反日デモ修復にアタフタしだした中国政府

中国政府の理論武装が稚拙
 日本の稚拙な土下座外交を心配していたのだが、事態は正論に収束する方向で流れているようだ。と、楽観は出来ないかもしれないが。
 そもそも中国政府の言動(メッセージ)は国際社会で受け入れられるものでは無かった。「日本の対応に中国国民が怒っている行為」とか「日本の太平洋戦争は侵略戦争だった歴史認識を改めよ」とかの発言が喧嘩馴れ(外交馴れ)している民主的独立国(西欧諸国のこと。日本は残念ながら含まれない)の感覚から外れている。外交はそれぞれが持つカードの出し合いだったり持っている意志表明だったりして駆け引きする。中国政府は大口開けて全てをさらけ出してしまった。で、その結果は諸外国からはブーイングだった。
 歴史観って感覚はアングロサクソンを含めて西欧には無い。無いって表現は行き過ぎだが、彼らは基本的に過去は現在から未来に向かう方策の参考資料と考える。ま、スポーツ的な感覚と言おうか、勝負の結果は次の勝負へのデータ蓄積だって感覚だ。それ故、同じ第二次大戦敗戦国であるドイツ、イタリアに対する姿勢と日本に対する姿勢に差は無い。アジア諸国だけが外向的国益のためって面を含むが、対日本外交に先の大戦の話を持ち出してくる。
一部、マハテール氏なんかは逆の親日派で先の大戦のアジアでの日本の行為は「結果として」西欧によるアジア植民地化を防いだとまで賞賛してくれる。
動機はどうあれ、結果を見るとき、先の大戦の見方は様々合っても良いが、基本的に謝罪や賠償を何時までも引きずるのでは未来志向の国交は開かれない。大局観が国と国のつき合いの根底に双方共通に認識されなければ、所詮、外交文章を交換しただけの関係でしか無くなる。今の日本と北朝鮮の関係がまさに、この好例だろう。
 反日デモを扇動し日本に圧力を掛けることが出来ると信じた中国政府の行動に右往左往した日本人も多々居るようだが、基本的に理不尽な事は世間で通用しないって確固たる態度で対峙したグループの選択は正しかった。
 国会で「小泉首相が靖国参拝するから中国に反日デモが起こる」みたいな発言をしている民主党の一部は恥ずかしくないのか。まるで、中国政府の片棒担ぎなのだから。テレビにも同等の恥ずかしい評論家が散見されたが、彼らこそ日本の自律した外交を阻害してきた反動分子なのだと国民は理解すべきだろう。

たたけば埃の出る体
 ディペードなんかでは直接攻撃は好ましくないと指摘されるが、今回の中国政府の対応は自らにも火の粉が降りかかるきわどい瀬戸際政策であった。特に総領事館を武力を持って守らなかったのが諸外国に対して国家としての条件を逸脱した国と写った。西欧ではいかに感情が高ぶっても基本的に守らなければいけないルールを逸脱することは許されない。先に書いたように「スポーツ的な」考え方は生活全てに浸透している。
 どんなに国家を非難しようが、それは公的国家であり、一部の人間が住む総領事館を武力攻撃の対象にしては「スポーツ的な」ルールに違反する。さらに過激に言うと、その時点で宣戦布告である。日本以外の西欧諸国であれば領事館職員保護の名目で軍隊の派遣もやぶさかでない事態を中国政府は招いたのだ。
 さらに、中国が国際社会で無法者の烙印を押されても、独立独歩で歩める時代は過ぎて、現在の中国は閉じた国家では無い。諸外国からの投資こそが毎年10%に迫る経済発展を支えているのだ。
 加えて1919年5月4日に発生した反帝国主義・反封建主義の愛国運動になぞらえて「五・四運動」を唱えているが、歴史的背景を正しく把握すれば、これは時の軍閥政府打倒の動きであり、現在の中国政府打倒の火種になりうるのだ。明治維新は時の幕府の政策が生きづまり各人各様の愛国の徒となって争った日本国内の政権争いであった。
同様に、今の中国政府は外国資本を受け入れすぎの面があり、中国国民に外国排除の心情的感覚が潜んでいる。これを反日デモでガス抜きしようとしたが、政府の発するメッセージが稚拙で諸外国から非難をあびてしまった。ここで、急に手のひらを返したように「日本製品の不買は我々中国同胞の職場を奪う結果になる」とか「外国資本の投下により今の中国の繁栄がある」とか言ってるのだが、これって、点けた火が自分たちに向かって燃え広がる結果を生むと考えていないのだろうか。

政情不安の時期に入る中国
 ここ1年が正念場だと思うが、現在の中国は共産主義独裁の政治イデオロギーと自由経済の経済運営の2重構造が限界に達してるのだと思う。最大の矛盾は共産主義下の貧富の差だろう。最新の情報は入手していないが5年程前に都市部では公務員の父親の月給が1万円程、大学を出て日系のソフト会社で働く娘の月給が20万円と実に20倍の開きが発生していた。
 旧ソ連も直面しなかった労働者の給与の差。これが外国資本の投入により引き起こされた。旧ソ連には外国企業の進出はほとんど無かったが、中国は外国企業の従業員になり給与所得が高く国民と国内企業の従業員故に給与の安い層が混在している。
当然、後者は外国排除の感覚を持つだろう。そして、後者が国民の大多数を占めるのだ。半端じゃない、推定人口14億人の90%の12億人が後者の層なのだから。
 日本と中国の両国関係にカリカリする必要は無い。相手である中国が今大きなうねりの中にある。極端な話、現在の中国政府が国民の支持を失う場面すら想定される。資本主義経済運営の先進地である台湾の政治的台頭も余談を許さない。中国政府はその点に危機を持って早急に台湾を吸収合併しようと暗躍するが、基本的に現在の中国国民にとっては現政権を選ぶか台湾政府を選ぶか、どちらが自らにとってハッピーなのかって選択肢を与えられる場面に遠からず達するだろう。
 中国政府自身が崖っぷちに居るって感覚で、この問題を見つめることが必要だろう。

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2005.04.21 Mint