脱原発は政治の争点にならない

政治は結果責任
 選挙ネタは結果を外すことが多いので(笑い)書かなかったが、当日の投票率の低さに現役有利の情勢を覆すことは出来ないと感じた。
 そもそも、選挙はAKBの人気投票とは違うのだから、争点を明らかにして選択肢を有権者に委ねる性質のものである。にも関わらず、争点を明確に出来ずに有権者の関心を惹起することが出来ずに自滅したってのが敗れた候補者の戦術ミスだろう。
 今回の争点らしきものは脱原発あたりだろうか。「一村一企業」なんてのは既に179市町村で役場が地域最大の企業になっているのだから争点になりようが無い。その役場を改革する話なら解るが、役場以上の企業を誘致なり起業するのは無理な話だ。規制緩和で役場も民営化なんて話なら目新しいだろうが。
 脱原発は出来もしない絵空事と有権者は感じている。そもそも自民党一人勝ちの国政の現状に鑑みると、脱原発は昔の社会党的な反対のための反対に映る。代替案が「再生可能エネルギー」では説得力が無い。そもそも「再生可能エネルギー」ってのはエントロピーの原則に反する自然科学を知らない文系人間の造語で、とても現実味がある話では無い。
 原発は必要悪で、それとどう共存していくかが政治の課題であり、いまさら手にした核のエネルギー利用を放棄するのは時代に逆行している。更に、「脱」するにしても今ある原発をどのように廃棄するのか、結局、原子力発電の技術の延長線上に廃炉まで含めた技術を形成しなければ「脱原発」の議論すら始められないのが現状だ。
 YesかNoかの選択では無く、いかに原発の危険性を認識し(安全神話は否定されてる)それを管理していくか、そして核のエネルギー利用を40年も前の技術のまま継承するのでは無く、トリウム原発なり、新しい、より危険性の小さい(安全とは言わない)原発に移行していくか、その知恵を有権者は求めているのであって、出来もしない選択肢で票を稼ごうとする行動は、先の東京都知事選で証明されていたにも関わらず、脱原発を争点にするのはイデオロギーであって政策では無い。政治は結果責任を問われるものである。だから、出来もしないスローガンを有権者は見抜いているのだ。

得票から見た戦術の不成功
 選挙の結果は
 高橋 はるみ 1,496.915票
 佐藤 のりゆき1,146,573票
 であった。その差は350,342票で有効投票の13%である。
 ちなみに投票率は59.62%である。
 投票率があと15%高かったら結果は解らなかっただろう。上澄みされる得票は佐藤のりゆき氏に有利に働いただろうから。
 脱原発は選挙の争点に成り得ないと書いたが、投票率が高ければ高いほど脱原発をスローガンにした候補者に有利だろう。「もしかしたら実現するかも」って淡い期待はあるのだから。
 ただ、国政レベルの争点を地方選挙に持ち込んでも興ざめだ。現に北海道では農業を中心にTPPに行き先次第では地域経済が大きな影響を受けることになる。農家当事者だけでは無く、農産品関連の従事者を含めるとTPPの影響は国政ではあるが、地域に密着した切実な課題だ。しかも、反対するのでは無く、いかに影響を最小限に抑えて新たな生き残り策であるイノベーションを構築するかは北海道経済の屋台骨問題である。
 現に当選した現知事は前回の得票184万票には遠く及ばず、しかも、上川町、池田町で逆転を許し室蘭市、登別市では互角であった。農業地域と工業地域の双方で苦戦したのだ。
 脱原発が一大ムーブメントを起こせると信じた戦術が間違いだった。もっと、地元のニーズを拾い対応策を提言する選挙戦を行うべきだった。現職の「今までの実績を評価して下さい」がいかに空しく響くか示せて多選の弊害を訴えることができるのだが。
 ま、対立候補として初めて100万票台に乗せたのだから善戦とは言えると思うが。


北海道の政治勢力図が変わる
 知事選が現役続投になったので、急激に変わることはないが、旧来の北海道の政治勢力地図が変化するのは必須だ。まず、札幌市長選挙では自民党の押す落下傘候補が落選した。知事選挙と同様に中央官庁、落下傘、女性って方法論は通用しなくなった。この戦法を編み出した自民党長老は引退への坂を下りはじめるだろう。
 民主党が敗れた知事候補を推薦するのに横やりを入れた民主党長老も同じ道を歩むだろう。旧社会党時代から連綿と続いてきた社会党vs自民党の両者の長老が居なくなる。その世代交代は実は全然進んでなくて、北海道は一気に空白地帯化することも想定される。
 ダークホースは公民権停止中の鈴木宗男氏だ。停止期間満了が2017年4月になるので、2016年の参議院選挙には間に合わないが、そこそこの集票力がある。これに松山千春が乗れば国会議員もあり得ない話では無い。
 対して自民党はNo2が居ない。長老が居なくなると残りはドングリの背比べだ。大臣経験者も居ない。民主党も荒井聡氏か逢坂誠二氏かあたりしか居ない。そもそも求心力より遠心力の強い民主党では他党に鞍替えしなくては国の中枢で活躍できる場は得られないだろう。
 その是非はともかく、一時期は総理大臣を生み出した北海道が政治過疎の場になってしまう。今回の選挙結果が国政へ即影響するものでは無いが、寄らば大樹の影的な国会議員は淘汰されていくだろう。もしくは、新勢力の青田刈りの場と化するかもしれない。
 来年の参議院選挙に向けて、北海道の政治勢力地図は大きく塗り替えられるかもしれない。

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2015/04/13 Mint