JR北海道の正式名称は「北海道旅客鉄道」

北海道の鉄路は物流主体
 本日(2016/12/24)の北海道新聞の朝刊に興味深い記事が掲載されている。一本は北海道新聞社が数日前から「やりますでぇ!」と言っていたJR北海道(簡略表現を使いますが、実際の社名は「北海道旅客鉄道」。つまり、人間を運ぶ鉄道会社の話なのだが、私もここでは簡略表現を使います)の経営責任の所在記事。
そして、2面ほどめくると「飲み鉄」で鉄cyanに有名な六角精児さんの鉄路への思い。
 BSで六角精児さんの「飲み鉄」は時々放送されているのだけれど、ある意味「鉄路」が招いてくれた地域(訪問できた地域)を楽しみ、人との出会いを楽しむ番組になっている。
 鉄路が無ければ出会えなかった人々との出会い。そして、地域の人々の営みは、自分が出かけなければ解らないって番組の描き方。数日前にBSで放送されたのは鹿児島線界隈の世相でした。
 で、もう一方の記事は連載特集の関係者へのインタビューって感じですが、最大の「他人の褌で相撲取ってる」JR貨物にインタビューしていない。再度言いますが、北海道新聞が記事にしている「JR北海道」は「北海道旅客鉄道株式会社」のみなんですね。
 鉄路は社会インフラなんだが「JR北海道」の昨今の「維持困難な路線」の情報発信は「鉄路の下宿人」を自ら認めているのでしょう。
 で、もう一人の下宿人であるJR貨物に、なぜ北海道新聞社はインタビューしないのか。
 「そうなんですかぁ。知りませんでしたので記事にできませんでした」なんて言い訳は通用しない。強いていれば「国からの圧力が怖いので記事にしませんでした」ってことか。
 それでもマスコミかと言いたい。
 そもそも、今回の「維持困難な路線」に乗っているのはJR貨物の物流なんだが、これを高速道路を利用したトラック輸送や、海運のフェリ輸送に切り替えられるか。物流の量を考えると、旅客鉄道なんて切り口は些末なもので、北海道の物流をどうするのかって課題を前面に出すのがマスコミの使命だろう。「乗る人が少なくなった」なんて木を見て森を見ていない。
 北海道のロジスティック(兵站、物流)をどう構築、もしくは再構築するのかが今回の「JR北海道」の敵前逃亡的な「維持困難な路線」の裏にある問題だと決められないのか>北海道新聞社は。

新幹線が鉄路を人を運ぶ機能にした
 そもそも無理筋なんだ。鉄路が人を運ぶなんて発想は。
 人は車が運べば良いのです。人のニーズは千差万別で、きめ細かな輸送路を構築可能なバス路線が臨機応変に対応するのが良い。問題は国策としての物流で、そのための鉄路の有り方なんだ。
 鉄道発祥の地であるイギリスでは鉄路は物流と兵站(ロジスティック)の観点から検討され、海岸線を避けて内陸部に敷設されている。それは、当時の国際情勢から、海上から軍艦による艦砲射撃を受けて分断されては鉄路が国家の安全保障を担えないって発想で海岸線への敷設を避けている。
 明治の頃に全国に鉄道網を敷設する時に当時の陸軍は国防上の理由から海岸線への敷設に強く反対した。軍事物資の輸送に欠かせない鉄路が海岸線で寸断されることを恐れての発案だ。だが、当時の経済優先の政策から、平坦な海岸線を主に鉄路が敷設された。
 安全保障上の観点から鉄路が語られることはこの段階で無くなった。
 やがて1964年に開通した東海道新幹線に代表されるように、鉄路は「高速大量輸送」の旗印の元に旅客輸送の花形になった。名神高速道路が開通しても、新幹線は利用客を伸ばしたのはビジネス客が打ち合わせを終えて新幹線で缶ビール片手に帰宅するってニ−ズに合致したからだ。
 ここで、すっかり鉄路の機能が分かれてしまった。今でも新幹線は貨物を運んでいない。さらにサムソナイトを置く場所も無いことに象徴されているように、海外の観光客に対応する長期滞在旅行者の手荷物対応って問題を抱えている。ビジネス客のスーツケースくらいしか考慮してない「電車」の高速版が新幹線なのだ。
 その発想が、鉄路の物流機能を消してしまった。今でもJR貨物は各地で鉄路を借りながら全国網を維持できているのは、分割民営化が「旅客鉄道」に限られた政治の見切り発車に起因する。そして30年間放置された結果が今回の「北海道旅客鉄道」の敵前逃亡とも言える「維持困難な路線」の話だ。
 正確に「旅客輸送だけでは、独自維持困難」と、問題点を明確にすべきだろう。鉄路の維持だけの問題では無い。何故なら、JR貨物がまったく土俵に出てこないのだから。

争点は、トラックによる物流の是非
 問題が公共交通機関とは言え、国が株主の民間会社JR北海道の鉄路の問題だけではない。たとえば、現在JR貨物が運んでいる物量を全部トラック便に切り替えたらどうなるのか。CO2の増加とかの左がかったお花畑の話ではない。
 現在の道路網とトラックヤードが耐えられるのか、そして、過酷な労働を余儀なくされているトラック運転手の不足問題と発生する交通事故の観点まで広めて交通体系に占めるJR貨物が担っていた部分の代替が可能なのかの検証を北海道庁はやっているのか。
 JR貨物は一般的に一編成で24両の貨物を引く。満載ならV19C型コンテナー換算で5tコンテナー×48個の輸送が一編成で可能だ。これが、青函トンネルを一日平均30本走っている。これが無くなるとトラック換算で700台(10t換算)が代替で増えることになる。そのキャパシティが現在の道路網やトラック業界にあるだろうか。
 特に重視したいのが、そのトラックによって引き起こされる交通事故の問題だ。現在は占冠-十勝清水が高速道路で結ばれたが、その前は日勝峠を超えることになる。
 冬期間に仕事の関係で何回か日勝峠越をしたが、毎回、道路を踏み外したトラックがどこかの路肩から落ちているのを目にした。最悪のケースでは軽油に凍結防止剤を混入していない本州のトラックが軽油凍結でエンストして気温回復まで放置ってのもあった。
 旅客輸送はバスで代替できるが物流はトラック輸送で代替できるのか。
 その切り口が北海道新聞社に無いのが今回の記事を見て残念な感じを受けた。
 そもそも「人を運ぶ鉄路」って時代は50年前に東海道新幹線が開通した時に住み分けが始まった。「旅客鉄道」は新幹線のみで、他は「物流鉄道」として社会インフラとしての再定義を行うべきだった。何故か、分割民営化の時にもJR貨物は国民の目から(マスコミの目から)隠されて、やがて「道南いさりび鉄道」のようにJR貨物専用鉄道、で、時々人も運ぶ、の路線が増えてきている(東北新幹線が青森まで延びた時に問題を明らかにすべきだった)。
 北海道旅客鉄道の選択肢は限られている。利用者(旅客+JR貨物)に、損益分岐点を保つ費用を明示すべきだ。
 「バスになったら定期券が高くなるしぃ」と言われるのは、現在の定期券の割引率が高すぎてJR北海道の経営を圧迫している現状を理解していない。。
 損して経営するのではなく、いったいいくら「利用者から」収入を得られれば存続できるのかを明示すべきだ。その案を公表して、どうにかしてくれ「あと、知らねぇ」ならまだしも、てめえの食い扶持切り捨てる「維持困難な路線」は敵前逃亡の戦犯でしか無い。
 「おまいら金〇付いているのか」と怒鳴りつけたくもなるのだ。
2016.12.25加筆

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2016/12/25
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