自民党総裁選挙の雪崩現象
安倍晋三氏支持への雪崩現象
形勢有利と見るとこぞって安倍晋三氏支持に流れ込む自民党の面々は、組閣人事でのポスト配分にあやかろうと、その魂胆はミエミエ。小泉純一郎首相の任期切れ勇退を受けて、新たな人事構想のバスに乗り遅れないように必死の様子が見てとれる。
その中には「小泉純一郎台風が過ぎたら、俺達の出番だ」とでも言いたいのか、まるで蚊帳の外に居た面々も多数含まれる。これって天下取りでは無くて腰巾着のポスト取りで実際には安倍晋三氏の支持基盤は脆弱と言わざるを得ないだろう。キビ団子が欲しくて集まった犬、猿、雉は桃太郎の話のように巧くは行かず、キビ団子が切れたらフワフワと別な桃太郎にくっつく連中なのだから。
しまいには、谷垣禎一氏の推薦人になると安倍晋三内閣で阻害されるからと、天下国家よりも自分がかわいいなんて国会議員が出るに至っては、小泉純一郎首相の公約「自民党をブッツブス」が現実味を帯びてきている。脆弱な支持基盤でスタートし、一つ人事を間違えばコップの中の嵐で行政手腕が発揮できないドロ試合に陥りかねない。森元首相、小泉元首相と院政政治で収集しようとしたら、ますます、安倍晋三支持層は力を失うわけで、現在の自民党総裁選の行方は日本の国政を左右する来年の参議院選挙に向けたスタートラインになる。
説明責任回避の直感政治に国民は飽きた
さすがに、開いた口が塞がらないのか問題視されてないが、小泉純一郎首相の靖国神社の8月15日参拝は「何時行っても批判される、だから今日にした。適切に判断した」には、政治家が公人として義務を果たさなければならない「説明責任」すら放棄してる。
そもそも「ワンフレーズ」で物事を説明できるはずがない。ワンフレーズはキャッチコピーでしかない。小泉純一郎首相は自らの変人さもあって甚だ論理感を欠いたワンフレーズで対処してきた。「心の問題」もそうで、論理的に考えると、心の問題であれば姿形に拘る必要は無く「適切に判断すれば」首相官邸から靖国神社の方向を拝むだけで良い。しかも、私室で。
この論理性の無いワンフレーズが安倍晋三氏にも引き継がれてる。いや、安倍晋三氏はあえてこの手法で行くつもりなのかもしれない。それが小泉継承なのだと勘違いしてるフシがある。
小泉純一郎首相はカリスマ性の要素があったから、なんとか首相を続けられたのだが、そのカリスマ性は大変危険な道でワンフレーズでキャッチコピーばら撒きなので国民は思考停止状態に追い込まれ、かつてのあと付けの「八紘一宇」や「大東亜共栄圏」のような道を歩む危険があるのだ。
そもそも憲法改正を公約にする安倍晋三氏が説明責任を放棄したワンフレーズで押し通そうとするのなら、国民は思考停止に陥ることなく、説明責任を果たすことを求めるべきだろう。特に現在思考停止に近いマスコミ各社の個々人に目を覚ませてもらいたい。
短期政権で終わるのはほぼ間違いないだろう
安倍晋三氏が自民党最後の首相になるとまで言わないが、現在のような雪崩現象の支持基盤は先に述べたように脆弱であり、ちっとした外圧、もしくは内紛で塗り替えられてしまう。その一番大きな要因は加藤の乱で分裂に追い込まれた宏池会の再編成だろう。現在はまたコップの中で安倍晋三支持でもめているが、大宏池会構想は破綻にしろ成熟にしろ、総裁選挙終了後の今年の10月には片が付く。
張本人の加藤紘一氏の去就も注目されるが、既に派閥の中核に戻る意思も無さそうで、時期総裁候補の谷垣禎一でまとまり易い状況でもある。ただし、こちらは他力本願で安倍晋三氏が首相を続けられない事態をひたすら待ちの姿勢だ。
一方、安倍晋三氏が首相になっても前にも後ろにも行けない地雷原に立っているのは間違いない。よほど上手に立ち回らないとどれかの地雷を踏んでしまうだろう。
1)アジア外交、2)財政再建と小さな政府、3)アメリカとの協調路線の維持等に加えて、最大の地雷は「憲法改正」だろう。政治が小泉純一郎首相のこの半年の放漫経営で歩みが止まってしまっているのに、憲法改正だけやっていても国民の支持は得られない。せめて、自分が長期政権で再度の首班指名を受けた頃までは憲法改正を封印する姿勢が無いと、自爆してしまうだろう。
民主党は自民党の抜けた穴を狙う
片や民主党の小沢一郎代表は秋の代表選挙への出馬を表明したが、継続は間違いの無いところだろう。ただ、公約と言うか政権構想はユニークでとても民主党の政策とは思えないものがふしぶしにある。
農業生産原価保証制度なんかは旧来の自民党の政策課題だったのが民主党に移っている。前にも書いたが小泉純一郎首相の政治は都市型で、その結果現れた現象が地方切捨て、格差拡大であった。これは小泉純一郎首相が都市型の選挙を経て政治家を続けてきた宿命かもしれない。また、地方への選挙の応援演説も都市型でドブ板を踏んで回るような選挙はしない。だから、地方のことが分からないのだ。
かつて、小沢一郎氏は田中角栄氏から選挙演説のコツを教えてもらったことがある。都会の駅前に何千人集めても投票所では名前を書いてくれない。ところが小さな集落で100人集めて演説すると、ほとんどの人は投票所で名前を書いてくれるってものだ。
ある種、小沢一郎氏の選挙は忠実に集落を回る選挙運動だ。そして、地方活性化が日本の経済の課題だと感じたのだろう。まるで、日本列島改造論の田中角栄氏の亡霊があらわれたようだ。
しかし、本来の自民党的機能からすれば都市型の政治には地方型の政治がゆり戻す訳で、その機能が自民党に無いので、民主党に移ったってことかもしれない。
地方の政党民主党と都会の政党自民党って、10年前には考えられなかった政界勢力図になるのだろうか。
どちらにしても、この課題の答えは、来年の参議院選挙で出るだろう。