胆振東部地震>国土の21%が停電した

停電の原因は今後の調査
 発電出来なくなって停電したとマスコミは書いているが、実は「送電出来なくて」停電したのが技術的な要因なのだ。電気は家庭のコンセントにプラグを差し込めば得られるが大局的(用語用法が違うのは承知)には発電所から送電され変電所で分岐されて最後は柱上変圧器で各家庭に到達する。
 停電の回復に「隣は電気来ているのにぃ」って瞬間を9/7の夕方から夜間に感じた人は多いだろう。これは「発電」の復活が根底にあるのだけれど、個々の家庭が属する「送電区域」の違いに起因する。
 武士の情けで「停電」と書いたが、実際は日本国土の21%がブラックアウトして、それが我が家で言えば36時間も続いたのだ。送電網が崩壊した(電線が切れた)って事では無いのに乾電池だけで36時間を過ごした身としては、翌日の20時過ぎに通電(配電)された時に「バンザァイ」と叫んだのは心情的なものなんだが、ま、体験したシトは右も左も無く「万歳」だったと思う。
 近くのマンションの5階まで公園の給水所から水を運び上げたシトには「おわた!」って安堵感があっただろう。なんせ「人間は一日2リットルの水が必要って言うけど、我が家のトイレは毎回10リットルは使いますから」って感じだった。もっと笑えるのは停電の瞬間に仕組みを知っている一部の幹部が風呂桶に水を溜めたことで、知らない住民は「教えてくれればぁ」と言っていたが、ま、今後マンションの理事会で揉めるかもしれない。
 誤解や歪曲を恐れずに言うが、今回の胆振東部地震は地震に特有の震源地の被害に留まらず北海道全域の広域なブラックアウトを引き起こした。ある意味で停電による「被災地」は北海道全域でそれを地震による「被災」にカウントしない役所の対応が高橋はるみ知事の「ほくでんの責任は大きい」って発言だろう。ま、発電事業の所轄官庁である通産省出身の官僚だからなぁ。被災地は北海道全域。つまり日本国土の21%の面積に及ぶのだ。その広大な国土の知事として他人事のような対応はいかがなものか。
 「マーフィーの法則」って本があるが、ここに「非常時に落ち着いている幹部は、既に誰に責任を押し付けるか解ってる奴だ」ってのがある。まさに、そんな感じだなぁ。
 で、停電による被災者(これは地震の被災者にカウントされない風潮が有るなぁ)として当日の当時間(札幌市西区)を再現すると、地震発生が9/6 3:06で当然寝ていた。
 激しい揺れを感じたが地震の揺れの恐怖は「ゆっさ、ゆっさ」な感じで東日本大震災の時は勤務していた会社のビルの5階(西区と中央区の境)に居たので東日本大震災の揺れは建物の損傷が多いだろうと感じた。
 今回の胆振東部地震ではメチャクチャにガタガタ揺れたけど「ゆっさ、ゆっさ」が感じられなかったので、取り合えず枕もとの懐中電灯(LED)を掴んで震源地を知りたくてベッドから起きてパソコンの電源を入れた。ま、アマチュア無線の懐かしい言葉で言えば「ミッターに火を入れる」かな。だが、反応しない。停電なのだと認識するには少し時間がかかった。
 その間に余震で揺れるのだが、ま、震度は4を超えてない。
 震源地が安平町(その後の解析で厚真町)なのはラジオで知ったが、ラジオを聴取可能にするために使い終わった乾電池から起電力が残っている電池を選択するために暗い中で電池チェッカーを使った。我が家では本当に駄目な乾電池以外はストックしているのが良かった。
とりあえず停電対策としてラジオの聴取と懐中電灯の使用を構築したのが4:00頃。
 さて、どうしたら最善なんかなぁと町内の状況を知りたくて外にでて情報収集をする。

電力の系統確認
 なまじ大学での専門は今は学部も無いと言われる電気工学科なんで、懐中電灯(もちろんLED)を携帯しながら周辺の状況を把握に向かった。
 途中で出会った若者は懐中電灯を持たないのかスマホの画面で地面を照らしながらコンビニを目指してる。なんせ暗い。近くのコンビニの7&11では前の日の台風で扉が吹っ飛んで、その対応に右往左往してる時の地震で店内には時間が4:00なのに満員状態。掴めるものは何でも買うて感じでポテトチップの袋を5個も買ってるシトが居たね。
 ま、「コンビニ大変やなぁ」とその場を去たが、その後が大変だったようで、ある意味「その時買い占めておけば良かったのに」って感情はあった。ただ、我が家は数日の備蓄はありましたからパニック買いには至りませんでした。
 後で店長に聞いたら「台風で入り口の扉が飛ばされて、ま、しょうがないの防犯のためにも24時間バイトを配置したら、この地震でしょう。踏んだり蹴ったりどついたり状態ですね」とのこと。ま、本音かな。
 ラジオで震源地や被害の状況を聞きながら明るくなったので一人住まいの母親の所に状況確認で車で出かけます。走り始めて解ったのが、信号機が全て消えている(笑い)。
そうなんです、笑う以外無いのですよ、主要交差点の信号機が機能していない。僅か2km程の実家までの道ですが、主要幹線道路を横断するのは2か所。暗いので慎重を超えて通過車両が無くなるまで待っての横断です。
とりあえず母親を「救出」して同じ道を戻るのですが、車の通行量が少なかったのが幸いしました。その後の交通にはかなり苦労しました。
 当日既に地域によっては電力の回復が始まっていたようですが、我が家の停電は復旧しません。ま、明るくなったのでとりあえず安心しましたが、情報入手にテレビが稼働しないので、ラジオだけが頼りでした。
 札幌市は電力の大消費地なんで(ちなみに北海道の人口の半分は石狩平野に住んでいます)電力の復旧は段階的だろうなぁとは感じてましたけど、後志環状送電網の配下なので復旧は早いと思っていたら、ラジオの情報では厚真火力が落ちたとか。
 これは札幌の西区への送電の大動脈が切れたわけだ。泊の原子力発電とそれを平準化する京極の揚水発電、それをコントロールする後志環状送電網の配下にある我が家では泊原発への送電が最優先なので送電が復旧するのには時間がかかるなぁと直感しました。逆に個別系統な北方面の厚別区とか清田区では電力の復旧が早いだろうなぁと思いました。
 覚悟を決めて、当日(9/6)は夜間対応を考えます。まずは食料ですが、これは備蓄があるとは言え、冷蔵庫と冷凍庫は停電で動かない。ま、冷蔵庫には水も有るのでしょうがないけど、冷凍庫は開閉禁止にしました。再度、通電があるまでどれくらいとけるのか解らないのですが、持久戦です。

送電と発電分離の落とし穴
 今回の北海道全域(国土の21%のブラックアウト)は大変やたねぇくらいにしか報道されてないが国土の脆弱性って視点で考えるととんでも無い大問題なのだ。
 電気を供給するのは電力会社の責任。そこに国が口を挟むのは民間企業への介入として限界がある。もっとも、この制度を作ったのは東北電力に就任した白洲次郎氏なんだが、これは今回裏目に出たな。
 高橋はるみ北海道知事が「ほくでんの責任は重い」と会見したのに比べて世耕通産大臣は「監督官庁として申し訳ない」と頭を下げた。世耕さんの人間性が出た場面だったなぁ。さぞかし悔しさがあったのだろうと後から会見を見て感じた。
 事故原因は委員会を組織して報告書を取りまとめるようだが、大きく2つの観点が必要だろう。もっとも、「片手落ち」の報告書になる予感はあるが。
 1)最初はマスコミ受けしそうな「厚真火力に頼り切っていた」って問題。
 電力の供給ってのは発電所で発電するから出来るのだが、その元になるエネルギーは多様。北海道でも水力、火力(石炭、重油、LNG(は、これからだが))、原子(泊原発は待機中)などが存在する。
この水力の中には京極の揚水発電所のように夜間の余剰電力(原発を想定してるんだが)を下の池から上の池に発電機をモータに変えて水を持ち上げておいて、ピーク電力に対応して上から下へ水力発電を行う方式も含まれる。ま「京極が稼働したので電力は賄える」って新聞報道に接して「タコが自分の足食ってるだけじゃん!」と思ったシトは昔の「電気工学」を履修した一部のシトだけだろうなぁ。その指摘を受けたのか北海道新聞社は翌日の紙面の1面で「揚水発電」の仕組みなんて記事を載せている(苦笑)。
 夜間の比較的電力需要が少ない時に発電所を集中させるのは、ある意味で効率的な運用だろう。そこが墜ちたらって発想は危機管理の範疇になる(ま、現実に起きたのだけれど)。そこを事故原因として追究するのは酷だと思う。それよりも危機管理が働らかなかった事を掘り下げるべきだろう。
往々にして事故調査は「犯人探し」に陥るのだが、それでは「再発防止策」は構築できない。FBで「福島第一原発の事故原因」とか標榜して論を述べていたシトが居たけど、事故調査の最大の目的は「再発防止」であって「犯人探し」では無い。
 損害賠償を求めるなら裁判で犯人(正確な表現では「当事者」)を見つければ良いのだろうけど、決して再発防止には寄与しない。ま、「科捜研の女」あたりが世論を形成してるんだろうけど。沢口靖子!反省しいやぁ(笑い)。
 2)送電網の適正化
 現在の「ほくでん」の送電予測は外れっぱなしだ。泊原発の電気を石狩湾工業地帯に運ぶために西野変電所を作って、あわせて揚水発電(京極)で平準化をはかる後志環状網が完成したが不発に終わる。
 笑い話なのが平取町の二風谷ダムで、こちらは苫小牧東工業団地に電力供給するために作ったのだが、開店休業の苫小牧東工業団地では空振り。
 では、作った電気を使ってくれるのは何処か、と言えば民生需要が主になる。つまり道央圏だ。だから、石狩湾新港にLNG発電所を作ることになる。がぁ、京極に作った揚水発電所はどうなるんだぁ。
 実は「ほくでん」はここ数十年で1000億円単位で設備投資をしてきた。先の京極揚水発電所もそうだし石狩湾新港LNG発電所もそうだ。企業体力としてはかなり無理したのだが、結果は万里の長城(無駄)だった。
 そして、昨今の「送電と発電の分離論」である。「ほくでん」は発電事業で生き残っては行けないって危機感が送電事業主体の企業体質に舵を切った役員も居るって感じかなぁ。あそこの役員は誰も舵取りの当事者って意識してないからなぁ(ピー!いれて無かったことにするけど)
 送電事業者としては、いいかげんな発電事業者の相手をしなければならないので送電網の確保が最優先になる。昼間しか発電しないソーラ事業者とか風次第って風来坊のウインドファン事業者の相手をするには「発電所は墜ちる」って前提で送電設備を運営しなければならない。その設定が「発電がこけたら送電切るかんね」って制御方法だ。言い方を変えると「場末のスナックのチーママの作った電気の面倒を見なければならんかぃ!」って感じだろう。(例え話が池上を越えするって!)
これは別に悪い事では無い。需要に耐えられない発電量なら送電網が焼き切れる前に守るために切らざるを得ない。
問題はその切り方だろう。大胆に切って送電線を守るのは解るが、発電所の再稼働も切ってしまった。定期点検で窯に火が入っていない火力発電所を再稼働するには膨大な時間がかかる(ま、風呂を焚くようなもんだ)。しかも、自動制御が行われているのでその発電所の稼働には電力制御を必要とする。実際は自分で発電した電気で自動制御できる仕組みだが、窯に火を入れるのにマッチ擦ってなんてものでは無いのは解るだろう。その電力も切ってしまった。本来「ほくでん」以外の電力を想定していたが故の暴挙だった。実際には発電事業者として送電網には「ほくでん」しか居なかった。特に夜間だったのでソーラはお休み状態。
 この第二の視点が委員会から報告されるだろうか?
 送電と発電の分離に潜む懸念こそが明らかにされなければならないのだが。
 ちなみに文中に「送電が焼き切れる」と書いてあるが、ここが解るには交流送電の仕組みの理解が必要で残念ながら昔の「電気工学」を履修したシトしか理解できないだろうから割愛する。北海道新聞社は調べて納得して欲しい。
 事故報告書が楽しみだ。何故なら「再発防止」に力点を置くのか「犯人探し(ま、「ほくでん」しか無いだろう)に力点を置くのか、それを仕切るのが世耕さんの力量だなぁ。あ、高橋はるみ知事には何も期待してません(笑い)。

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