春の政局2009、小泉劇場が開幕した

小泉劇場プロローグ
 昨年(2008年)9月に自民党の総裁選挙が行われ麻生太郎政権が発足すると小泉純一郎元総理は次回の衆議院選挙に立候補せず政界を引退するむね記者発表を行った。公認には自らの次男を当てるって若干引いた有権者も居ただろう。これは衆議院議員選挙近しと読んだ結果の行動だった。
 小泉純一郎元総理は、この時点で麻生政権は選挙内閣、年末までには衆議院解散総選挙があると読んでいたのだろう。
 これが9月のリーマンショックに始まる一連の経済危機で先送りされる。正確には9月の時点で自民党の調査結果では衆議院解散総選挙を行えば獲得議席数は過半数を割り、最悪の場合200議席を切って衆議院第1党の地位すら失うと出ていたのだ。
その当時の状況分析は任期満了まで衆議院解散は無いのかに詳しく書いておいた。。
 この時点で小泉純一郎元総理は自民党が勝つ選挙シナリオに奔走する。選挙区で訴えるネタを持たせなければならないと「1院政」をぶち上げたりした。自民党によるダラダラ政権よりも衆議院解散総選挙による新体制を望んでいたのだろう。息子が選挙に立候補するにして、当選後の所属政党が野党では活躍の場は限られる。福田、安倍のように2世総理大臣を誕生させるには息子は選挙後の与党に近い所に居なければならない。その後見人として関係各方面に働きかけることが出来るのは早いほうが良い。元総理大臣とは言え小泉純一郎の名前が力を持つ時間は限られている。
 そのプロローグを経て麻生太郎総理大臣の「私は郵政民営化に反対だった」の言葉が飛び出し、麻生太郎総理による政権が短命なのが確実と思われるし、中川財務・経済大臣の醜態による自民党の選挙惨敗を予想して、小泉劇場の第二幕が開くこととなった。

軸足を完全に移した
 先に書いたように小泉純一郎元総理の頭の中には「野党では意味が無い」、「与党に居てこそ権力を行使できる」の信念が強い。その最たる経験が自分の実績である郵政民営化だろう。
 自民党に軸足を置いて与党を模索してみたが、情勢は確実に自民党は野党転落に向かっている。このままでは息子が当選しても活躍の場は無い。そこで今までの軸足を変えることになった。ストレートに民主党向けの軸足では無く、反麻生の自民党と民主党との二股路線を選んだのだ。
 反麻生の軸で自民党の中で天下を取り返せればそれもよし、民主党との軸で現在の公明党のようなキャスティング・ボードたる小政党を組織するもよし、の2軸方針だ。そのための揺さぶりを盛んに仕掛け様子をうかがうのが小泉劇場第二幕になる。
 第二幕は様子を見ながら小出しになるが、最初に行うのは今月(2月)末にはあると思われる衆議院での第二次補正予算関連法案の2/3条項による可決の場である。ここで欠席する旨を表明し賛同者をどれくらい集められるかの探りを入れる。ミニ加藤の乱にでもなればマスコミが注目し前哨戦として勝利と言える。
 ここで多くの小泉チルドレンが迷い始めることになる。そもそも小泉チルドレンは次回の衆議院選挙で再度当選して戻れる者は少ない。特に比例名簿で当選した末席のチルドレンの再選の可能性はゼロに近いだろう。なんせ、比例名簿は政党の得票数で割り振られるのであって、代議士個人の集めた票では無いのだから。
 万が一2/3条項が成立しない場合は当然「内閣不信任案」の採決となり、これはまさにミニ加藤の乱ならぬ「小泉劇場の乱」となるわけだ。
 小泉チルドレンと呼ばれる代議士は82名居る。この中で20名でも集められれば例え民主党が政権を取ったにしても、自民党が政権を継続しても今の公明党的なポジションを占めることができる。
 つまり、小泉チルドレンによるミニ政党作り、もしくはミニ派閥作りが自民党に軸を置いた場合の、そして若干民主党に重心を乗せたシナリオである。

民主党に軸足を伸ばしたシナリオ
 どちらにしても既存の代議士の参画は少ないと思われるので小泉チルドレンを中心にした政局となるが、民主党へ軸足を置いた小泉劇場のシナリオはかなり大胆なものになる。選挙前に政党を立ち上げる必要があるので先の自民党に軸足を置いたものより可能性は低くなる。しかし、直感の変人である小泉純一郎元総理は可能性だけで行動を決めないので時が熟せば行動するだろう。
 既に引退を決めているので新党立ち上げには直接関与出来ない。そこで前回の自民党総裁選挙で応援した小池百合子氏が浮上する。そもそも小池百合子氏は現在の民主党代表の小沢一郎氏と一緒に自民党を出て自由党を作ったメンバーである。防衛大臣にも就任し大臣経験のある貴重な存在だ。もちろん、政権交代となれば若手中心の民主党にとって大臣経験者が組閣に加わるのは歓迎だろう。
 そもそも、昨年の自民党総裁選挙に立候補した時点で小池百合子氏は総裁への道を目指したかと言うと、そうでは無い。縮小気味の小泉純一郎改革路線のシンパを明確にしておく行動であり、敗れてシンパで結束して発言権を強めようとのプロバガンダに近い行動だった。だから、ある意味では今回の小泉劇場第二幕への布石だったとも言える。
 自民党でも無い、民主党でも無い第三局になっても選挙での当選が果たせなければただの人である。しかし、スターを集めてブロック単位に比例候補で稼げば現在の小泉チルドレンの中から20人や30人をすくい上げるのは可能だろう。なんせ、小泉純一郎元総理が自民党の総裁選挙の時に田中真紀子議員を引きつれて街角フィーバーを行ったと同じ事を、今度はより実利的に行えばマスコミはこぞって流してくれる。
不思議なのは当時投票権の無い一般市民に向かっての自民党総裁選挙運動があれだけマスコミに取り上げられた点だ。要は数字が稼げれば良いだけのマスコミは政治家にとっては利用するだけ利用したほうが得策なのだ。

小池百合子党首の新党
 任期満了の2009年9月まで衆議院選挙が伸びれば新党は十分間に合うが、賞味期限は切れてしまう。サミットを乗り切った政権を倒すのは中々難しい。できればサミット前に新政権を樹立するシナリオでスケジュールを考えておきたい。
 小泉劇場はスピードがあるので、最悪、衆議院解散の日に新党を立ち上げるのも可能だろう。衆議院の解散が宣言されるってことは、小泉チルドレンが派遣止めされたも同じなのだから。当然、元の生活に戻る人間も居るだろうが、なんせ82名である。1/3が新党に結集し、既存の代議士の若手が結集すれば20〜30名の「元衆議院議員」の政党が立ち上がるのは容易なことだ。
 直前まで判断を保留するのが経験の少ない小泉チルドレンの特徴だから、小泉劇場の最終幕は幕が切って落とされるまで解らない。


2009.02.10 Mint