2時間ドラマを見ていると警視庁が警察庁の上部機関だと思っている層が多い。警察法はあるけれど警視庁法は無い。つまり、警視庁は日本の東京に限られた警察機構であり日本全体は警察庁によって機能してる。
 で、その警察庁はテロ対策では機能していない。まさか自衛隊に丸投げで安泰とは思っていないと思うが、それにしても何をやっているのか国民には解りずらい。
 ある意味で秘密遵守は認めるが、その成果をがあってこそだろう。官僚組織で何でも秘密にして自分たちは何も成果を上げない。その成果すら秘密扱いだから誰も組織の存在効果を判断できない。まさに官僚の思う壺である。
 今回の事件で警察庁が担った部分は何処なのかを明確にする必要があるだろう。テロとの戦いは国内にある認識が警察庁にあるのか。あえて海外に出かけていって爆弾落とすのが効果的なテロとの戦いでは無い。まず、テロに屈しないのであれば入国を排除する。入国した人間は監視する。違法行為があれば逮捕拘留する。これはすべて警察が行使すべき機能だ。
 同じ機能が警察庁外事課にも求められる。
 にも関わらずまったく機能していないのが今回の事件で露呈された。今回のようなテロリストの国外での犯罪には「総理官邸→外務省→警察」って命令系統と、相互に情報共有する仕組みが必要になる。例えば総理官邸がダッカ空港ハイジャック事件で超法的措置を実行出来たのは前述のヒエラルフィーが総理官邸に端を発しているからだ。
 テロとの戦いは国内に入れないこと。海外で殲滅作戦なんてのは日本の選択肢としてはナンセンス。だから、その穴を埋めるって発想で警察庁は行動すべきなのだが、安倍総理大臣の単細胞政策が陰を落としていると言わざるを得ない。警察機能が弱いから自衛隊って発想は基本を踏まえていない旧日本軍が行った逐次投入戦法の過ちを踏襲することになる。

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2015/02/05 Mint