リケジョの話(頑固なリケジョの職場編)(最終章))


リケジョの話「最後の告白」
 前作の続編です。
「こんな何時ものような話してて「ありがとう」が伝わったかなぁ?」彼女(頑固なリケジョ)が言ってきた。
「君から「初恋」って言われた時に全部が伝わってるよ。君は俺の良く解らない行動を説明してくれるなぁ。さすが、リケジョだな」
「悪女だからですからねぇ」自分の誇りみたいに言ってくる。
「君は、一番、手に負えない悪女って何か知ってるか?」
「○○さんにとって、私でしょうね。迷惑かけてるのは知ってました。でも、立ち直れなかったんです私。だから頼って迷惑かけたのは知っています。でも、当時、○○さんしか信じられなかったんです。私。解りますよね」
「それも、含むかなぁ。中島みゆきさんの「悪女」って唄は知ってるよね。君は悪女になれないよ、本当は素直な子なんだ、過剰な悪女の演技が過ぎると俺は見てる。弱い悪女ってどんな感じか解る?」
「私が弱い悪女ですか?」
彼女(頑固なリケジョ)は私が何を伝えたいのか解らないように見つめて来た。
「うん、悪女になろうとしても無理なんだな。職場とか人との付き合いでは悪女を演じることができるけど、自分に向き合った時に自分は騙せない。そして、誰かにポロっと本音が出る。それが、君にとって俺だったんだ。本音で話せるから俺と居たら楽しかったんじゃ無いかな? 君の悪女は背伸びなんだよ。それも生き方だけど、その演技も一緒に卒業したらどうかなぁ。もう、中学や高校の時の「勉強できる子」じゃなくて、やっとだけど、一人前の社会人の女性になっているんだから」
「私には悪女は似合わないってことですか?」
「今までは、それで良かったのだと思う。たぶん、中学校か高校の受験生だった頃から回りにバリアーを張るために、悪女を演じざるを得なかったのかなぁ。それって、君が、俺の「高校の彼女とダブル」って言った時に感じたな。会社でも仕事とプライベートは分けてたじゃないか。それは、別な意味で俺に配慮してくれたのかなぁ。だって、普通なら社内で上司と部下の浮気事件になるよなぁ。お互いにそう思ってないし、そうならないけど、噂って別な所で起きるから。プライベートな関係を守っていたからかなぁ。たまたま、俺は「バリアーの中のシト」になれたかもしれないけど。そのバリアーはそろそろ自分から捨てないとな」
 しばらく、彼女(頑固なリケジョ)は私の話の意味を理解出来ないようだったが、自分なりに色々考えているようだった。
「悪女は私のバリアーなんですか」
「本気で君を好きじゃないと、そのバリアーを君が持っているのは解らない。俺は感じた」
「私、悪女だから○○さんが好きになってくれた思っていた。だって、奥さんもお子さんも居て、なんで私なのって理由が解らないですから」
「そんな疑問を持っていたのかぁ。君の悪女の演技は可愛くて好きだけど、そんなの、計算済み、は、言い過ぎだけど、もっと、俺は君を理解していたな。君は「初恋」ってコクッタけど、俺にもコクリタイ話がある。君の今の疑問への答えは、言わない方が良いのかなぁ」
「今日、聞かないと、聞くチャンスは無いですよね」
「そんな事は無いと思う。君が自分で気が付いたら、話す必要は無いし、もし聞きたければ何時でも話してあげる。ただ、俺、今コクッタラ、君に嫌われるかもなぁ」
「私の知らないことみたいですね。今日は私の卒業記念日ですから、教えてくれますか?」彼女(頑固なリケジョ)は「卒業記念日」って言葉を使った。あまり、前向きに未来の話をするタイプでは無かったので、意外だった。それくらい、トラウマから立ち直ったのが嬉しかった。彼女との3年間は彼女(頑固なリケジョ)には徐々にだけど、立ち直るのに必要な期間だったんだと感じた。
 
 寿司屋の女将さんが熱いお茶を運んできて、少し、会話に切れ間ができた。彼女はお茶を手にしながら、話の続きを待っているようだった。私は彼女(頑固なリケジョ)に自分が持っている最後のカードを見せたくは無かった。ある意味でかなり基本的な話で、それを彼女(頑固なリケジョ)に開示したら、あの「大竹しのぶ」さんの「男女七人夏物語」の時の口調で「馬っ鹿ぁ(ばっかぁ)、みたい!」と言われるかなと思っていて、それが怖いなとも思っていた。何かを否定されるようで。

リケジョの話(職場編)「魔女のキキ」
「魔女の宅急便って映画知っている?」
「あ、○○さんに誘われて何回か映画館で映画見ているうちに、映画が好きになって、映画館で見られない映画はDVDを借りて結構見ました、宮崎駿さんの作品も中にありました。「魔女の宅急便」は最初、佐川急便の宣伝かと思ったけど、何回か見て泣きました。あ、これって、私かもって感じて」
「そっかぁ。新作を映画館で見るのが映画通なんだけど、最近、君を映画に誘わなかったからなぁ、一緒に行く相手が居ないとなかなか映画館には行けないよなぁ。でもレンタルDVDは新作でも公開から半年くらいで見る事が出来るよな。
俺にとって君は「魔女の宅急便」の魔女のキキなんだ」
「え! 何時からですか? 私、その年齢に戻れない思って見ましたけど」
「俺の前で「初恋」って言ったよな、君は俺の前では札幌に出て来た時に戻っていたんだ。人生はリセットできないけど、再チャレンジはできる。君は自分で気が付かないけど、すごく素直だった時期に戻ったんだ。それは、チャレンジする心を取り戻したってこと。北海道大学に合格して札幌で一人暮らしを始めて、色々な事に出会って成長していく。俺は魔女のキキが君だと思い込んだ。だから、3年もの間、心配だけど、自分で気付いて成長して欲しいと見守っていたのかも。積極的に俺が手を出したらすがってくるかもと思った事はあったけど、それを俺はキキには出来なかった。映画になる前に原作を読んでいたから、ま、札幌が都会かどうか知らないけど、そこに単身で出て来る女の子って俺が北見の大学で単身で寮に入った感覚よりももっと大胆で相当な頑張りと言うか覚悟があるんだろうなと原作を読んだ時にキキに感じていた。そんな女の子の頑張りに出会ったら支えてあげたいなと思っていたんだ。
 実は、東京のホテルで、ベッドで一緒になって君の寝顔を見た時に、ここに魔女のキキが居るって思った。あれが無ければ、君を魔女のキキとは気付かなかった。あ、俺ってロリコンじゃないよ、勘違いしないと思うけど。それが、君が疑問に思っている俺の「好き」って意味なんだ。俺の事を軽蔑するかなぁ。前に「人間として付き合っている」ってコクッタ時に伝わらなかった気がしてるけど」
魔女の宅急便の裏話はここ
「私って、○○さんには魔女のキキだったんですか?」
「そう、悪女じゃ無くて、魔女。それも成長途上の未熟な魔女」
「私にとってどっちが良いのかなぁ?」
「俺は、魔女のキキとは恋愛しない」
「あ、そういう事ですか。もっと、前に知っておけば良かったのかも。でも、魔女のキキも卒業しますよ。私」彼女(頑固なリケジョ)は笑いながら不満の目を向けて来た。そして「そうだったんですかぁ」と言いながら、しばらく遠くを見るようにして考えているようだった、そして、また涙を流し始めた。今度は何時もと違う前を見据えた涙だった。泣くと言うより何かを知った涙だった。
「最後じゃないって言って10分でまた泣くかぁ」
「だって、私、今、失恋したんですよね。○○さんに」寿司屋のオシボリを流れる涙に当てながら彼女(頑固なリケジョ)は泣きだした。
「私、また恋愛できる人生には戻れないと思っていた。でも、少しづつだけど立ち直れたかなと思った。それは○○さんを恋愛の対象に出来るかなぁって考えていたから。でも無理ですよね。妻帯者だから。でも、最近感じているんです、妻帯者でも良いじゃないって割り切ってる自分。自分が好きになればそれが恋愛って感覚になれたんです。また、迷惑かけますよね。でも、そこまで強く成れたのは○○さんのおかげかなぁ。でも第一幕は失恋かぁ」
「何が失恋か解らないけど、俺は君を失恋させたって思ってないぞ。最近、ちょっと気になってたのは俺を恋愛の対象に考えてるだろう。それは無理だって解るよね、俺って妻帯者なのは事実だし。ま、君がそう思うのなら人生で最大で最高の失恋だ。それを糧にして生きられるだけ君は大人になっているはずだ。俺は、恋愛しないと言ったけど君を「愛してる」、それは恋愛より上の感情だぞ」
「私に対してですか?」
「君が、もすこし大人になったら解るさ。ここは泣く場面じゃないし」
「私、泣いて感謝してるんです。「愛してる」って初めて言ってくれた。その言葉を何年も待っていたんです」
「それは、君と違う感覚かもしれないけど、君が「好き」って言ってくれたお礼かな」
「そやって、はぐらかすしぃ。でも、私、失恋しても再チャレンジするくらい強くなったんですよ。覚悟しておいてください」
涙を拭きながら何処まで本気なのか、しっかり私を見ながら彼女(頑固なリケジョ)は言った。
 
 実は「魔女の宅急便」は彼女(頑固なリケジョ)と付き合い(は、違うけど)始めた頃には公開されてなかった、原作は読んでいたが、映画になったのは付き合いが長かったからかもしれない。それくらい3年間は長かった。
 彼女(頑固なリケジョ)を映画好きにしたのは私だけど、映画から学んだ彼女の感覚がスルドイので、お互い「魔女のキキ」のキーワードで会話がきた。
 私は、何時の頃から彼女(頑固なリケジョ)を「魔女のキキ」と考えると全ての自分の行動が説明が出来ることに気が付いていた。彼女(頑固なリケジョ)にそれを伝えたいと思ったけど、それは彼女の立ち治り(彼氏の浮気のトラウマからの脱却)には関係ないと思って話した事は無かった。ただ、彼女が自分を「悪女」って定義するのは人生経験から解るけど、これからは魔女のキキになって欲しいと思っていた。表面の態度は演じれば良いけど彼女は基本的に素直な性格なのだから。
 
 昼休みが終わる時間だったんで、おあいそして出ようとすると彼女(頑固なリケジョ)が「私が払います」と言い出した。「それって、俺が男として格好わるいじゃないか」と言ったら「挑戦の第一ラウンドです」と笑いながら言って会計に向かって行った。
「俺って、寿司では落ちないぜ」
「最初はジャブです。これから私の人生が、新しい恋愛に向かうのか、新しい仕事に向かうのか解りませんけど、両立させたいと思っています。これからは○○さんは「彼氏」ですよ」
「だから、俺はキキとは恋愛しないって言ったろう」
「私、そのキキも卒業してみせます。私、失恋から学べるシトになっているのが不思議です。それも、教えてくれたのですね。本当にズルイ、恋人のように扱いながら、子ども扱いだったんですね」
「誤解するなよ。君を子ども扱いした事は無いぞ。大人に成って大人の人生を歩んでくれればって何時も思っていた。今日は君の卒業記念日だよな。卒業証書を書けるの俺だよな」
「卒業証書はいりません。全部、私の心の中にありますから」
「そっかぁ、あと、今夜の送別会で俺の事話さないで欲しいんだよね」
「「二人の秘密」を私が話すと思っているのですか?」
「いや、変な集団が何かを画策してるらしい」
「女忍者ですか?」
「ま、別な世界なんだから、後味悪い話も残したくないなぁ」
「私、まだ○○さんにはキキなんだ。そんな心配は無用ですよ。信じてくれてもいいのにぃ」
「君の酔った時の目は100万ボルトだからなぁ、何か余計な事を言うなよ」
「安心してください、私を大人に育てたのに、○○さんは心配なんですかぁ。私が爆弾発言なんて無いですから、安心してください」
 
 会社の入り口に戻った時に何気なかったのだけれど「2回も泣いたのに化粧が乱れてないのが、あの「ウォータ・フルーフ」って奴かぁ」と聞いたら「あの時の会話を覚えているんですね。うれしいです。今日は私、昼休み前に○○さんと食事するからと洗面所で顔を洗ってスッピン戻したんです。何となく、スッピンで話したら良いかなと思って。さすがですね、気が付いてました?」
「そなのかぁ。最後までスッピンを知ってるのは俺か?」
「ですね、ま、あまり特徴が無い顔ですから、気が付く人は少ないと思いますけど」
「なんで?」
「思い出したんです、スッピンで会えるシト、○○さんだけですね。今日は最後になるかもしれないからスッピンで会おうと、昼前に洗面所で化粧落としのクレンジングしてきました。でも外れましたね。午後には、また化粧しますけど」
「君も「口説きのテクニック」を身に着けたじゃないか、こんな些細な事が大切なんだぞ」
「また、メモですね。でも「ウオータプルーフの化粧」って言葉、私からしか聞いたことが無いのに、何故、覚えているのですか?」
「スッピンの君を感じていたからかなぁ、それを君も感じたんだろう」
「ですね、さて、職場の戻りますから、ある意味でリセットします」
「俺って、何処かに君を抱きしめるタイミングがあったのに、逃がしたのかなぁ」
「そんな気持ちは、無いくせぇにぃ。ここから一歩進んだら職場ですよ。私の家の電話は常に連絡待ちしてます」
彼女(頑固なリケジョ)は今まで見たことが無い最高の笑顔で言った。何かが吹っ切れて大空に旅立つ鳥のようだった。
彼女の、いや、二人の「初恋」が終わった、と言うか、仕切り直した瞬間だった。
 
 彼女(頑固なリケジョ)を傷付けないで送り出せるのは彼女の私との距離感が絶妙だったからだろう。それにしても3年間って彼女にとって長かっただろうなぁ。そこまでトラウマが消えるのに時間が必要だったんだ。
これから、どうやって付き合おうかなと思ったけど、冷却期間があって、彼女からアプローチが無ければ彼女は別な場所で幸せを掴んだのだろうから、それで良いかと思っていた。


リケジョの話(職場編)「涙の再会」
 その彼女(頑固なリケジョ)と3年程過ぎた頃に冬の夕方の大通公園で偶然出会った。
「あ!」と言ったら「あら、偶然ですね。でも、今日はお付き合いできないですよ。私、別な道に居るみたいですから」「そっかぁ、それも人生のすれ違いかぁ。どっちに行くの? 少し歩きながら話そうか」と言ったら「どっちに行くって言っても、俺もそっちに行くんだって言うでしょう。いいですよ、地下鉄駅まで。男と女って急接近もあるし、徐々に近づいてくるのもありますね。私たちって言って良いのかなぁ、私と○○さんって徐々に近づいて長かったけど、アッと言う間に離れましたね」「それも3年もの間だったから変な関係だったなぁ、お互い、あの当時と環境も違うからな。でも、あの当時の感覚は今でも覚えているよ」「それ大切にしてくれるのが「おとうさん」でしたよね。ありがとうございます。その後に沢山教えてくれましたよね。前のクイズ覚えています。私、今の旦那にも話してません。「二人だけの秘密」って大切なんだと教えてくれた。それを体験できた。楽しい時代だったのかも」
「楽しいかぁ、過去を「楽しい」て言えるのは、今が幸せだからかな」
「そうかも、でも、そこに導いてくれたのが「おとうさん」ですよ」
「そっかぁ、少しは良い事もしてるんだ、俺って。でも、それが君を苦しめているのは感じていたんだけど、どうにもならない関係だったからなぁ」
「私、今を大切にするタイプで、未来を考えるタイプじゃ無いんです。ただ、最近は思い出を大切にするタイプになりました。もし、あの時に私を抱いてくれたら私の人生はその時は、また男にすがってと悩んだかもしれないけど、それからのお付き合いを考えると、私には最高な人生を得ていたかもとも思っています。でも〇〇さんの人生を壊したでしょうね。
しょうがないのかなぁ、私、好きになってはイケナイ人を好きになったから。でも、「好き」じゃなくて「愛してる」って一回でも言って欲しかったんだけど、無理でしたよね。函館から帰った時、アパートまで送ってくれた後に○〇さんが、私を警戒して部屋に来てくれないのかなぁと思いながら車を見送ったら、テールランプが5回光ったのを見て、あ、私は○○さんを悩ませていると解った。でも、もう少し悪い女で居させて欲しいと思った。あの頃、まだ、私、立ち直ってなかったから」
「伝わったんだぁ。それが最後に退職する時には「仕留めてやる」だもんなぁ。回復して良かったなぁ。でも、会社を辞めても、悪女路線は演じていたんだ」
 
 急に彼女(頑固なリケジョ)は歩くのやめた。私は先に進んでしまって振り返ったら正面から向き合うような形になった。彼女は口を開けて驚いた表情だった。
「あ、旦那との事を知っているのですか?」
「この業界は狭いからね。噂は流れて来る。でも、それで君が幸せなら良かったじゃないか。おめでとう」
「それを、知っていて、私を嫌いにならないで、認めてくれるのですか」
「ああ、生き方は個性だからな。それに俺が知恵を付けたようなもんだから。妻帯者好きにしたのは俺だしなぁ。頑張った結果だから良いんじゃないか」
「あ、やっぱり知っているんだ。それでも私を嫌いにならないんですね。そうなんですかぁ、今日、会えて良かった。私、○○さんに、合わす顔が無いと思って過ごしていたから。違ったんですね、知っていたのですね。それでも嫌いにならないんですね。これ以上、話したら私、泣く。昔から私、泣き虫なんです。そこまで私の事を知っているなら、何故「何やってるんだ」と怒らないのですか」
「そうだなぁ、君が好きだからかな」
「全部知っているのに、私の生き方を認めてくれるのですね、本当に言葉じゃ無くて心で「ありがとう」を言える。あの「おとうさん」に抱きついて泣くって権利は今でも、ありですか」彼女は泣きながら言った。
「無いな、不幸だったら抱きついたら受け留めるけど、大きいか小さいか知らないけど今が幸福なら俺に抱きつく意味が無いだろう」
「私、本当に今、幸せなんでしょうか?」
「前に言ったよね。人生の主人公は自分しか居ないって。自分の生き方に素直な君で良いじゃないか」
「なんで、そんなに私の行動を許してくれるんですか? 私、○○さんにも悪い女だったと思っていました。自分の我がままを沢山ぶつけてましたよね」
夕方で暗くなって、たまたま地下鉄の駅への裏で人通りは少なかったけど、遠くから、なんだあの二人はとの視線は感じた。
「声を大きくするなよ。泣いてるの、まわりから見られてるし。それは俺が君を「好き」だからって前から何年も言い続けてるよね。俺って悪女好きなんだ。単純な話」
 
 彼女を見たらまだ涙が止まらない。公共の場で泣いたり抱きつかれたりしたら困ると思った。「あの、私たちって言ったら迷惑かもしれないけど、あの時には無かったけど、手を握って良いですか」と言われてた。
「握手じゃなくってかぁ。ああいいよ」と言ったら下げていた左手を両手で握って胸の前に持って行った。そして、その私の左手を自分の右頬にあてて目を閉じている。手が震えていた。閉じている目から流れている涙とその前の涙が彼女を顔を伝っていた。彼女のためにハンカチを出して涙を拭いた「何時でも用意周到なんですね。先を読むのは○○さんの口説きのテクニックですね。ハンカチ何時か帰しますから、もらって良いですか」と泣き笑いをした。「ハンカチなんかじゃないだろう。また、会えるよきっと! お互いが「好き」なら」と彼女の両頬を両手で挟みながら目を見て話して、そこで手を離した。キスしようかと思ったけど『人妻に手を出すような男になるな』って昔の大学時代に付き合っていた彼女の言葉を思い出してやめた。
「そうですね、また会うときには私、泣かないだけ大きく幸せになっています」
「もう、俺の前で泣くなよ。前に言ったろう俺って君の「応援団」しか出来ないんだから。応援団は選手に感動して泣くことはあっても、選手は勝って泣くんだ。もう少し頑張れば勝つ人生になるさ」
「〇〇さんが、時々、グランドに降りて来ることも、もう無くなりましたね」
彼女はお見通しだったんだろう、私はキスしないと読まれていたのかも。
彼女は「ありがとう」と言って背負向けて去っていった、ただ、背中を見せ歩きながら右手を上げて5回、手のひらを開いて合図してくれた。
それは「ア・イ・シ・テ・ル」の合図だった。どんな「愛」を彼女(頑固なリケジョ)が感じたのかは解らなかったけど、たぶん「愛してくれて感謝」ってサインなのだろうと受け留めた。
『二人だけの秘密かぁ』
 
 あの時の合図がショックだったんだろうなぁ。誤解している面もあったけど、彼女(頑固なリケジョ)はセカンドで恋愛するなんてのが出来ないプライドがあったのだろう。ま、私もセカンドを作る気は無かったけど。それでも3年間も付き合っいたのは彼女も私が「好き」だったからだろうなぁ(自分勝手な解釈だけど)。
『今度は俺が送る番かぁ、ま、それが一番良いのだろうなぁ』と人ごみに隠れていく彼女をずっと見ていた。見えなくなっても影を見ていた。
 そのすれ違いが最後だった。今、大きく幸せになったので再会のチャンスが無いのだろう
今は「魔女のキキ」はDVDの中にしか残って居ない。
 
リケジョの話(頑固なリケジョの職場編) 完

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2019/12/24
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