専守防衛なんて戦争の仕方あるのか?

専守防衛が国防の基本
 日本の国防の基本は専守防衛。決してこちらから外国に戦争を仕掛けるものでなく、日本の領土が侵略の危機にみまわれた時に水際で相手を撃破する専守防衛。
 誰もがそのお題目故に「日本は防衛のための軍隊として自衛隊を持っている。かつての帝国軍のような侵略を目的とした軍隊は持たない」に納得してきた。
 国を守るために軍事力が必要なのは反対意見は少ないであろう。その軍事力が専守防衛、つまり、仕掛けられた時に発動する軍事力で本当に国を守ることができるのであろうか。
 専守防衛は本土決戦と同じ方式なのだ。
 どうも国会は議論を先送りしてきた気配がある。全体からみれば一部の地域に攻撃を仕掛けられて、そこの攻防戦の間に時間を稼ぎ和平交渉に進むことはプランされる。しかし、実際に外国の軍隊が上陸作戦を開始し、、交戦状態になった地域はどのようになるだろうか。
例えば、ロシアがソ連の頃の仮想敵国であった時に、北海道の西部の石狩湾にソ連軍の上陸用収艇が大挙しておしかけ、石狩湾が戦場となったとき、当事者である石狩市の市民は海岸線へ押し寄せる兵力を撃退するために打ち込まれる火器の中でどのように決断をするだろうか。
 それは、現在の自衛隊が町村の組長の判断を仰ぐ時に明らかになると思う。石狩市ではソ連軍との攻防で町が焼け野原になるよりは、ソ連軍が上陸して内陸の札幌辺りでドンパチしてもらいたいと思うだろう。特に新興住宅地域では日本が戦争に勝つか負けるかよりも、多額のローンを抱えた個人の財産が守られるかどうかに関心が行く。
つまり、自衛隊にはお引き取願って、自分の財産は守りたいって意見。
平和ボケと言うのはこのような場面で出て来る。そもそも、第二次世界大戦の時に、フランスがあそこまでドイツ軍に占領されたのは、フランスの地域個々が侵略への対抗措置として、財産を失うような戦場化を嫌った故ではないのか。

戦争は別な場所でやってくれ。
 誰も自分の住む地域が戦場になり、個人の財産を失うことには賛同しない。ロシア軍の侵攻を食い止めるために砲台を自分の家の近くに設置するとしたら、出来れば離れた所でやってもらいたいし、それが無理ならば自衛隊の反撃を止めて貰いたい。つまり、専守防衛戦略の中で我が町は通過点で、戦場にはしたくないと考えるだろう。
 専守防衛を標傍する自衛隊の戦術的間違いがここにある。たぶん、上陸地点の住民は自衛隊の発砲が、すなわち自分達の財産の破壊につながるのならば、とりあえず自衛隊が地域に陣地を築かなければ良いとの考えも発生するだろう。
 札幌の地形を考えると、石狩湾に殺到する上陸軍を迎え打つには、両サイドの丘から砲撃をするのが効率的で、その流れ弾は市街地に到達する。やがて侵攻が本格化すれば、石狩市は焼け野原になる。それは、他の地域を守るための犠牲と言っても良いだろう。
 そもそも、専守防衛と言うのはそのような戦争になることである。
それを自衛隊を作った時代から40年間唱え続けてきたし、それに国民は納得しているようだ。では、自分の居住する地域が局地的上陸戦争の舞台になったとき、それを甘んじて受け止めるだろうか。実は、それは自分以外の場所で起こるなら容認するって姿勢でしかない。そして、もし、自分の居住する地域で勃発すれば、戦場になるのでは無く、戦争が通過する地域になりたいと思うだろう。

本当に専守防衛が日本の平和活動なのだろうか
 平和活動は難しい活動と言える。おりなす縞のように平和な時代と戦争の時代は繰り返されてきたが、何も手を加えないと、通常はどちらの時代が出現するのだろうか。
 戦争を避けるのが平和運動であり、戦争を終結するのがこれまた平和運動ではないだろうか。だとしたら、戦争を十分に研究しなければ平和もまた訪れない。
平和時の戦争抑止は外交によってなされる。また、戦争終結も外交によると言っても良いだろう。戦争の当事者たる軍部には戦争終結のシナリオは書けない。何故ならば、どのような人間がそれを下したかによらず、軍隊は死ぬまで勝利を求めて戦い続ける機能なのだから。それを終結させるのはシビリアンコントロール(文民統制)の機能である。
 日本の専守防衛は前述のように「本土決戦策」である。先の太平洋戦争でも回避してきた本土決戦を本気で国を守る軍事力の行使策と考えているのだろうか。結局、55体制下で自民党と社会党が国民のために何も考えていなかった一例であろう。
 自衛隊のシビリアンコントロール(文民統制)もシビリアン側が戦争に無知ではコントロール出来ないのである。たまたま島国で侵略に出て行くのは楽だが侵攻には強い地理的条件で50年間自分が仕掛けなければ戦争は無い時代が続き、国策として「本土決戦」の専守防衛の方法論で良いとの考え方の是非が検証されていないだけである。
 東京湾上陸作戦は考えにくいが、全国の何処かの海岸線が上陸攻防戦によって廃墟と化すことを是としてきた専守防衛の国策に誰も疑問を持たなかったのが不思議でならない。

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1998.10.25 Mint