憶測を呼ぶ中国の反日デモ

反日デモを説明出来ない。
 中国の国内問題に騒ぎすぎだと思うが、基本的に外交特権が互いに認められる大使館や領事館を襲うのは国際法上問題がある。法人企業の設備を破壊するのは治安が守れないってことで進出外国企業は撤退を始める。
 これらの中国、国内で起きている暴動に抗議すると「日本が態度を改めないと沈静化しない」と木で鼻をくくったような返答。そもそも国内の治安悪化は国内問題として対処するのが普通の国だろう。それを、原因はそちらに有ると治安維持を放棄するような論理が国際社会で通用しないってことが中国には解らないのだろうか。
 日本だって30年程前は暴徒と化したデモが横行していた。70年代安保の頃の10.21国際反戦デーの時には線路のジャリを投石に使い電車が多数とまった。ちょうど高校の修学旅行で東京に居て、デモと言うより破壊工作を主眼とした行動を目にして、ヤクザの出入りと何処が違うのか唖然としたものだった。
 あの時の「反米デモ」に関してアメリカ大使館を直接ターゲットにすることは無かったし(連合赤軍の一部にはあったかもしれないが)アメリカから「デモを止めろ」との抗議も無かった。ま、アメリカは世界各国で憎まれてるのでいちいちデモに反応していられないって事情もあるのだろうが。
 その意味では日本は中国の反日デモに過剰反応であった。町村外相がわざわざ出かけていく話では無いだろう。逆に中国になめられてしまう。器物破損なんだから事務次官クラスの抗議と損害賠償請求の意思表示だけで十分であろう。何故、外相が出かけなければならないのか。このあたりが、日本の外務省の国際感覚の無さだ。自国の財産が傷付けられたのだがら在京の中国大使を呼びつけて厳重抗議を行えばよい。
 ワザと火種に油を注いで現小泉内閣を揺さぶり郵政民営化を阻止したい稚拙な戦略が見え隠れするのは、毎度の政治が魑魅魍魎の巣たる所以だろう。日本側からも糸を引いている集団が居るのは紛れもない事実だ。その利害と中国の利害が何処で落ち合って軟着陸するのか、今は見えないのだが。
 各国の反応は様々だが、総じて中国政府の対応に批判的な論調が目立つ。イギリスやバンコクでは中国が国内問題のガス抜きに日本を使っているとの説明だし、仕掛けた中国政府自身がしっぺ返しを食らうと警告している。

歴史教育の反動が招いた反日デモ
 ここの部分は確証がある訳ではないが、インタネの情報収集する限り見えてくる中国の関市教育の矛盾がある。中国の歴史教育は日本と違い、近代史を1年間かけて行う。近代中国の設立までのプロセスを別科目として学ぶのだ。そもそも古代においても教科書は「日本は不老不死の薬を求めた秦の始皇帝の部隊が治めた植民地から始まる」とか「韓国は中国の一地域が独立したもの」とかメチャクチャだ。
 近代史でも南京大虐殺(30万人と記載してる。当時の南京の人口は20万人)とか重慶猛爆撃とか日本がいかに中国人を虐待したかを連綿と教科書で述べている。
「歴史観」ってのは難しくて、民族自立の基本になり、日本が戦前天尊降臨に日本民族の始まりを求めたのと同じように、生物学的見知よりも民族学的見知から「始まり」を説く。そのため、自然発生的に人種が集まったなんてのは教育のお題目として無意味で、周りの野蛮な人種を平定して国を作ったって英雄伝説が必要なのだ。
 近代史での日本の扱いは1945年以降は記述されず、その後の日本は語られずに教育が続けられている。だから、平和憲法の記述も無いし、東京オリンピックも無い。
しかも、これらの教科書は中国政府の作成した完全「国定教科書」なのだ。
 傑作なのは、日露戦争の経緯が近代史に記述されていない。そもそも、日本が日露戦争に勝利したことによって植民地支配していた当時のロシアから日本に関東州の租借権が委譲された事実を書くと「日本が侵略した」とはならないので一切を記述から外してしまったらしい。自国に都合の悪い事実は記載しない歴史観で中国の近代歴史教育は行われてるのだ。
 その影響がでたのが先の重慶でのサッカー・アジアカップの日本対中国の一戦の観客のブーイングだろう。自国の都合で作っていた歴史がいかに国際社会に通用しないかの証左だ。国際社会の歴史に関する常識が中国では通用しない。そのような歪んだ歴史教育がもたらしたのが今回の意味不明(と我々には見える)な反日デモ現象ではないのだろうか。

考えてみると独裁政権なのは中国も同じ
 北朝鮮が独裁国家だって認識はあるが、中国だって共産党1党独裁の国家なのだ。そもそも、国連の安保理事会に民主的で無い政治制度を採用している国が入っているのも不思議だが、前進が「連合国」であった安保理であるから、力の有る(勝った)国が席をしめているのは不思議では無い。逆に日本の常任理事国入りを「負けた国」が「連合国」に入る違和感と中国の人々は感じているのかもしれな(これも、中国の常識は世界の非常識ってことなのだが)。
 共産主義(社会主義)にも関わらず旧USSRのように教条主義にならなかったのは、国民の数の多さによる支配の行き届かない地域が多いのと、教育の普及が進んでいなかった事に起因するのかもしれない。その意味で、60年代から70年代に日本で起きた学生運動の歴史を中国は50年程後ろから走っているのかもしれない。
 愛国と共産主義が日本のように右派左派に分かれることなく同居しているのが中国の文化だが、ここまで工業化が進むと都市と農村の所得格差、得られる生活レベルの差あたりが社会問題になってくるだろう。これは日本が大正デモクラシーの時代に経験し、226事件に繋がっていく時代背景と同じなのだが。
 今の中国は国家としての歴史のどの段階に居るのだろうか。反日デモを見る限り、心情的な民族主義で、日本で言えば尊皇(共産主義)攘夷(反日)の時代だろうか。
 では、天安門事件の頃の日本の学生運動の時代は中国からは消えてしまったのか。結局政府の共産党一党独裁を堅持する武力弾圧に中国国民は民主化を阻まれ昔帰りしてしまっのか。
弾圧が勝利した国が中国だとしたら、我々は絶対スキを見せてはいけないのだが、外相が出かけていくのも「やれやれな奴」だなぁ。

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2005.04.18 Mint