政情不安定に向かう中国と日本の選択

共産党一党独裁で何処まで保つか
 故事に照らせば10億以上の人口と広大な国土を有する中国では為政者は国土の統一を目指して互いに攻め合い様々な分裂形態を経て現在の統一中国になっている。正確には現在の台湾の歴史的経緯から、中国は台湾の統合による最後の統一に向けて現在進行形と呼べる。
 その中国で毛沢東の全国統一の頃までは民衆は「統治者、被統治者の関係が無い、存在の解らない統治者が最高の統治者」と考えていた。先の太平洋戦争の中国戦線でも飛行場をめぐって攻撃が重ねられてるすぐ横の畑では機銃掃射される飛行場を尻目に農民が耕作を行っていた場面を目撃した記述が戦記物に見られる。
 中国の経済成長は地球最後の新マーケットとして諸外国からの投資が集中したことによる。国内的要因による経済成長よりも海外からの資本投入による経済成長がここ数十年続いている。中国国内においては外国企業の傘下で働く企業労働者が、この経済成長の恩恵を受ける反面、旧来の農業中心の地方都市ではほとんど経済成長が甘受できていない。
 急速な工業化がもたらす所得アンバランスが都市と農村の軋轢を生み、一部では死傷者を出す暴動にまで発展してる。ダム建設をめぐっての襲撃事件、警察の交通事故処理をめぐっての1万人暴動。ニュース報道が統制されているにも係わらず、極端な出来事が中国国内から伝わってくる。
 この時代が変化する時に現れる現象は過去、日本の60年代、韓国の80年代にもあった。中国は90年代に天安門事件を制圧し一見政治的均衡を保っているようだが、ここに来て逆に制圧したが為に行き場を失った負のエネルギーが地方から爆発している気がする。

民主的政治が解決の基本ではあるが
 国の政治制度は「主権在民」であるべきだが、それぞれの国の国情によって政治形態は多様化せざるを得ない。例えば南太平洋の小さな島国などでは意見を戦わせ国民が選ぶような選挙制度による民主主義よりも、一同に会して話し合う直接民主制、それも国王のような調整役を中心にした制度がもっとフィットするだろう。
 現在の中国は1国としての国民の数はインドを凌駕し14億人と言われる国民全てが参政権を行使できる選挙制度による民主主義の実施は物理的に難しいだろう。
もし、いまの選挙による民主主義制度を安定的に運営する最適な国民の数と言えば1億人前後と思われる。アメリカのように大統領制を併設しても2億人(アメリカの人口を超えるが、アメリカの人口にはかなりの割合で参政権の無い国民がカウントされている)が限度だろう。
 14億人とも言われる人口の中国にとって、仮に共産党一党独裁の政治体制が崩壊することがあったとして、次に来る政治体制は他の国に例を見ない方法になるだろう。そもそも中国4000年の歴史の中で全国統一が実現したのは毛沢東以降のここ30年のことなのだ。
 逆な言い方をすれば、広大な国土と膨大な人口をまとめるには、国民全員が参政権を持つような政治運営制度は不可能で、共産党一党独裁であればこそ、全国統一(台湾を除く)が可能だったのではないだろうか。

中国共産党一党独裁崩壊後のシナリオ
 後に来る政権は、崩壊した中国共産党の政治をそのまま担うことは不可能だと思われる。新しい勢力が統一中国を運営可能になるのは整備すべきここの制度だけでも10年以上の歳月が必要だろう。その間に何が起こるか。
 最悪のシナリオは外国による分割統治だ。さすが21世紀の時代にこれは無いだろう。弱体とは言え国連がまったく機能しないとは考えにくい。では次に来るのは日本が満州国でやったような諸外国支援の傀儡政権の分割統治。これは、可能性が高いと思われる。これだけ経済投資をして、政権が変わったら引き揚げてよとは諸外国の国民が納得しないだろう。自国の投資の多い地域に国を作らせ同盟を結んで支援していく。国によっては複数の独立国と同盟を結ぶ事態も考えられる。
 最後に考えられるのが民族自決闘争による中国人民の手による地方の分割独立だろう。実は現在でも工業化の進んでいない内陸地域では可能な選択と思われる。逆に工業化の進んでいる地域では人口の流入も激しく民族は混在し、自決的独立は難しいと思われる。
 どちらにしても、現在の中国の経済発展を下支えしてきた外国企業の投資の状況により分裂国家、もしくは連邦制による国家運営は避けて通れない選択肢だろう。現在のような共産党一党独裁に代わるイデオロギーは、もはや世界に存在しないのだから。

投資集中のシナリオ
 将来を見据えて中国投資は地域を分散させず、特定地域に集中させることが諸外国の国益にかなう。同じように、国内回帰が発生することを考慮に入れた中国投資を考える必要があるだろう。100年に一度の津波や地震に備えるのなら、もっと頻度の高い政情不安定に備えるのも危機管理だろう。
 わずか20年ほど前には中東戦争で痛い目にあった日本経済界だが、またく当時の事を忘れて無条件で中国投資を続けると日本経済も共倒れになる。
 台湾の日本人学校の教科書を取り上げたり、反日デモを扇動したり、地方ではダム開発をめぐって農民とゼネコン系の銃撃戦があったりとか、とかくニュースが国外に流れてこない中国で、ここまで情報が漏れてくるのは中国国内でただならぬ政情不安が起こりつつあると思って間違いないだろう。
 日本攻撃にワタワタしてるよりも、しっかりと中国を見据え、対応を熟考する姿勢が今、求められているのだろう。

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2005.06.30 Mint