小泉純一郎首相の政治手法は都会的

改革は都市部で成果があがる
 改革を政治スローガンにするとその成果を目に見える形で早急に挙げるためには都市部で成果が期待できる施策が中心になる。何故なら、人口密集地こそ制度の変革が実感できる地域だから。
 そのために都市型の施策中心で結果として地方切捨てに繋がる。本来、政治の仕組みは利権主義に見えるが結局、国が集めた税金を全国に再配分する仕組みを担っている。それが、政治家の行政への不当介入を招く結果になるのは避けなければいけないが、律令制度の基本は国土の均衡な成長を調整する機能と考えると解りやすい。
 東京から全国を俯瞰するだけでは見えてこない各地の課題が旧来の公共事業や陳情によって地方へ再配分されてきた。鈴木宗雄的な政治家が居なくなると地方は益々切り捨てられる。是非は別にして歴代の総理大臣は地方出身者であったが故に、都市部と地方のバランスが取れていたとも言える。
 小泉純一郎首相になって大きく変わったのは都市部と地方のバランスが都市部中心に傾き、意識していたかどうかは別にして、地方の消耗をより早めたことになる。
それが都市部をより強くし、これもまた意識していたかどうかは別にして都市部での格差が広がることになる。
 民主党も「格差社会反対」って単細胞ではなくて、構造的背景を考えて政策論議に高めて与党対応を行わなければ、旧来の社会党と同様の道を歩むことになる。
 都市中心の政治が招いた結果だとの認識に立たなければならない。

都市中心文化は日本文化を破壊する
 実は都市と地方の対立軸ってのは東京と日本の地方で起きているだけではなく、日本の各地でそのミニ構造が起きている。最も顕著なのは市町村合併後の町の重心点だろう。札幌の隣町である石狩市が旧厚田村、旧浜益村と合併した。旧石狩市の人口は55,000名程、旧厚田村は2,800名程、旧浜益村は2,100名程、しかも旧石狩市街地は新石狩市の南の端にあり、旧浜益村までは険しい海岸道路で65kmも離れている。
途中には2,200mの送毛トンネル、4,400mの大島内トンネルがあり、風雪水害等の災害時に石狩市街地との交通が遮断される。
 暗黙の都市計画は「こっち(旧石狩市)に住んでくれたほうが良い」になってしまっている。地方は切り捨てられる方向で調整が進んでいる。
 北海道全域を見ても同じことが起きている。広域な市町村合併で町の重心から離れた地域は広域故にますます過疎化に拍車がかかり、存亡の危機に瀕している。さらにこれを、推進しようと北海道市町村合併では北海道の市町村数を59市町村にする案が出ている。笑ってしまうのは根室支庁で道庁の出先機関が担当する市町村数が2箇所って案になっている。
 保全された自然との共生が日本の文化の原点であるが、地方をこれだけ過疎に追いやれば保全された自然は破壊され、文化の原点が失われてしまう。

小泉純一郎首相の改革のゆり戻し
 実は公共事業の縮小、郵政の民営化、地方交付税の削減は都市中心文化を育む政策で地方切捨ての政治だ。これを改革と呼んで邁進してきたのだが、ここで今一度マクロな目で政策の是非を考える必要がある。
 税収を考えたときに人口の密集している都市部で税収が多いのはあたりまえ。その都市部の税収を地方に回す是非から考えてみたい。
都市部は人口の集中とあいまって生産性が非常に高い。日本の経済政策では都市部の生産性向上こそが日本の生産性向上に繋がる。都市部集中は経済発展を続ける中国でも発生してる事象だが、中国の場合一人っ子政策が地域への引止めのベクトルとして作用し、外国資本の都市部集中がより顕著な状態にある。
 日本の場合も工業発展に向けて臨海工業地帯を整備していた時代は金の卵として地方から集団就職で都市部に人口が集中した。その世代が高齢化して都市部で定年を迎える時代が始まっている。ある種、都市部はこれから訪れる高齢化を補うために若者を取り込まなければならない。その若者は当面、地方からの流入で賄われるが、それも地方が衰弱したら途絶える。
 大きな政策の転換が必要だろう。地方を豊かにしてこそ都市部の高効率が保たれるって発想が必要だ。効率の良い地域に投資し、効率の悪い地域を切り捨てる。これが小泉純一郎首相の政策の根本にあるが、マクロな目で見ると短期的には当たっていても長期的に日本の経済、文化を考えるときに都市部集中は一過性のものではないのか?
 地方が活力を失った時に、砂の上の城のように都市部の高効率も回復不能に陥るのではないか。地方を活性化する政策がゆり戻しとして必要になる。

財政再建と地方交付金削減
 金が無いから地方へは自立を求める。国が借金してまで地方の面倒は見ない。そんな論理が竹中平蔵氏の描く財政再建だろう。実はバブルがはじけて17年、経済の建て直しが進み、この政策は後手に回っている。
 旧来の公共事業を縮小するなら、公共事業外で同等の税金の分配を地方に向けて行うべきで、小さな政府といいながら自分たち(官僚を中心にした中央官庁)の利権は残したまま地方を切り捨てる政策は官僚の書いたシナリオだ、これに竹中平蔵氏が乗っている。もともと経済学者の竹中平蔵氏には政治的発想は無い。金が無ければ切り詰めるだけでは政策では無い。政策は経営と同じ投資と回収のサイクルで動く。
 少子高齢化社会の到来と共に地方の高齢化率が高くなっているが、このままでは地方の衰退そしてそれが都市部へも影響して極端な話日本が沈没する。
 高齢者を地方に住まわす政策を推進すべきだ。かつて高度経済成長時代に集団就職で都市部に出た流れを逆にするのだ。高齢者は高効率な職場に居て高給を貰う必要がない。地方で自由な時間を多く得られる生活が必要だろう。そのために、北海道でも移住計画なんかを行っているが、これは政策メニューの一部。
 最も大切な政治手腕は行政機関の地方移転である。
 小泉純一郎首相の就任当初にあった「首相公選制」と「首都移転」がまったく手が打たれていない。官僚の書くシナリオでは首都移転は出てくるはずがない。政治主導で行わない限り行政機関の地方展開は果たせない。
 北海道もその典型だが北海道庁と札幌市で都市部集中がはなはだしい。最近は高層マンション建築ラッシュで商業地域への人口の逆流も始まった。これって旧来の政策だろう。札幌市で言えば「札幌ドーム」なんかは石狩市の浜益地区に建てれば良かったのだ。そもそも、北海道庁は帯広市あたりに移転すべきだろう。市町村合併案なんか作るよりは14ある支庁の再編成と移転(集中ではなくて分散)を考えるべきだろう。
 地方の活性化は補助金や公共事業では無くて、行政機関自らの移転で行う政策を取れる政治家がポスト小泉のゆり戻し政策として必要になる。

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2006.06.20 Mint