CO2排出権市場の危うさ

CO2排出権購入ではCO2は減らない
 京都議定書には「京都メカニズム」の要項がある。これは、各国が2012年までに削減すべきCO2の量を定め、各国がCO2の削減に向けて努力し、目標達成が困難な場合は国内の排出量を補う他国からのCO2排出権の購入で賄う制度になっている。
尚、京都議定書では温室効果ガスを二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類と決めそれぞれに削減目標がある。日本の場合は前3種類の温室効果ガスについては1990年の排出量の6%、後3種類の温室効果ガスについては1995年の排出量の6%が削減目標になる。
残念ながらCO2にばかり注目されてるが、実はCO2が削減どころが増え続け2006年段階では目標達成には現状の13%のCO2削減が必要になる。
 化石燃料換算で計算が解りやすいCO2についての削減量購入がCO2排出権購入で、具体的には国内、国外を問わず排出量を削減する施設整備を行い、通常なら排出してたCO2を債券化して売買する制度がCO2排出権購入制度となる。
 ちょっと考えてほしい。
 途上国には削減目標が無いから、途上国で技術供与によって理論的に削減されるCO2排出量ってのは架空のもので、これが先進国での削減目標(許容されるCO2排出量)に加算されるってのは、どう考えてもCO2の削減に結びつかない。
 つまり「本来出ていたはずのCO2を押さえた分、我が国はCO2削減に貢献した」って理論なのだろうが、これは削減目標の無い途上国を舞台にした「架空の枠」ではないだろうか。もっと言えば、先進国から途上国への短期的な投資によるCO2排出権購入で途上国はそこで得たエネルギーで新たなCO2増加を推進することに繋がるのではないのか。
 ミクロで辻褄が合うが、マクロでは温室ガス増加に繋がっている京都メカニズムでは無いのか。

日本の商社が買いあさる排出権
 2007年9月段階で日本が保有する国際排出権は三菱商事(1383万トン)、住友商事(770万トン)、丸紅(633万トン)、JMD温暖化ガス削減(580万トン)、日本カーボンファイナンス(476万トン)、Jパワー(345万トン)、三井物産(325万トン)、中部電力(313万トン)など(出典:http://masanobutaniguchi.cocolog-nifty.com/monologue/2007/09/post_1b68.html
 これは、20012年に向けて排出権が値上がりすることを見越しての事前購入で、2008年1月に発表になった政府の「資金メカニズム」も対象にもなる。政府の「資金メカニズム」とは2008年から2013年の5ヶ年で100億ドル(1兆円)を途上国に円借款や無償資金協力を行うってもの。もちろん、商社がからんでくる。
 現在の排出権の金額だが日本が入手しているものは上限下限の差は大きいが平均1500円/1トンなのに比べてEUでは平均3000円/1トンになっている。今後の値上がりが見込まれる証券だ。
 サブプライムローンのように複数の債券と組み合わせた証券市場も形成されているらしい。もはや実態の伴わないCO2排出権市場が金融商品として市場に出回っている。これが「地球温暖化の毛皮をかぶったオオカミ」であることをマスコミは取り上げていない。また、京都議定書自体が科学的根拠の基本問題で揺れている現状。そして前アメリカ副大統領のゴア氏の「不都合な真実」がいかに科学的根拠を欠いたプロバガンダであるか、そのあたりの「疑ってかかる」検証をマスコミは出来ていない。

「不都合な真実」は市場形成のPR映画
 最も刺激的なのは氷河の崩落の映像だろう。氷が海に崩れ落ちる映像と地球温暖化を重ね合わせて「大変な事になっている」と印象づける。これが刺激的に扱われている。
しかし、氷河とは字の通りに氷の河で通常の河と同じように古来から海に注ぎ込んでいた。一部には標高が低くなった自然融解する場合や、湖に注ぎ込む場合もある。つまり、河の流れの自然現象なのだ。違うのは一般の水と違い厚みがあるので崩落するように注ぎ込むだけが違う。
溶けて崩落しているのでは無く、海や湖にせせり出し、自重に耐えられなくなって崩壊してる。それを地球温暖化と結びつける演出には世論誘導のプロバガンダのにおいがする。
 地球温暖化は観測結果からも明らかなのだが、その原因は諸説ある。地球の気候は1400年から小氷河期と呼ばれる低温期に入った。リュンツ、ミンデル、リス、ウルムの4大氷河期(現在はウルム以降の第四間氷期と呼ばれている)の間にも小さな氷河期が繰り返されていたと考えられる。1400年から400年程度で小氷河期は終わり、地球は温暖化に向かっている。1800年ころから始まった温暖化は0.5度/100年のペースで進んでいる。
 京都議定書の理論武装になった「気候変動に関する政府間パネル」Wikipediaだが、ここでは地球の温暖化は0.6度/100年としてる。
 自然温暖化が0.5度、人間活動による温暖化が0.1度と考えると辻褄が合う(もっとも、これも理論的にと注釈が付くが)
 ゴア氏が意識していたかどうかは別にして「不都合な真実」は金余り現象の地球に地球温暖化ビジネスモデルを形成したようだ。このビジネスモデルに都合の良い場面のみ伝えて、いや待てよ、不都合もあるんじゃないのかって視点を欠いては国民の利益にならない。
 マスコミにジャーナリズムの欠片でも有るのなら、検証を行う内部統制が実施されてないのな何故か。これが、スポンサーとの関係が原因だとしたら、商業マスコミは設立当初から掲げている不偏不党の旗を降ろさざるを得ないだろう。
参考文献、ふみこの雑記帳 」

 また、そもそもゴア氏はアライド・ケミカルというイエローケーキ(濃縮ウラン)を販売する会社を経営しているので、これは地球温暖化ビジネスに向けて中国に500基の原発を設置するシンジケートの提灯映画ではないかと言われている。
 最も環境問題に熱心なヨーロッパでは「不都合な真実」を教育に使おうとした学校を親が学校での不使用を裁判所に訴えている。裁判所は以下の9点をあげて「教育の場で使用する場合は補足説明を行う」ことを義務づけた。
 その詳細はインタネで調べてもらうとして、何でも地球温暖化に結びつけCO2削減ビジネスに陥らないよう注意が必要だろう。

合理的な「真実」は「節約すること」
 地球温暖化は自然現象+人間の活動で進んでいるのは事実だろう。前に地球温暖化を風速から検証するって分析を行った。その結果、大気のエネルギーは増加してるようだ。それが地球の自然現象なのかどうかは解らないが。
 少しでも気候変動(かりに自然現象の宿命であったとしても)を加速しないためにエネルギーの大気への放出および温室ガスの放出を抑制するにはCO2排出権の売買なんかで辻褄を合わせる制度の整備では無く、未来の子孫に向けた環境の保持の仕組み作りだろう。
 それは一点しか無い「無駄なエネルギー消費を行わない」ってことだ。
 突き詰めて言えば「生存権に関わるエネルギー消費以外は行わない」の極論から「自分で出来る無駄使いの予防」まで幅広い。しかも、基本は人類が地球温暖化を加速してるかどうかの議論に立脚しない、人間として子孫に担保する数々の事柄の一つがエネルギーの浪費の抑制だってこと。
「不都合な真実」は無駄使い。この真実を見つめ直して、国会も行政も民間も家庭も「経済的で合理的で民主的な」地球温暖化対策を講じるべきだろう。CO2排出権市場は、どこかこの基本から逸脱したものに見えてならない。

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