電力の系統確認
なまじ大学での専門は今は学部も無いと言われる電気工学科なんで、懐中電灯(もちろんLED)を携帯しながら周辺の状況を把握に向かった。
途中で出会った若者は懐中電灯を持たないのかスマホの画面で地面を照らしながらコンビニを目指してる。なんせ暗い。近くのコンビニの7&11では前の日の台風で扉が吹っ飛んで、その対応に右往左往してる時の地震で店内には時間が4:00なのに満員状態。掴めるものは何でも買うて感じでポテトチップの袋を5個も買ってるシトが居たね。
ま、「コンビニ大変やなぁ」とその場を去たが、その後が大変だったようで、ある意味「その時買い占めておけば良かったのに」って感情はあった。ただ、我が家は数日の備蓄はありましたからパニック買いには至りませんでした。
後で店長に聞いたら「台風で入り口の扉が飛ばされて、ま、しょうがないの防犯のためにも24時間バイトを配置したら、この地震でしょう。踏んだり蹴ったりどついたり状態ですね」とのこと。ま、本音かな。
ラジオで震源地や被害の状況を聞きながら明るくなったので一人住まいの母親の所に状況確認で車で出かけます。走り始めて解ったのが、信号機が全て消えている(笑い)。
そうなんです、笑う以外無いのですよ、主要交差点の信号機が機能していない。僅か2km程の実家までの道ですが、主要幹線道路を横断するのは2か所。暗いので慎重を超えて通過車両が無くなるまで待っての横断です。
とりあえず母親を「救出」して同じ道を戻るのですが、車の通行量が少なかったのが幸いしました。その後の交通にはかなり苦労しました。
当日既に地域によっては電力の回復が始まっていたようですが、我が家の停電は復旧しません。ま、明るくなったのでとりあえず安心しましたが、情報入手にテレビが稼働しないので、ラジオだけが頼りでした。
札幌市は電力の大消費地なんで(ちなみに北海道の人口の半分は石狩平野に住んでいます)電力の復旧は段階的だろうなぁとは感じてましたけど、後志環状送電網の配下なので復旧は早いと思っていたら、ラジオの情報では厚真火力が落ちたとか。
これは札幌の西区への送電の大動脈が切れたわけだ。泊の原子力発電とそれを平準化する京極の揚水発電、それをコントロールする後志環状送電網の配下にある我が家では泊原発への送電が最優先なので送電が復旧するのには時間がかかるなぁと直感しました。逆に個別系統な北方面の厚別区とか清田区では電力の復旧が早いだろうなぁと思いました。
覚悟を決めて、当日(9/6)は夜間対応を考えます。まずは食料ですが、これは備蓄があるとは言え、冷蔵庫と冷凍庫は停電で動かない。ま、冷蔵庫には水も有るのでしょうがないけど、冷凍庫は開閉禁止にしました。再度、通電があるまでどれくらいとけるのか解らないのですが、持久戦です。
送電と発電分離の落とし穴
今回の北海道全域(国土の21%のブラックアウト)は大変やたねぇくらいにしか報道されてないが国土の脆弱性って視点で考えるととんでも無い大問題なのだ。
電気を供給するのは電力会社の責任。そこに国が口を挟むのは民間企業への介入として限界がある。もっとも、この制度を作ったのは東北電力に就任した白洲次郎氏なんだが、これは今回裏目に出たな。
高橋はるみ北海道知事が「ほくでんの責任は重い」と会見したのに比べて世耕通産大臣は「監督官庁として申し訳ない」と頭を下げた。世耕さんの人間性が出た場面だったなぁ。さぞかし悔しさがあったのだろうと後から会見を見て感じた。
事故原因は委員会を組織して報告書を取りまとめるようだが、大きく2つの観点が必要だろう。もっとも、「片手落ち」の報告書になる予感はあるが。
1)最初はマスコミ受けしそうな「厚真火力に頼り切っていた」って問題。
電力の供給ってのは発電所で発電するから出来るのだが、その元になるエネルギーは多様。北海道でも水力、火力(石炭、重油、LNG(は、これからだが))、原子(泊原発は待機中)などが存在する。
この水力の中には京極の揚水発電所のように夜間の余剰電力(原発を想定してるんだが)を下の池から上の池に発電機をモータに変えて水を持ち上げておいて、ピーク電力に対応して上から下へ水力発電を行う方式も含まれる。ま「京極が稼働したので電力は賄える」って新聞報道に接して「タコが自分の足食ってるだけじゃん!」と思ったシトは昔の「電気工学」を履修した一部のシトだけだろうなぁ。その指摘を受けたのか北海道新聞社は翌日の紙面の1面で「揚水発電」の仕組みなんて記事を載せている(苦笑)。
夜間の比較的電力需要が少ない時に発電所を集中させるのは、ある意味で効率的な運用だろう。そこが墜ちたらって発想は危機管理の範疇になる(ま、現実に起きたのだけれど)。そこを事故原因として追究するのは酷だと思う。それよりも危機管理が働らかなかった事を掘り下げるべきだろう。
往々にして事故調査は「犯人探し」に陥るのだが、それでは「再発防止策」は構築できない。FBで「福島第一原発の事故原因」とか標榜して論を述べていたシトが居たけど、事故調査の最大の目的は「再発防止」であって「犯人探し」では無い。
損害賠償を求めるなら裁判で犯人(正確な表現では「当事者」)を見つければ良いのだろうけど、決して再発防止には寄与しない。ま、「科捜研の女」あたりが世論を形成してるんだろうけど。沢口靖子!反省しいやぁ(笑い)。
2)送電網の適正化
現在の「ほくでん」の送電予測は外れっぱなしだ。泊原発の電気を石狩湾工業地帯に運ぶために西野変電所を作って、あわせて揚水発電(京極)で平準化をはかる後志環状網が完成したが不発に終わる。
笑い話なのが平取町の二風谷ダムで、こちらは苫小牧東工業団地に電力供給するために作ったのだが、開店休業の苫小牧東工業団地では空振り。
では、作った電気を使ってくれるのは何処か、と言えば民生需要が主になる。つまり道央圏だ。だから、石狩湾新港にLNG発電所を作ることになる。がぁ、京極に作った揚水発電所はどうなるんだぁ。
実は「ほくでん」はここ数十年で1000億円単位で設備投資をしてきた。先の京極揚水発電所もそうだし石狩湾新港LNG発電所もそうだ。企業体力としてはかなり無理したのだが、結果は万里の長城(無駄)だった。
そして、昨今の「送電と発電の分離論」である。「ほくでん」は発電事業で生き残っては行けないって危機感が送電事業主体の企業体質に舵を切った役員も居るって感じかなぁ。あそこの役員は誰も舵取りの当事者って意識してないからなぁ(ピー!いれて無かったことにするけど)
送電事業者としては、いいかげんな発電事業者の相手をしなければならないので送電網の確保が最優先になる。昼間しか発電しないソーラ事業者とか風次第って風来坊のウインドファン事業者の相手をするには「発電所は墜ちる」って前提で送電設備を運営しなければならない。その設定が「発電がこけたら送電切るかんね」って制御方法だ。言い方を変えると「場末のスナックのチーママの作った電気の面倒を見なければならんかぃ!」って感じだろう。(例え話が池上を越えするって!)
これは別に悪い事では無い。需要に耐えられない発電量なら送電網が焼き切れる前に守るために切らざるを得ない。
問題はその切り方だろう。大胆に切って送電線を守るのは解るが、発電所の再稼働も切ってしまった。定期点検で窯に火が入っていない火力発電所を再稼働するには膨大な時間がかかる(ま、風呂を焚くようなもんだ)。しかも、自動制御が行われているのでその発電所の稼働には電力制御を必要とする。実際は自分で発電した電気で自動制御できる仕組みだが、窯に火を入れるのにマッチ擦ってなんてものでは無いのは解るだろう。その電力も切ってしまった。本来「ほくでん」以外の電力を想定していたが故の暴挙だった。実際には発電事業者として送電網には「ほくでん」しか居なかった。特に夜間だったのでソーラはお休み状態。
この第二の視点が委員会から報告されるだろうか?
送電と発電の分離に潜む懸念こそが明らかにされなければならないのだが。
ちなみに文中に「送電が焼き切れる」と書いてあるが、ここが解るには交流送電の仕組みの理解が必要で残念ながら昔の「電気工学」を履修したシトしか理解できないだろうから割愛する。北海道新聞社は調べて納得して欲しい。
事故報告書が楽しみだ。何故なら「再発防止」に力点を置くのか「犯人探し(ま、「ほくでん」しか無いだろう)に力点を置くのか、それを仕切るのが世耕さんの力量だなぁ。あ、高橋はるみ知事には何も期待してません(笑い)。