小泉純一郎首相の8月15日靖国神社参拝はあるか

終戦記念日って表現に違和感があるのだが
 前に書いたが作家の野坂昭如氏が「戦後では無く常に戦前なのだ」と述べていたが日本の場合は近隣で戦争があるのしても、先の太平洋戦争の終結からずっと「戦後」が続いている。終戦記念日の表現よりは敗戦記念日の表現のほうが違和感がないが、言葉のアヤなのか終戦記念日が一般的に使われている。
 一方、プロ野球などでは敗戦処理投手なんて、こちらは差別的な表現で敗戦を前面に出している。もっとも、最近は流石におかしいと「敗戦処理投手」って表現は自粛されているようだが。
 小泉純一郎首相が7月末のメルマガで「毎年、靖国神社を参拝してきた」と強調するあたり、かなりきな臭い感じがする。一時期の日本経済新聞社のスクープ「それが私の心だ」に動揺した様子が見られたが、あれはどう考えても昭和天皇の考えでは無く入江侍従長か藤尾正行元文部大臣の発言のメモの公算が高い。その事に一番気がついているのが記事を起こした日本経済新聞なのだが、訂正記事も他のマスコミからの糾弾も無い。やれやれなマスコミってことだ。
 これに勢いを得て小泉純一郎首相の引退の花道決行となってしまうだろう。
「あとは野となれ山となれ的な」小泉純一郎首相の靖国神社参拝はありそうだ。時間は政府主催の戦没者慰霊祭の後だから夕方だろう。問題があるとすれば、警備上の問題で警備側が中止勧告するだどうかだろう。昭和天皇の御心に背くと右翼が精鋭化して靖国神社を取り囲めば物理的理由により小泉純一郎首相の靖国神社参拝は行えない。
この点に問題はあるものの、小泉純一郎首相の意思は8月15日参拝で固まっているだろう。

結果、安倍政権は短期政権になるかも
 小泉純一郎首相の靖国神社終戦記念日参拝によって政局が動くかと言えば、大勢に影響は無いだろう。靖国神社参拝を総裁選の争点にしないって判断が福田康夫氏が総裁選に不出馬を決めた大きな要因だが、この土俵が再び使われることは無いだろう。
蒸し返しても安倍陣営にも反安倍陣営にも得なことはなにひとつ無い。
既に谷垣禎一氏は靖国参拝に関しては「行かない」と不戦宣言。これでは靖国参拝問題を引っ張り出すのは無理だろう。
で、中国や韓国が猛烈に抗議してきても本来国内問題なのだから黙殺すれば良い。結局、政局に影響は無いだろう。
 問題は、安倍晋三総理大臣が短期政権か長期政権かが小泉純一郎首相の靖国神社参拝と密接に係わってくる。秋の総裁選後来年の参議院選挙に向けて中国や韓国との首脳会談がセッティングできれば安倍晋三政権は参議院選挙を無難に乗り切って、長期政権化するだろうが、この可能性は低い。
 国内問題と割り切っていても、仮にも総理大臣なのだから外交に反故を帰するようでは国内からもバッシングされる。どちらにしても与党過半数割れを目指す民主党は外交力の無さで政権を攻め立てるだろう。
その結果、本当に参議院で過半数割れが起きたら自民党はコップの中の嵐に留めたいので安倍晋三総理の首の挿げ替えを画策するだろう。その事態に向けて今回の総裁選挙で変化球を投げているのが谷垣禎一氏なのだ。一度は「加藤の乱」で政治生命が失われたかに見えた谷垣禎一氏だが宮澤喜一氏仕込みの金融通から小泉内閣では重要なポストを任され復活を遂げた。
NEXTを狙った変化球は、安倍晋三氏の弱点をことごとく自らの利点に取り込んで総裁の座を狙っている。

小沢一郎氏の対応は、A級戦犯合祀反対
 日本経済新聞社の偽スクープに対して民主党の小沢一郎氏は絶妙なコメントをしてる。「おおみ心だな。軍人じゃ無い人を靖国神社に合祀するのは僕は反対なんだ」主に「松岡、白鳥」の両名を暗に指しているのだろう。これは昭和天皇と僕は同じ考えだとの宣言。一方、小泉純一郎首相は「心の問題でしょ」で昭和天皇と僕は違うってコメントを寄せた。この違いは大きい。もっとも「民主党的な」判断では、そんなことを言うべきではない(笑い)となるのだが。
 小沢一郎氏にとっても安倍晋三総理大臣だと組みやすしだろう。ひいきの引き倒し的な森前首相の行動も追い風になる。与党過半数割れを公約に今年の秋は小沢一郎氏の続投でほぼ間違いないだろうから、来年の参議院議員選挙に焦点を絞って、安倍晋三内閣打倒を目指すことができる。
 反安倍晋三陣営の取り込みすら視野に入れているだろう。国民新党の仕掛け人は小沢一郎氏らしいのだから。あと、田中真紀子氏の動向も来年に向けて注目される。

小泉純一郎首相は結局、自民党をブッ壊した
 「あとは野となれ山となれ的な」靖国神社参拝によって、引退する小泉純一郎首相は別にしても、アジアとの関係修復を担う残された自民党の議員は結局、修復できないまま参議院選挙に直面することになるのではないだろうか。
 旧来の自民党には自民党の論理があって、右に傾けば左に、左に傾けば右にバランス感覚が働いた。ところが、5年間思いつきで政権を担ってきた小泉純一郎首相の小泉劇場では右に傾けば右側の人間を振り落とし、左に傾けば左側の人間を振り落とし、結局、小泉クローンの安倍晋三氏しか残らなかった。
 自民党が曲がりなりにも長期政権を維持できるのはこの左右の復元機能が存在したためだが、本当に小泉純一郎首相は復元機能を壊してしまった。つまり、「自民党的な」部分を失った自民党を作ってしまった。これは小沢一郎氏にとって好条件になるだろう。小泉流でノラリクラリ議論をしない。アカウンタビリティの無い態度は、小泉劇場の舞台だから発揮できるのであって、小泉流は小泉一代のもので後継者には引き継げない。だから、小沢一郎氏はひたすら追い詰める戦略で来るだろう。復元力の無い自民党は追い詰められると弱い。ましてや、内部に反安倍晋三陣営が居るのだから誰も火中のクリを拾わない。元民主党代表の前原代表とニセメール事件のような事件を自民党内に作り出せば、自民党の安倍晋三政権は自然と崩壊していくように見える。

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2006.08.07 Mint