「究極の悲劇は喜劇」で終わった東京都知事選挙
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♪8時ちょうどのぉ♪
各放送局の選挙特番は投票が閉め切られる20:00(午後8時)から放送が始まる。番組開始時点で小池百合子氏に当確が出るのは想定内で、実は得票差が判明するのは翌朝になるので選挙特番は見ていない。替わりにネットで選挙終了後にオープンになる情報を探していた。
ま、世代ギャップは承知の上で「狩人」の「あずさ2号」の替え歌にすれば「8時ちょうどの当確を見て、あなたは、あなたは、知事の椅子に座りまぁす」となるわけだ。
今回の小池百合子氏の選挙対応は、何処か計算された流れを感じる。そのシナリオを書いたのが誰かは不明だが、もしシナリオライターが居るとすれば電通、博報堂を凌ぐ腕前だ。また、小池百合子氏が考えたとしたら、様々なエフェクトがタイミング良く出現しているので、「天も味方した」と言えるだろう。
それにしても、増田寛也氏を推薦した自民党(都連)、公明党、日本のこころを大切にする党。鳥越俊太郎氏を推薦した民進党、共産党、社民党、生活の党の今後の責任の取り方が注目される。
ある意味、政党が持つ組織力が裏目裏目に出た自滅なのだが、小池百合子氏には、この敵失がことごとく有利に働いた。
また、選挙のネット利用が解禁(平成25年4月19日)になって数年が経過したが、今回は東京都知事選挙なのだが、全国から容易に情報を入手し意見を述べられるので全国規模の盛り上がりになった。
そのため「地盤・看板・鞄」が通用しない情報戦になったのも小池百合子氏には有利に働いた。何故なら「何も持たない」ことがしがらみが無く、白紙の状態で選挙戦に臨めるのでネットでの支援に手ごたえがあるのだ。つまり、ネットで実体験を共有できるのは小池百合子氏だけだったのだ。その状況を小池百合子陣営は最大限に生かしたと考えられる。
今回の東京都知事選挙がネット解禁選挙の元年とも言えるだろう。
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順番に流れを追ってみる
最初に立候補表明したのは小池百合子氏だが、発端は2年前に
石原慎太郎氏に出馬を要請されたことによる。
この時に利権政治の東京都政を知ることとなり、改革に乗り出す必要を感じた。そのために多くの情報収集を行った。この中に猪瀬直樹氏も入っていると思われる。
そして「先出しジャンケン」となる。もっとも、「後出しジャンケン」って用語はあるが、先出しするとジャンケンが成立しないので、この用語は意味を持たない。が、あえて「先出しジャンケン」としておこう。
この時点で、議員を辞めるのだから幹事長に進退伺を出しているが、東京都連自民党には相談していない。一番恐れたのは情報が森喜朗氏までたどり着いてつぶされることだ。改革をやりたいのに守旧派に潰されては入口が閉ざされる。
そして、東京都連に推薦依頼をして7/7の立候補会見となる。
完全一人旅状態で対立候補は不明。ただし、蓮舫氏が参議院優先で不出馬なのは、この時点で明らかになっていた(これも天が味方した例だろう)。
都連自民党に推薦依頼を出しておきながら記者会見は「東京大改革」をぶち上げる。既に「戦闘状態に入れり」になっている。都連が誰を担ぎ出すか決まってもいないのに。
そして、蜂の巣をつついたような状態の自民党東京都連を尻目に7月11日の参議院選挙投票終了の「8時チョウドにぃ」に推薦依頼を取り下げる。
この当たりでネットの機能が発揮される。実はこの時点で7/13日に
猪瀬直樹氏のロングインタビュー(本人が書くのでは無くインタビューに応えるのがミソ)が7/13の告示日前日に公開される情報は得ていたと思う。
ネットで謎解きを行って情報発信
この時点で内田茂氏はwikiすら無かった「闇のドン」であったが、猪瀬直樹氏の情報から小池百合子氏が「東京大改革」で戦う相手が見えてきた。ネットでの情報も点と点を線で結び付けた。
しかし、最初からガチンコではやらない。まずは応援団を形成するために街頭演説では「緑の印」を持ってくるように訴える。これは一体感を醸す演出なのだが、ゴーヤやブロッコリーってユーモアも忘れない。
そしてセンテンス・スプリング(文春)砲炸裂である。選挙に立候補しているのに「事実無根、告訴した」では通らない。説明責任を感じていないのだから。そもそも文春砲の元ネタは新潮が調べていたもの。ここでもネットを駆使して「上智大学某重大事件」と検索すれば都市伝説が検索できる。官僚出身の高橋洋一氏だって「大学でうわさは聞いた」と知っていることが何故、事前の身体検査で出なかったのか。この時点で鳥越俊太郎氏の選挙運動は投票までの消化試合と化してしまう。
一方、増田寛也氏陣営は小池百合子氏が「オリンピックの準備」と口にするだけで華が無いので得票を伸ばせない。極めつけは石原慎太郎氏が応援演説の中で小池百合子氏を「大年増の厚化粧女」と言ったこと。これで30万票は自民党を離れただろう。
勝って勢いがある時なら「ユーモア」で済むが、負けて青息吐息なら「苦し紛れの悪口」にしかならない。これには後日談があって、鳥越俊太郎氏がこのフレーズを街頭演説で使ったら応援演説の蓮舫氏がブチギレして「二度とそのような言葉を使わないでもらいたい」と怒鳴りつけ、鳥越俊太郎氏が謝ったって事件まで発生した。
やがて選挙戦終盤には自殺した樺山卓司都議の奥さんが街頭演説に応援演説に立ち、全貌が都民に明らかになっていく。鳥越俊太郎氏に傾斜していたマスコミも消化試合では数字が稼げず、「闇のドン」を扱うようになり、勝敗は投票を待たずに決していた。
小池百合子氏の経歴は「元防衛大臣」が多いが実績を上げたのは「環境大臣」の時だろう。どうも、シン・ゴジラの防衛大臣のモデルが小池百合子氏ではないかとの風評も選挙に影響したかもしれない。
ただ、女性初の防衛大臣、そして更迭(ま、政務次官との刺違えだが)の後「女子の本懐」を執筆している。
年齢的なこともあり、最後の戦場に選んだ東京都議会で「女子の本懐」を遂げてもらいたい。
余談:東京2020のホストとして
実は東京2020の直前に東京知事選挙が行われる。
当初、3年半で辞任すればオリンピックと重ならないと言っていたが、地方自治法では辞任した知事が再当選しても本人の残り任期のまっとうとなる。
法的には辞任の取り消し扱いになる。
今回の選挙は東京2020のホストとして誰が最も相応しいかも争点であったことを考えると、3年半で辞任では「女子の本懐」を遂げられない。
手法だけで言うと、
1)3年半後に議会が知事不信任案を可決して出直し選挙を行うことだが、これはテクニックに走りすぎだろう。
2)もう一つは対立候補が立候補せず、無投票で公示日に当選することだが、1300万人もいるとKYな奴が居るもので、これも事実上不可能だろう。
そして、東京都議選が来年にある。この時に当選した都議が考えることになる。そして、それに投票する都民も、考えておかなければならない。
「あの時、舛添をレームダックで残しておけば良かった」なんて4年後に言わないためにも。