平時のモニタリングポストに意味はあるのか

モニタリング数値が不明
 本来のモニタリングではその場所の全放射線量を測定する。しかし原発周辺のモニタリングポストは原発から漏れ出した放射線量(放射性物質も含む)を表示するために自然放射線量を引くからおかしな話になる。
 各地の自然放射線量を事前に計測していないので、おおまかな基準で自然放射線量をモニタリング結果から引いている。
 単位の曖昧さから、正確な放射線量を導き出していないと思われる。
 札幌の場合、北海道原子力環境センター札幌分室で測定しているのだが、ここの2015/6/17 14:13:50分(実時間から30分も遅れて表示される)の値は0.041μSv/h(毎時線量となっている。これを比較のために年間線量にすると0.041×24時間×365日=359.16μSv/yearとなる。0.35916mSv/Yearである。
 日本の放射線量http://www.geosociety.jp/hazard/content0058.htmlによると札幌の自然放射線量は0.0058-0.0178μSv/h(毎時)である。これを平均して0.0118×24時間×365日=103.368μSv/year、単位を合わせると0.103mSv/Yearとなる。
設置されたモニタリングポストの測定値からこの自然放射線量を引いたものが表示されている値だろうか?
 宇宙からの宇宙線も外部被曝である。大気により減衰するので、地上高によって値が違うが年間0.3mSVになる。時間当たりだと0.034μSv/hになる。これも引いているのだろうか。そして残った値を「福島原発事故由来の放射線」としているのだろうか。
 何となく「福島に設置した線量計の数値が高く出るので業者に返品した」事件の真相が解ってきたかもしれない。
つまり、今の放射線モニタリングポストが表示している数値は何なのか、説明せずに数値だけを見せられても理解不能だ。
 そもそも、風邪で発熱があるときに体温計が示した値は、舌で計った体温なのか、脇の下なのか肛門なのかで意味が変わってくるのに放射線は何の説明もなく数値を表示している機械を税金で設置しているのか。

自然放射線被曝と人工被曝を分けられるか
日本人の自然からの平均年間被曝量は2015年の放射線医学総合研究所(NIRS)の計算によると年間2.1mSvとなっている。
内訳は宇宙から0.3mSV、大地から0.33mSv、ラドン等の吸入0.48mSv、食物からの0.99mSvと内部被曝、外部被曝を合わせたものである。
 加えて医療検査を受けている人はCT検査で10mSv/回、レントゲン撮影で0.45mSv/回あたりが加算される。
 先の北海道原子力環境センター札幌分室の測定値は0.041μSv/h(毎時線量)で、年間換算すると0.35916mSv/Yearであった。
 つまり、これが福島第一原発から漏れた放射線量を著しているとして、年間に被曝する放射線量は1回のレントゲン撮影にも満たない。
 そんな数値を知るために税金を使って細かく放射線量をモニタリングする必要があるのだろうか。ってのが今回の論旨である。
 我々の日常生活に何の役にも立たない数値を知るために無駄に設備機器や電気を税金から浪費している。
 気象庁のアメダスだってそうじゃないかとの反論はあるかもしれないが、アメダスは自然を測定しているし、掛け値無しの数値を蓄積する。一方、モニタリングポストは不確かで地域差の大きい自然放射線を不正確に減じて測定されている。その数値は小さくもはや誤差範囲と呼べるほどの値である。
 原発周辺(半径50kmが最適)で事故が起きたときの避難に役立てるのなら自然放射線量を引こうがどうしようが、他のミニタリングポストと比較しながら避難経路を決めるのに役立つが、原発から遠く離れた地点でモニタリングポストの測定値を、自然法車線を含めて表示するのなら解るが、あたかも原発由来(必ずしも福島第一だけとは限らない)にように表示するのはいかがなものか。
 仮に中国の原発や韓国の原発が事故を起こしたにしても、モニタリングポストが測定を継続していれば「平常値との差」で漏れた放射線(や放射性物質)は解るのだから。


安全でも安心でも無い非科学
 モニタリングポストが無駄だとは思うが百歩譲って未来の何時かにその数値が役立つかもしれない。ただ、その時には自然放射線量の変な引き算は止めて、測定された値そのものを表示すべきだ。
 何故なら、福島以外の原発事故を測定出来ないからだ。
 例えば雨の降った時に近隣で小規模な原発事故が起きたとする。雨に日は数値が高く出るからと放置しておけば小規模な原発事故で漏れた微妙な値は誤差に飲み込まれる。
 しかし、生データを表示してくれれば「何時もと違う」はモニタリングポストの値を見た人が検知できるだろう。
 現在の福島第一原発事故を意識した(それじたい、バイアスがかかっていると思うが)は、数値を加工しすぎて落語の「目黒のサンマ」になっている。もっと、本質に近い数値を表示し、自然放射能も含めて、我々は放射線や放射性物質にどのように曝されているかを学べるようにすべきだろう。
 福島由来の放射線量のミニタリングに特化していると、次の時は後ろから撃たれることになる。

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2015/07/01 Mint