衆議院総選挙、自民党は刺客、新党大地は毒殺

新党大地は北海道の特殊事情
 選挙運動の一環と思われては迷惑なのだが、総選挙の告示も近いことがあり、若干固有名詞を省略して書かせてもらう。
 ダーティなイメージをマスコミによって作り出された鈴木宗男元衆議院議員だが、地元の北海道ではそこそこ人気がある。本人は「地元に中央の金を持ってくるのは議員として当然の行為」と言ってはばからないが本人の言ってるように「古いタイプの政治家」にも関わらず、鈴木宗男氏を押す人は多い。
 本州各地では「鈴木宗男的な」衆議院議員は当選が難しいのだろうが、北海道の政党マップには他の都府県に無い特殊事情があり、鈴木宗男氏の新党大地も受け入れられる土壌がしっかりあるのだ。
 現在の民主党の前身であった社会党は北海道地域では圧倒的強さがあった。組織票である旧国鉄や石炭産業を中心にした炭労に支えられて最初の住民選挙による知事に革新系の田中知事をそして後年、横路孝弘社会党知事を生んできた。
 この「数の論理」に食い込んだ自民党は現在では二世議員に世代交代し、往時の迫力も無い。もちろん、民主党も北海道では旧社会党派が多く、こちらは世代交代が進まず黄昏(たそがれ)議員ばかりになっている。要は2大政党化の時代と言われながら北海道は旧来の二大政党(自民党と社会党)を引きずってる。往時の自民党には北海道出身の大物政治家(地位が上って意味もあるが、影響力が大きいって意味が強い)が居て激しい選挙戦を勝ち抜いていた。町村金五氏、地崎宇三郎氏、箕輪登氏(氏は自衛隊のイラク派遣反対裁判を起こしてる)、佐藤孝行氏、中川一郎氏と自民党もそうそうたるスター軍団が居た。対する社会党は小物が多く、横路孝弘氏、五十公広三氏くらいだろうか。これが昭和40年代まで続いた北海道の衆議院議員勢力図である。
 2大政党時代を迎えて、世代交代も議員の意識も、そして北海道民の意識も戦後の国鉄、炭鉱の工業的二次産業全盛の時代から一歩も変化していない。唯一、武部現自民党幹事長は同じ一次産業の農業畑出身ではあるが。

太平の眠りを覚ます新党大地たった5人で夜も眠れず
 黒船では無いが、今回の鈴木宗男氏の新党大地を立ち上げ(直近の選挙で鈴木宗男氏が参議院北海道ブロックで有効投票の2%以上を得ているが、政党要件を満たさないようで、小選挙区と比例区への重複は出来ないようだ)たのは、戦後60年を一日のように過ごしてきた北海道の選挙事情がある。
 先の参議院選挙でも小沢一郎氏の後押しで立候補した西川氏が意外と善戦したのも、背景に北海道の選挙事情の特殊性が垣間見られる。
 今回の鈴木宗男氏の立ち上げた新党大地は、このような北海道の世襲、組合票、落下傘の選挙勢力の特殊性に北海道民が抱く閉塞感の突破口としての機能を持ち、現在の2大政党には黒船来襲に近い衝撃を与えている。実際には北海道を代表するマスコミである北海道新聞もこの点に触れないが、鈴木宗男氏の新党大地は今回の衆議院選挙では台風の目、いや、スマトラ沖地震で発生した津波のように根こそぎ持っていく力すら秘めてる大変な黒船なのだ。
 タイトルに5人と書いたが、新党大地が衆議院議会で質問権を持った政党となるためには国会議員5名が必要だ。今回の選挙で既に3名の立候補が表明されているが、この3名全員が当選しても2名足りない。
 アイヌ民族代表の多原香里氏は北海道ブロックで参議院議員だった萱野氏の票を相当集めるだろう。スキージャンプ元五輪選手の秋元正博氏は出身が札幌市、所属が地崎工業(先の地崎宇三郎氏が社長を勤めた)から見て札幌から後志に繋がる地域で立候補するであろう。鈴木宗男氏は選択が難しいが、自民党が刺客戦術で共倒れの可能性がある10区あたりの状況分析をしている最中だろう。
 他の二名の具体的名前は控えるが、松山千春氏は今回は応援にまわると思われる。彼の本命は国政では無くて北海道知事であり、選挙の度に応援で名前を浸透させて時期を計って北海道知事選ってのが基本的戦術と思われる。
 松山千春氏以外にあと2名が選挙までに発表できるか、これが黒船になれるか烏合の衆で終わるかの鈴木宗男氏の試金石にもなる。

新党大地は何議席で勝利か
 5議席獲得すれば完全勝利と言えるが、これは少しハードルが高すぎる。この5議席をすべて北海道で獲得しなければならないのだから。12議席の小選挙区に加えて北海道ブロック定数8の20議席の中に5議席獲得するのは難しい。小選挙区に立てるのは3名までだろう。すると3〜4議席は十分獲得可能になる。
 ただ、厳しい見方をすれば鈴木宗男氏がどの選挙区で出るにせよ国政復帰が叶えばまずは勝利宣言しても良いのではないだろうか。北海道の政治勢力状況では鈴木宗男氏のような政治家は毒として必要なのだ。2大政党政治が腐敗を招かないように寿司にワサビがあるように、カレーラースにフクシン漬けがあるように、博多ラーメンに紅生姜があるように、2大政党にはそれを引き立てたり牽制する毒が必要になるのだ。
 そもそも政党政治には「数の論理」が付きまとい、民主主義の運営制度である多数決に帰着する。しかし、本来の民主主義は徹底的に話すってのが大原則で、今回の郵政民営化の法案審議でも審議時間決定が先にありきでは、この大原則が守られていない。党議拘束って制度も運営制度としての妥協だが、基本に帰ると数の論理でしか無く民主主義本来のやりかたでは無い。
 その意味で国会議員個々人が自由に賛否を投票できる制度が望ましく、そのためには党議拘束の無い、個別議題に議員個々人が是々非々で向かうって制度が好ましい。そうなる事で「相手を説得」って議論の基本が醸される。現在は議会で討議しながら場外で政党同士の駆け引きでスケジュールを決めるだけだ。だから、議論が内容の無い時間つぶしになってしまう。
 毒があったほうが国民の監視が行き届き情報が開示される。今回の衆議院選挙の目玉をワイドショー的に「刺客」に持ってきているマスコミだが、鈴木宗男氏と辻元氏の対決が国会で再現されるかってのも興味深い。何故なら、情報開示してもマスコミが流さなければ「こんなもんかぁ」と情報開示が滞る現状はマスコミの責任でもあるのだから。

当選させたい人に投票させてくれ!
 インタネの時代に地域を分けて、個々の地域から議員を選出する。その選挙区も小選挙区制で一人だけ当選。海部総理の妥協の産物のブロック制。これでは票が有効に使われない場面が多すぎる。極論すれば投票数の半分は国政に反映されない票になる。実際には候補者が2名以上だと半分を超える票が無駄になる。
 地盤、看板、カバンの選挙の世界だが、昨今は地盤がより効果を発揮している。参議院と衆議院で同一の地盤の使いまわしで双方に当選してる夫婦議員、親子議員、親戚議員を洗い出してみると解るが、一度獲得した地盤を他人に使わせるより、自分の次回のことも考えて活性化しておくために親類と使いまわしってのが横行してる。
もちろん、違法では無いが、それが正当な選挙制度のあり方に鑑みて正しい選挙と言えるだろうか。
 選挙制度改革もカバンにはメスを入れるが、議員個々が立脚する地盤には手の出しようが無い。実は、ここが盲点で先の選挙制度改革で全国区は金がかかりすぎるってことで資金を規制したのだが、この延長線上に全国一区の選挙を行ってはどうか。金がかからないようにインタネを大いに使えばよい。公職選挙法での選挙公約放送もビデオオンデマンドでも良いだろう。コピーワンスはガンガン掛ければ選挙違反は防げるし。そして、1票を全国から選んだ一人に投票する。そんな選挙制度を早急に構築すべきだ。その代替案として参議院はブロック制で良い。いや、逆に参議院を全国区のみにして、衆議院を通っても参議院は手ごわいって二院制を確立する手もある。
 ま、自民党の刺客がコップの中の嵐なら、鈴木宗男氏の新党大地は北海道ってコップの中の嵐でしか無いのだが、ま、北海道の閉塞感を脱却するために、マスコミに大いに騒いでもらうのも一興かと思う。

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2005.08.19 Mint