麻生太郎内閣の終演に向けての助走がはじまる

小泉劇場は開幕したが
 小泉劇場が今ひとつ自民党内部の造反派を惹起できてないが、政治は一寸先は闇、麻生太郎首相にしか衆議院の解散権が無く、KYな麻生太郎首相は衆議院の解散にも内閣改造にも興味が無く、自らの総理大臣の椅子にのみ関心があるので自民党も党としての方針を決めかねているのが現状だろう。
 政局がどのように動くのかはまったく不透明だが2/3議席に安住した自民党の政権への固執は100年に一度の政局異常事態を招いている。
 一つは先に述べた「麻生太郎総理のやりたい放題」であり、ここに来て経済対策が大事と言いながら経済財政・財務・金融の要の大臣を与謝野馨氏が独占的に兼務する事態も、はたして日本の経済を侃々諤々議論して立て直そうとしてるのか不透明感を拭えない。そもそも財務省の代弁者として財源確保の消費税増税派の与謝野馨氏が日本の経済の立て直しに適格とは思えない。その最悪の選択をせざるを得なかった麻生太郎内閣は、やはり、終演に向けての助走、ラストランを演じているようにしか見えない。
 国内問題に行き詰まったのでサハリン訪問で日ロ首脳会談(これは多分に問題があった)、ホワイトハウスに初めて招かれた国家の代表者とのプロバガンダ付きのバラク・オバマ米大統領との会談。どちらも終演に向けてのパフォーマンスで支持率向上を狙っての政治行動とは見えない。そもそも支持率を向上したいのならしっかりした政治を行うのが王道で、外交によるパフォーマンスは人気取りにはなるが支持率向上には繋がらない。
 ま、勘違いを繰り返して「今度はサミットで支持率回復」なんて思っているとしたら、KYを通り越してとんだ道化を演じることになるだろう。

麻生太郎「保身」不況と呼べる
 2月16日に入って内閣府から発表された昨年10〜12月期の実質GDP成長率(季節調整済)は前期比でマイナス3.3%とのこと。これを年率に換算するとマイナス12.7%となる。信じられないくらい大きな数字だ。世界不況の本国であるアメリカでも年率換算では3.8%にとどまるのだから日本の実質GDP成長率は本家を超えてしまっている。
 日本の5倍程のアメリカの経済規模なので、まさにアメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引くって昔ながらの構造に見える。確かに日本の経済は輸出依存型で内需の拡大を指向してこなかったので輸出不振によるGDPの鈍化は当然出てくる。最も影響が大きいと言われている韓国では日本と同時期のGDPはマイナス3.4%で日本と同じくらいの減少になっている。ただし、韓国は自国通貨のウォン安が極端で日本の比では無く、その韓国と日本が肩を並べるのは、日本側に特別な事情があるとしか思われない。
世界の2009年経済成長予測値(2009.1.28IMF見通し)
韓国-4.0
イギリス-2.8
日本-2.6
ドイツ-2.5
イタリア-2.1
フランス-1.9
スペイン-1.7
アメリカ-1.6
トルコ-1.5
カナダ-1.2
ロシア-0.7
メキシコ-0.3
豪州-0.2
アルゼンチン-0.0
サウジアラビア0.8
南ア1.3
ブラジル1.8
インド2.7
インドネシア3.5
中国6.7
 実は不況風を吹かせたのは麻生太郎総理大臣なのだ。
 日本のGDP成長率低下の要因に消費の落ち込みがある。民間企業設備投資の成長率が前期比マイナス5.3%と極端の落ち込んだのは過剰生産による在庫調整が働いている。この在庫は海外向けの業種もあるが、内需中心の在庫調整を行っている企業が多い。特に企業設備投資は裾野が広く部品メーカを巻き込んだ大きな成長率の低下に繋がっている。では、何故在庫調整が必要かと言うと民間最終消費支出の数値が落ち込んでいる。前期比マイナス0.4%だ。実は実質雇用者報酬(給与所得に該当)はプラスの1.0%なので、実質的に購買意欲はマイナス1.4%となる。これは全体の半分に近い落ち込みである。
 つまり、消費マインドが落ち込み消費者が物を買わなくなった。しかも、今後実質雇用者報酬はマイナスに転じるだろうから、ますます消費意欲は低迷すると思われる。先が見えないのに金を使っている場合では無いって雰囲気が日本全国に蔓延しているのだ。
 これは、とりもなおさず「政局より政策、経済対策が最優先」と衆議院解散総選挙内閣だった麻生太郎内閣を自ら総理の椅子の座り心地にのみ関心をはらい保身した結果だ。国民に「どえりゃぁ不況が来るらしい」と消費マインドの氷河期、いや6億年前のような全地球凍結をもたらしたのだ。

国民に向けたメッセージ
 最良の経済対策は国民に向けたメッセージ、それも「どえりゃぁ不況では無い」と納得するメッセージの発信なのだが、それは「じゃぁ、衆議院を解散する余裕はあるんだな」と跳ね返ってくる。だから、任期満了までのシナリオで21年度予算の審議中に21年度補正予算と保身のための経済対策(正確には経済対策事案)を持ち出してくる。麻生太郎総理が「経済対策、経済対策」と叫ぶ度に実質GDPは下がり続ける。
 そもそも、昨年の10月30日の首相演説で補正予算による経済対策を説明した後に、取って付けたように3年後の消費税増税を口にしたのはせめて任期満了までの延命と経済の復興を潰す高度な神経戦だったのではと思われる。財務官僚から言わされた面もいなめないが。
 21年度補正予算規模でアドバルンを上げているが、補正予算が必要って叫ぶこと自体が景気が益々悪化するとのメッセージを発信してる訳で、現行の制度の中で減税や特別措置の一時凍結等を行うほうが景気対策として有効だろう。そもそも、補正予算は旧来の公共事業型に陥りやすく特定の業界のみの税金による延命策に陥りやすい。いっそうのこと、定額給付金を現行の10倍程度にして国民が選べる経済効果を期待するのがベストだろう。
 かりに10倍にしても、現在想定している21年度補正規模並みの20兆円なのだから経済効果は同様になる。
 経済を盾にした内閣の延命よりも、本当に国民の望む経済対策を講じるのが急務だろう。

最大の景気対策は衆議院解散
 マスコミ各社の調査に現われる麻生太郎内閣の支持度合いはとっくに、ご勇退を勧告してる。極論すれば麻生太郎内閣の退陣が最大の景気対策なのかもしれない。
 このままずるすると財源確保の消費税増税派の与謝野馨氏に経済対策を預けておくと取り返しの付かない場面にまで突っ込む危険性がある。つまり、旧来の自民党はその是非はともかく、曲がりなりに中小企業や大企業の経営者のスタンスで政策を進めて来た。しかし、ここに来て小泉改革がそのシガラミを断ち切った後は官僚のスタンスをそのまま受け入れた政策実行になっている。
 このまま財務省主導の景気対策、それはとりも直さず役人天国路線なのだが、そこに陥ってしまう。内閣改造の口実に与謝野馨氏の重責の分散を唱える向きもあるが、基本は内閣改造では無く内閣総辞職なのだ。特に過去に学んで欲しいのは人気の無い総理大臣が内閣改造を行うとちょっとした任命大臣の不祥事での命取りになるって過去の事例。
 何も好んでリスクを犯さなくても、一番の景気対策は衆議院解散って国民へのメッセージなのだと早く気がつくべきだろう。また、自民党は早く気がつかせることが、最小の傷口で選挙に負ける方策だ。その機会を逸すると自民党の求心力は霧散し、政界再編成により社会党と同様に消え去る政党になるだろう。

button  春の政局2009、小泉劇場が開幕した
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2009.02.25 Mint