ライブドアの証券取引法違反

ローキード事件と比べても小規模
 東京地検特捜部と言えば実名でフィクションの推理小説に登場したり、テレビドラマに利用され、最後に「実在の団体とは関係がありません」ってテロップが出るくらい有名な組織である。
 古くはロッキード事件の捜査、近くは中坊弁護士の詐欺罪容疑捜査、亀井静香衆議院議員の秘書の口利き問題と政治と金の動きに常に目を光らすって雰囲気で知られている東京地検特捜部が、証券取引法違反を本丸にするとは考えられない。
 過去にも捜査を始めて背景に迫る方針で様々な事件をあげている。
鈴木宗男衆議院議員を逮捕したのも東京地検特捜部だ。この事件は国会開催中の現職の議員の逮捕許諾請求が行われた事件として記憶に新しい。しかし、最初の逮捕状は「500万円の斡旋収賄容疑」だった。当事の「むねおハウス」なんかとは関係無い林野庁への口利きの謝礼が斡旋収賄になるとの判断だった。
その前に公設秘書逮捕があり、その中から立件したのが斡旋収賄だったのだが、当事の本丸と思われていたのは「外務省公電漏洩、国後島ディーゼル発電施設建設、中央省庁への圧力」などが疑惑としてあったが、こちらへの捜査の糸口として本人逮捕に使ったのが斡旋収賄だった。
その後、政治資金規正法違反、受託収賄罪、議員証言法違反と再逮捕を重ねていく手法が東京地検特捜部の得意技と言うか、常套手段だ。
 今回のライブドア関連会社の証券取引法違反は東京地検特捜部が描いている全体像の入り口の糸口をほどいただけだろう。今後、東京地検特捜部の本丸は何処にあるのか、何がその本命なのか、その憶測が乱れ飛んでいる。

東京地検特捜部の得意技に外為法違反がある
 正確には外国為替及び外国貿易法なのだが、日本人の海外への送金に関するなのだが、ま、日本が戦後復興の途上にあるときに外貨の動きを国に報告しろって法律で、今まだ使うのかなって古い法律だが、現存している。
 日本で得た収益を日本で再投資するよりも国外で運用したほうが税制面の優遇があるなんて場合に無届で海外に大金を移すとこの法律の報告義務違反で訴追できる。
今回のライブドアの捜査も方向としては海外流出した資金の解明が本丸では無いだろうか。日本で押収されてはかなわないから海外の資産や銀行に預ける例は多い。
で、先にコクド前会長の堤義明氏を同じく証券取引法違反(内容は違うが)で逮捕したのも東京地検特捜部なのだ。その捜査の中で海外への資産流出の手法が明らかになり、そしてライブドアのほりえもんが目を付けられたって推測はどうだろう。
 そもそも、堤義明氏の逮捕は株主が集中し過ぎた株券の分散保有を依頼する、その時に虚偽(もしくは無作為)があったって点。
旧来の日本の経済界では「値下がりする株券を掴ませられた。コクドもあこぎな」程度の経済界の反応で終わっただろう。それは成長経済の中で企業の経営が数字化されない土地等が「帳簿価格(簿価)」で含み益として隠れている時代の経営であった。実際には時価会計に移りつつあり、企業の経営内容は透明化し、株主に開示される時代(これは、アメリカ式と呼んで良いだろう)に国策が変化し、その中で、アメリカ式を拒む経営者を狙い撃ちしたって見方もできる。
 つまり、ライブドアはコクドの堤元会長と逆の動きの中でアメリカ式を追い抜いた、バランスで言えばコクドの対局面にある証券取引法違反であげられたとも言える。
その方向が海外資産運用の不透明さにあるのなら、外為法違反を二枚目のカードとして使ってくるだろう。

これが「国策捜査」だとした場合の展開
 先にアメリカ式と書いたが、株式会社制度そのものは資本本位経済社会の中で経済活動の基本として広く定着してる。が、昨今の景気回復が所得の二極化を招いているのも事実だろう。個人消費が上向いているのも一部の株成金によるものって見方もある。
 世界で最も成功した社会主義国家と言われる日本であるから、政策として経済の二極化は好ましくない。自民党が資本家の代表、社会党が労働者の代表みたいなイデオリギーを核とした政治の時代は終わり、結局、社会主義を実現した自民党が今後とも主導権を握るためには極端にアメリカ的な経済活動も抑制したい訳で、そのために捜査の方向が村上世彰氏の率いるM&Aコンサルティングに向かう可能性も否定できない。
 この場合、現在のアメリカ追従の小泉政権後を睨んだ日本的経済の形態を東京地検特捜部を始め官僚が目指してるってことだろう。
 繰り返すが、先のコクド元会長堤義明氏の証券取引法違反とライブドア関連会社の証券取引法違反は、前者は旧来の経営手法を透明性をもったものにする、後者は金が金を生む経済活動の抑制と、まるで正反対の性格を呈してる。
 では、村上世彰氏のやりかたはどうか。こちらは株主主導の資本本位主義って流れで現在の経営者には煙たいが、国策としては妥当で泳がせておいても良い範疇だろう。ただし、外為法等に照らして不透明性があれば捜査が及ぶ可能性はある。

「ほりえもん逮捕」のカードは有るのか
 先の「外為法違反」のカードはあると考えるのが妥当だろう。これ以外のカードは今後出てくるかもしれないが、東京地検特捜部の手法は金の流れの追及がメインだ。
逆に金の流れの透明化の過程で必ず法令違反が出てくる。何故なら、資本本位主義の原則である「資本を投下して何かを生産し、その付加価値で資本をより拡充する」って生産行為が欠落してる土俵だから。贈収賄も口利きもまっとうな生産行為では無いのだからボロが出る。
 ライブドアも楽天も現在利益をあげてるのは証券部門に限られている。アメリカのIT業界と日本のIT業界が大きく違うのは日本のITはトレンド(流行)だけで流れてる。そこに斬新なアイデアや画期的な商品開発が無い。ソフトバンクですらアメリカのビジネスモデルの「輸入」と金融が事業のメインになっている。
 その中でいわゆる「無理をした」部分にコンプライアンス違反が多々あるだろう。コンプライアンス違反なら後ろ指を指されるってことだが純然たる法令違反があれば、それは東京地検特捜部が白日のもとに曝け出す使命を帯びているのだからまっとうするだろう。
 はたして、何の容疑で逮捕に結びつくのか。鉄のカーテンの中は見えないが、マスコミ報道の断片をつなぎ合わせると全体像が見えてくる。いまはまだマスコミは事態を把握しかねてるので断片すら流れてこないが。

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