小泉純一郎首相の訪朝は外交では無い

北朝鮮の台本を演じただけ
 参議院選挙前の政治パフォーマンスとか能天気なキャッチコピーで批判する評論家もやれやれな奴なら、「昨日は眠れましたか」みたいな質問に全員でマイクを回して答える記者の質問もやれやれな奴だ。
 「小泉純一郎首相の訪朝は慎重に」と語っていた安倍晋三幹事長の真意は解らないが(と、言うかマスコミは言葉尻しか報道しない為もあるのだが)基本的に外交の切り口からは小泉首相訪朝は間違いと言って良いだろう。諸外国からはどのように見えているのか、日本の常識は世界の非常識を絵に描いたような行為が今回の小泉純一郎首相の北朝鮮日帰り訪問だろう。
 拉致被害者の家族5人を連れてかえるパフォーマンスを総理大臣がやらねばならない理由は何処にも無い。しいて言えば英国のブレアと同じで、出たがりで目立ちたかりって小泉純一郎首相の性格に起因するのだろう。
 旗を振って被害者の家族5人を迎えるのは太平洋戦争中の提灯行列のような「祭り」であって、その裏で報道されないが、両国のの国交の歴史が積み重なってくる。
 一番非常識なのは2度とも小泉純一郎首相側からの北朝鮮訪問だったこと。これでは日本は北朝鮮の属国だ。北朝鮮に貢ぐだけの妾外交を全世界に日本は表明した。それが「小泉純一郎首相再度自ら北朝鮮へ」を見る世界の目だ。経済制裁の外交カードを使わないで情に訴えるパフォーマンス。これが軍隊を持たない国の宿命と言えばそれまでだが、経済ってカードも使わないのでは外交と呼べないだろう。

「未帰還者」は良い用語用法かもしれない
 北朝鮮の拉致は国家の犯罪であり、国家賠償として北朝鮮側が賠償金を日本に支払うべき行為だ。しかし、その確約を北朝鮮に求める動きは無い。家族会の記者会見で5人は戻ってきた、でも北朝鮮には生死不明も含めて多くの日本人や韓国の拉致被害者が居るはずだ、それを5人の被害者とその家族の帰還で終わりにしてはいけないと語ってた。そして、北朝鮮に残る拉致被害者を未帰還者と呼ぶことにすると訴えていた。
 拉致問題は日本と北朝鮮の間に存在する国家レベルの課題であり、その解決は今回の拉致被害者の家族の帰還で終わるのではなく、始まるのだ。政治的パフォーマンスで成果を標榜するのでは無く、最初の帰還が始まったと見なくてはいけない。
熱しやすく冷めやすい日本人の性格からして、始まったとの意識は成就されないかもしれない。でも、事実は「始まった」だ。これを意識しないマスコミの報道には注意を払うべきだろう。各種世論調査でも短期的なパフォーマンスに国民の関心が向いているようで「支持」の声は高い。しかし、長期的に見た今回の小泉純一郎首相の再訪朝の影響を考える必要がある。

貢ぎ物を届けただけの北朝鮮訪問
 これは拉致であり北朝鮮国家による営利誘拐事件だ。外交の視点で考えると、小泉純一郎首相の北朝鮮訪問は、外交でも何でも無くいわゆる人道支援の25万トンの食料と10億円の医療資金援助を届けるための北朝鮮訪問だったのだ。これは遣唐使や遣随使が訪問の見返りに貢ぎ物を運んだ行為となにも変わらない。
 しかも北朝鮮は「援助してくれるなら来てもいいよ」って感覚で待ち受けている。
そもそも総理大臣が具体的な数字を持って行く必要があるのか。「人道支援を行う、詳細は事務方と詰めて欲しい。米25万トン程度は可能なようだ」と姿勢を述べれば済む話で、「納品」に行く立場で無いだろう。
 拉致被害者は北朝鮮が切る外交カードでは無いはずだ。なんとも日本の外交の腰砕けを現している。本来、拉致は北朝鮮の国家的犯罪であり、それを突くのは日本の外交カードだ。にも関わらず、自分の持つ外交カードを生かすことなく相手に与えたのが今回の小泉純一郎首相の訪朝だ。だから、「慎重に」ってサジェスチョンも生まれる。
 つまり「選挙を目前になにかパフォーマンスしたければ、そちらが拉致と言っている5人の家族8人を帰すってのはどう? その講演料は25万トンの食料と医療支援10億円でどや!」と言われてそれを飲んだ。
 結局、家族を迎えに行った(それ自身、首相の仕事とは思えないが)ように見えるが、貢ぎ物を届けたのが今回の行為だ。そんな実態を世界に情報発信して、それで日本は国際社会の一員としてやっていけるのか。
 今回の小泉純一郎首相の北朝鮮訪問は国際的には日本は北朝鮮に貢ぐ国って印象を免れないだろう。政府筋からは、それを一生懸命隠す情報が流れるだろうが、我々の税金を北朝鮮に渡す必然性は無い。北朝鮮を打つミサイル購入に使うべきだ。何なら「テポドン」を大量に買って日本海沿岸に北朝鮮に向けて並べると良い。
 何を履き違えたのか、25万トンの食料と10億円の税金を北朝鮮に届けに行っただけってのが、小泉純一郎首相の訪朝の実態だ。

外交が弱いのがまた露呈された
 「とにかく、難題を突き付ければ日本は金を出す」これが国際社会での日本の評価だろう。湾岸戦争しかり、イラク派兵しかり(なんせ、自衛隊派兵で莫大な税金を使っている)、そして北朝鮮の人道支援しかり。そもそも「人道」に反して拉致を行った国に人道支援する矛盾をマスコミの誰も気が付いていない。基本的人権を認めなければ支援しても一部の階級への支援でしか無い。そもそも北朝鮮は人道支援に値する国かどうかって議論から始める必要がある。
 人権が担保される国なら人道支援もあるだろう。だけど、北朝鮮は人権を認めていない国家制度にある。国民は将軍様の部下であって主権在民では無い。その国家と主権在民を標榜している民主主義国家である日本が交渉する難しさはあると思う。が、人道支援は基本的に人権を認めるかどうかの人類としての基本的スタンスの有無によりなりたつ。つまり、基本的人権を認めない国家に対して人道支援は有り得ない。それが世界の常識だ。
 単に、貢ぎ物外交でしか無い今回の小泉純一郎首相の訪朝は日本国家の外交を常にそうだが、あらためて「政治パフォーマンスとして私物化している」実態のトレースだ。
 そもそも、訪朝に使った交渉ルートは既存のルートでは無くエージェントを使った新たなるルート。言い方を変えると、自身のパフォーマンスのためにエージェントに内閣機密費を使い北朝鮮訪問の台本を取得した。でも、その結果は日本国民上げての小泉純一郎首相バッシングなのだ。
 ここで予言しておくが、小泉純一郎総理は賭けに負けた。自分の命取りを自分で作ったのだから、この事態を収められるのかどうか。基本的にマスコミは「最悪の小泉純一郎首相の再訪朝」って立場で視聴率を稼ぎたいようだが、基本的に世論は小泉純一郎総理の訪朝は「馬鹿みたい」だ。外交の視点から、どのような逸脱行為だったのかを検証してもらいたい。
 命取りだったなぁ、今回の訪朝。

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2004.05.23 Mint