コリオリの力(ちから)と地球の話

我々の理解力は2次元化してる
 「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだぁ!」てのが湾岸警察を描いた織田裕二氏のセリフだが、現場を伝えるために情報技術が発達しても、所詮、画面で動画を見せるって程度の2次元でしか伝えられない。
 そもそも、半世紀以上に渡って情報はテレビやパソコンやタブレットの「画面」で伝達されていて、その手法は縦と横しか無い2次元の世界だ。人間の持つ想像力に頼って遠近法で3次元化してのが現状だ。
 教育の現場(ま、大学しか経験無いが)では古くは「黒板」最近では「プロジェクター」が利用されるが、これも「映し出す」って機能で2次元の道具だ。経験を積んだら2次元から3次元を想定して理解できるが、初めて教えられる学生に壁に映った映像は理解を三次元に理解できるってのは学生を混乱させる。教育の現場にIT導入とか叫んでいるが分子や原子の構造を立体視できない今の技術こそが「受験上手」を生んでいる教育の基本的欠陥なのだと理解している人は少ない。
 原子の構造は3次元のモーションで表現して教えないと教科書に書かれた「図示」の理解力に長けた生徒が試験で好成績を執る今の教育の欠陥は直せない。
 そもそもグーテンベルグが印刷って技術を実用化してから人類は書物による技術の伝承が可能になった。それが1500年も続いて最新の機器でも取扱説明書でも少ないけれど「図示」って技術で現場を表現してる。がぁ、現場を知らない人間に現場の2次元の図示は理解が難しい。それを理解していないで「知っているシトから知らないシト」への伝達手段がマニュアルなのだが、知らないシトには理解できない事が多発する。ま、このあたりが教育の欠陥なのだが、そんな意識が無い「教員」があいもかわらず「教科書(2次元)」の図を元に教育を行ている。
 これで良いのかって感じる層が「現場体験」ってことを行うのだが、所詮教室で2次元の図示で理解できる層と理解できずに落ちこぼれてしまう層についての議論はなされていない。人間の感性として2次元で3次元を表記する限界を踏まえて無い教育が今の「図示を理解できないと落ちこぼれ」を生む教育の根本的欠陥なのだが、それを理解している教育者は少ない。何故なら、学業教育は「教室」で行われるからだ。教室に発電機を持ち込んで電力の構造を講義することは出来ない。その同じ教室に老人を持ち込んで老人介護の講義も出来ない。だが「事件は現場で起きてるんだぁ」(笑い)
 つまり、教育は仮想空間である2次元を教える場で、教育を受ける学生は2次元で教えられながら3次元を想像する能力を強いられる。見せられたものを正直に理解する奴(優等生かぁ)だけが教育によって育って行く。他は落ちこぼれになる。
 何故それが疑問視されないかと言うと、ここ50年のテレビ文化も所詮、情報は2次元でしか伝わらないって結果だろう。一時期3Dテレビなんて言われたが所詮画面に映し出される映像であって2次元の世界が今の伝達の限界だろう、て、画面でこの書き込みを見ているシトにも言えるのだけれど。
 ま、その文化論は置いといて、地球と気象の話を進めよう(前置きが長いって!)

地球は自転している球体
 今回のテーマは、前回の気象の理解の入り口としての「雲」に続いて低気圧、高気圧と天気図なのだが、その前に低気圧と高気圧について書いてみる。
 中学校の理科程度の試験では「低気圧は1013hPaよりも気圧が低い状態」なんてのに〇×で答えさせておけば良いのだが、天気図を読むためには低気圧(まわりより気圧が低い場所)と高気圧(まわりよりも気圧が高い場所)が今後、どのように動く(移動する)かを読み取るのが大切で、それによって数時間後の自分の場所の天気を予測することができる。あくまで、予測であって的中では無い。で、自分の居る位置が低気圧や高気圧から見てどの方向にあるのかが大切になる。
 まず、答えを書いておこう。低気圧は反時計回りに回る空気の渦で高気圧は時計回りに回る空気の渦だ。何故、そうなるのかを知らなくても良いが、何故時計回りや反時計回りになるのかに疑問を持ったら、それは「理系頭」の素養がある(受験には求められないかも)。
 で、先の長すぎる前振りに戻るのだが、とあるテレビ番組で北朝鮮の核ミサイルがアメリカの首都ワシントンを目指して飛ぶときに日本は打ち落とすことができるかって議論を行っていた。使っていたのがメルカトル図法の地図で、たしかに北朝鮮とアメリカの首都ワシントンを「直線で」結ぶと日本の上空を通過する。
 地球が球体であることを忘れて地図に線を引けば(それも、ご丁寧に立体視したような放物線である)北朝鮮から東にミサイルを撃てばワシントンに到達するだろう。しかし、球体の最短距離を考えれば北朝鮮から北に向けて北極経由でミサイルを撃つのが常識であり合理的だ。いわゆる「大圏コース」である。国際線の旅客機もこの「大圏コース」を飛ぶ。
 だから、アメリカ出張の時に新千歳空港から成田空港まで飛んで、再度成田空港からのデルタ航空で新千歳空港の上空を通過してオレゴン州のポートランド空港まで飛ばされた経験がある。帰りは赤道近辺の季節風を利用したハワイ上空経由だったが。
 それくらい2次元社会が浸透してしまった現状を説明したくで先の長い前置きになったことを理解してもらいたい。
 さて、何故に低気圧は反時計回りで、高気圧は時計回りなのか。これは地球が自転する球体であることに起因している。これを説明しているのがコリオリの力(力)で、目に見える展示が「フーコーの振り子」だ。
 その原理を図示(2次元だって!)してみよう。

下手な図示で申し訳ないのだが、この図に至る経緯から説明しておこう。地球は球体である。つまり全ての事象は3次元で起きる。ところが、2次元化するから先に書いたような北朝鮮からワシントンへの誤りが発生する。
 地球をとりあえず北極を中心に考えてみよう。球体なんでどちらから見ても良いのだけれど回転軸の方向から地図で示されている北極を見下ろす視線から話を始めよう。
 この状態で地球は時計回りにまわっている。その表面にある大気も地球の自転の影響を受けながら上昇気流の中心に向かって流れていく。大気層にも運動エネルギーの慣性があるから、地球が回転してもその進む方向は回転する前の地球の方向となる。前に進んだら地球がまわっているので上昇気流の中心に向かって移動しているのだが中心(地理的中心)は進む風から見て左に移動しているので置いていかれてしまう。
 つまり中心に向かっているつもりが、実際は中心が移動するので中心の右側に向かう事になる。それでも上昇気流に吸い込まれるので結果として渦は反時計回りの渦になる。左に向かった中心を追うことになる。
 え、本当かぁ!って疑問を補うために、河川の水が河口からどちらに向かうかも調べておくと解りやすい。実は北半球では河川の水は河口から右に流れる。実際に衛星画像でも確認できるのだが、コリオリの力(ちから)が河川の流れが大洋に出る時にも影響する。福島第一原発の事故の時に河川から大洋に流れ出る放射性物質が流れ出たのは黒潮が北上する地域では無くて河口の南側(右側)だったのはあまり知られていないが。
 高気圧が時計回りなのも同じ原理による。今度は中心から外に向けて流れ出るので中心から放出された大気は右に曲がるので全体として渦は時計回りになる。
 これは、全て北半球での話で、南半球ではこれの逆になる。

コリオリの力(ちから)は三次元
 低気圧や高気圧が反時計回りや時計回りの渦である原理は解ったと思うが、その移動(進行方向)についてはまた別な話が必要になるが、それは次回に述べることにする。
 普段の生活では意識しない(ま、必要が無いとまで言っても良いかも)知識だが、池上彰風に「一言で言えば」って単純化できない様々な要因が集まって我々の目にする事になる。「一言で言えば」で理解していては本質を見誤る。だから、基本的な科学知識を持たないと「風評」で物事を判断してしまう「情報流民」になってしまう。昔、山本リンダが「噂を信じちゃいけないよ!」と唄ったのは現在のネット社会へのアンチテーゼだろう(笑い)。
 実は三次元で物事を考えるのはテレビ全盛時代に失われた感がある。パワーポイントに代表されるように講演会に行っても資料はプロジェクターで映し出される2次元が多い。立体視できるプレゼンのツールはいまだに存在しない。ま、一部WRMLの表現方法もあるが、手間が掛かり過ぎてプレゼンには利用が難しい。
 しかし、日常生活は3次元で推移していて、その実態の理解は3次元で、説明は簡略した2次元なんだとしっかり理解しておく必要がある。ま、そもそも天気図自体が2次元で、山登りを趣味とする人は高層天気図とか高度を加味した天気図も参照する必要があるのだが、地表(地面)の天気図だけを見て山登りをするひとは多い。
 友人に山登りが趣味な奴が居るが「雷注意報が出ていたんで、雲の様子を見ながら登っていたら、横から稲妻が来た」って体験をしたそうだ。気象予報は山まで考慮していない好例だろう。
 気象を理解するには頭を3次元に切り替えて地球を理解する必要がある。
 最近は無くなったが、日本列島を図示して雲が伸びて雨が降るって画像を、上空から表現した映像があったが、どう転んでも雲は日本列島の上空500kmあたりにあって、そこから雨が降っている。映像の視点は国際宇宙ステーション(ISS)よりも高い所にあるって表現だった。
 実は気象は大気現象だが、それは驚くほど薄い膜のようなものなんだってあたりを次回に書くことにしよう。

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2018/10/07
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