地球温暖化を考慮した治山、洪水対策を
大橋巨泉氏の国会での質問
とっくに民主党を辞めてしまったが、国会で小泉純一郎首相に大橋巨泉氏が質問したことがある。その内容は「最近富士湖が凍らない。昔と比べて地球環境が温暖化してるんではないか」これに対して、小泉純一郎首相は「なんとなく感じますね、暖かくなることにより様々な影響が今後出るでしょうね」って返答、これへの突っ込みは「アメリカに京都議定書を批准させろ」って話の展開で、時間の無駄使いに終わった。
地球温暖化は気温の上昇って面にだけ着目していると本質を見失う。大気の持つエネルギーが増える現象と認識しなければならない。その大気であるが、例えば我々が航空機で移動するときの高度はどれくらいか。実は一般的な旅客機の巡航高度は3万フィート、約10kmである。10kmなら歩いて2時間半、通常我々は遠くを見るときに10km程度先は見ている。ところが、ここはヒマラヤよりも高く酸素は地上の半分も無い。人間が酸素無しでは生きられないほど空気が薄い。
大気は地球上に潤沢にあるように考えるが、実際は厚さ10km程。このわずかな厚さで全地球を覆っている。もし地球を直径1mのボールとすると、大気はサランラップよりも薄くその表面を覆っている計算になる。
何故、実感出来ないかと言うと、台風の構造なんかを図解するときに、左右を縮め大気が台風の目の中で激しい上昇気流になっているように作図するから。実際には台風の大きさは直径300kmはあり、大気は昇っても15kmほどまで、だから、図は横10cmなら高さは5mmで描かなければならない。これでは説明できないから誇張した図解になり、それに慣れてしまって本質が解らなくなっているのだ。
自分の頭の上から10km以上上は人間が生存できないほど大気が薄い。その地球に「僅か」しか無い大気が暖められてエネルギー値が高くなるのが地球温暖化の本質だ。
地球温暖化を知る指標としての風速
最近は蓄積されたアメダスのデータがインタネで簡単に手に入る。このデータの中から各地のアメダスで観測された風速を入手し、分析したことがある。
風速の変化に見る地球温暖化研究に、その結果がある。実際には風速が増えている確証は得られなかったのだが、全体に「微増」傾向なのはわかる。札幌のアメダスデータが極端なのは今に始まったことでは無く、西17丁目の気象台の周辺開発が進んで気温も上昇傾向だし、ビル風も増えている。気になるのは海岸線の地域で上昇傾向が高いこと。とくに日本海側のアメダスのデータに風速増加の傾向が出ている。
もっとも、全国の観測地を分析しないと結論は出ないだろうが、日本は季節風が西風なので西風に限って分析したり、障害物が無い海岸線のみに限って分析するのが良いかもしれない。
明確な検証は出来なかったが、大気の持つエネルギーが増えている様子は伺える。また、気象庁の分析によると日本全体の降雨量は若干減り気味なのだが、時間当たりの降雨量のピークは過去50年と比べると倍になっている。
つまり、全体の量は若干減っているがその降り方は強くなっているのが統計からも読み取れる。これから先、もっとその傾向は顕著になるだろう。別に日本に限ったことでは無い。大気のエネルギーが増えると気候変動がダイナミックになる。厚いときは徹底的に厚いし、寒いときは徹底的に寒い。実はシベリア寒気団なんかがヨ−ロッパまで降りてきて大寒波になるのが数年続いている。また、アメリカを襲ったカタリーナはその巨大さでミシシッピー川流域全てに雨を降らせた。
そして、今年の長野、北九州の同時多発豪雨である。
自然征服型は大自然の摂理に負ける
地球温暖化で気候変動が激しくなるのは覚悟するとして、災害から生命・財産を守るために地球温暖化とどのように付き合って行ったら良いのだろうか。特にライフラインを筆頭に社会インフラはどのように整備されるべきなのだろうか。
非常に恐ろしい予測がある。東京に600mm程度の集中豪雨があったら荒川は間違いなく決壊し、江東区あたりに流れ込む川の水で推進は5m近くなる。その水はなかなか引かず、東京中心部まで3日でたどり着き都市機能を水没させる。
ライフラインの地中化は地震災害には有効だがこと洪水となると一瞬で水没する。また、排水はポンプなので、停電とともに水没することになる。
便利で快適な都市インフラの整備も、危機管理の面では脆弱で蓄積されたインフラは一瞬で破壊されてしまう。それを防ぐには自然の摂理に合わせた街づくりが必要だろう。例えば神田川を見ると感じるのだが、とりあえず水が出たら下流に流してしまえって治水計画で作られてる。で、下流はどうなるのかと言うと土石流に近い鉄砲水を受けることになる。遊水池の整備も都市ではなかなか進まないが、遊水池に導くゲートも停電で機能しなければ万里の長城、戦艦大和の轍を踏むことになる。
都市のグランドデザインに防災を最優先する発想が必要だろう。幸い日本は人口減少に向かっているのだから、土地の再区画や再整備は容易になっていくはずだ。ライフラインも多重化して自然の災害に備えるべきだろう。
田舎の被害が多いのは何故なのか
都会では山崩れは無いからってのは理由になってないと思う。都市づくりの力が弱いからだ。川の近くは水の便利が良くて暮らしやすいかもしれないが、そもそも川が山を削って造った土地なのだから、再度削り取られる公算は高い。平野にも安全な平野と危険な平野があって、土地の低いほうは開発の対象から外し、土地の高いほうに住宅をゆっくりと移すべきだ。
もちろん、急峻な斜面を切り開いて高い土地を確保するのでは危険が増す。いわゆる山の尾根の部分を中心に宅地開発し小さな集落が点々と尾根に点在するような街づくりを行うのだ。
また、治水、治山の観点も「500年に一度の災害にも耐えられる」って発想では無くて、耐える治水、治山では無く、受け流す治水、治山を考えるべきだろう。例えば「500年に一度の災害で水没しても復旧が容易」とかの発想である。堤防の決壊は必ずある、その時に川の水をどう導くかの危機管理の発想で治山、治水を行わないと旧来の安全管理的発想で「とにかく頑丈で強固」って哲学は、地球温暖化の前に無力なのだ。
低層地帯では1階がガレージの3層住宅を推進するとか、防火扉とまでは行かなくてもあぶれ出た水を誘導する町内全体を守る門扉とか、とにかく旧来の発想では隊覆う出来ない地球温暖化による気候変動のダイナミックさに勝つには「うけながす治山、治水」を是非とも研究してもらいたい。